睡眠不足は生産性を下げる(shutterstock.com)

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 9月8日は「休養(キューヨー)の日」だ。「知らなかった!」と焦る必要はない。なぜなら最近できたばかりの新しい記念日なのだから。

 一般社団法人・日本リカバリー協会が、「積極的休養」の考え方を広く普及し休養の大切さを再認識してもらうために、今年4月に制定した。

 「休養の日」だからといって、みんなが休めるわけではないが、こうした取り組みに異を唱える人はたぶんいないだろう。日本人が世界的に「休み下手」な国民であることは周知の事実だし、実際のところ、あまりに多くの人が疲れ切っているからだ。

 そのような実態が、日本リカバリー協会が「休養の日」を前に実施した、ビジネスパーソンに対する調査で明らかになった。

 それによると、日本人(20〜60代)の62.4%が「自分に最も足りない時間は<休養>」だと感じていた。さらに、<いまどきの20代は60代よりもはるかに疲れている>というのだ。

 休養問題の深刻さは、より一層浮き彫りになったといえる。

全年代で「休養・睡眠」の時間が不足

 今回の調査は、2016年7月に、全国の20〜60代の働く男女1000人を対象にインターネットで実施された。

 最初に「1日の中で足りないと感じる時間」について聞いたところ、「休養・睡眠をとる時間」が全体で62.4%と最も多く、「趣味・遊び=50.3%」「パートナーと過ごす時間=13.4%」を大きく上回った。

 一方「仕事をする時間」が足りないと感じている人は最も少なく6.6%にとどまった。

 なかでも30〜40代では、「1日の中で足りないと感じる時間」について「休養・睡眠の時間」と回答した人が約70%となり、年代別に見ると最も多い。

 また20代も59.5%と、50代(58.0%)や60代(56.5%)よりも若干ではあるがその傾向は強く、中高年よりも若い世代や働き盛りの世代が強く休養を望んでいることがわかった。

 一方、「生活の中で、十分に休養がとれているか?」という問いに、「十分とれている」と回答した人は全体の15%未満。「全くとれていない=8.2%」「ほとんどとれていない=23.2%」を合わせると3割を超え、3人に1人は休養が足りないと感じていることがわかった。

20代の54%が「休み」が欲しい

 この結果を年代別に見ると、60代で「休養を十分とれている」と答えた人は28.0%で最も多く、逆に「休養が全くとれていない」と答えた人はわずか2%で最も少ない。つまり、全世代で60代が最も休養がとれている。

 それに対して20代は、「休養が十分とれている」と答えた人は7.5%と全年代で最も少なく、「休養が全くとれていない」と答えた人は11.5%と全年代で最多の回答となった。

 これは現代に限らず、いつの時代も同じかもしれないが、自分のペースで仕事ができず、自由に時間を使えない傾向にある若い世代ほど、休養がとれずに疲れがたまっているようだ。

 最後に「今欲しいもの」を聞くと、第1位の「お金=85.9%」は予想できるものの、次いで「時間=45.3%」と「休養=45.2%」がほぼ同率で次点に入った。

 現代のビジネスパーソンは「パートナー(彼氏・彼女)=第4位:17.4%」や「趣味の品=第5位:16.0%」「家=第6位:12.8%」「車=第7位:11.5%」よりも、「休み」が欲しいらしい。

 さらに年代別に見ると、「休み」と答えたのは20代が全年代で最も多く、54%と過半数以上。逆に最も少ないのは60代の31%で、20代と20%以上も差がついた。また60代は20代より「趣味の品」「家」「車」を欲しがっており、特に「趣味の品」は60代が20.5%で最も多い。

 全世代を通じて最も余裕のある生活ができているのは、出世競争も子育てもひと段落ついたシニア層のようだ。
睡眠不足と疲労による経済的損失は3兆5000億円!?

 東海大学健康科学部の松木秀明特任教授は、この調査結果を受けて「国民生活時間調査(NHK放送文化研究所2015)によると、2015年は1960年よりも約1時間も平均睡眠時間が短くなっている」ことを指摘。日本人の睡眠時間の減少と関係があるのではとの見方を示している。

 睡眠不足は労働だけでなく余暇の多様化とも影響があるはずだが、それは個人的な問題ばかりではない。日本全体で睡眠不足からくる生産性の低下が3兆円、欠勤、遅刻、早退、睡眠不足に関連する交通事故やその他ヒューマンエラーの損失を合計すると3兆5000億円に上るという調査結果がある。

 この数字には医療費は含まれていないから、それもプラスするととんでもない数字になりそうだ。

 さらに、慢性疲労全体によって引き起こされる日本における経済損失を、文部科学省疲労研究班が算出したところ、年間約1.2兆円に及ぶことが判明。慢性的な疲労は、医学的な観点のみならず経済的損失という観点からも、大きな社会問題であることが明らかになってきている。

「休む=怠ける」という認識を社会全体で変える

 約50年前に比べ1時間も睡眠時間が減った日本人は、自ら生産性を下げ続けているかのようだ。特に気がかりなのが20代の疲れっぷりである。30〜40代の働き盛り世代よりも疲弊しているのだ。

 20代といえば、早く仕事を覚えなくてはならない時期で、経験不足が非効率な労働の原因となって疲弊を招いていることも想像できる。もちろん仕事だけでなく、20代は遊びたい盛りでもある。

 古い世代の中には「今の若者は......」という古代エジプト人から繰り返された古典的な世代論や根性論を持ち出す人もいるかもしれない。

 しかし、経験や知識はなくとも「体力」だけはどの世代の労働者より有り余っているはずの20代が疲弊しているというのは、社会環境や労働環境に何かしらの問題が潜んでいる可能性も考えられる。

 質の良い睡眠と休養は、明日のパフォーマンスを向上させるための大切な要素だ。「休む=怠ける」という認識を企業も含めた社会全体で変えていかない限り、この国に明るい将来はないと言っても過言ではない。
(文=編集部)