デンタルフロスの効果は?(shutterstock.com)

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 子どもの頃から親に言われるままに、歯と歯茎を守るために「デンタルフロス」を使用する習慣を守ってきた人は多いだろう。しかし、AP通信による新たな調査で、「フロスの効果を裏づける十分なエビデンスはない」ことが示唆された。

 AP通信は、過去10年間に実施された25件の研究のデータについて検討。対象とした研究の多くは、歯ブラシを単独で使用した場合とフロスを併用した場合を比較したものであった。いずれの研究も、フロスの使用を支持するエビデンスは弱く、信頼性は極めて低いものであり、質も非常に低く、バイアスが生じている可能性が中程度、または高度であるとの結論だった。

フロスの推奨は米国歯科医師会(ADA)に従ったため

 長年、歯科関連団体やフロス製造業者をはじめとする各機関は、フロスの使用を強く推奨してきた。1979年以降は、米国政府が5年ごとに発行する「米国人のための食生活指針(Dietary Guidelines for Americans)」などでフロスの使用を勧めているが、米国の法律ではこのようなガイドラインは科学的根拠に基づくものでなくてはならない。しかし、連邦政府はAP通信に対し、「フロスの有効性を裏づける研究がない」ことを認めている。

 米国歯周病学会(AAP)理事長のWayne Aldredge氏は「フロスを支持する科学的根拠は弱い。一方、喫煙者や糖尿病患者などの歯周病リスクが高い人に焦点を当てた研究では、フロスの便益がさらに明確になる可能性がある」と話している。

 また同氏は、多くの人はフロスを正しく使用しておらず、フロスを歯の側面に沿って上下に動かすのではなく、のこぎりのように前後に動かして使用していると指摘している。

 さらに同氏は、「AAPがフロスを推奨しているのは単に米国歯科医師会(ADA)に従ったため」だと述べている。ADAは1908年からフロスを推奨している。ADAにフロス使用を支持する根拠を求めたところ、フロス使用により歯肉の炎症がやや低減することを示した2011年の研究レビューなどを挙げたが、今回の新たなレビューの著者らは、この研究のエビデンスは「極めて信頼性が低い」としている。

 また、米ノースウェル・ヘルス(ニューヨーク州)歯科部長のRonald Burakoff氏は、「私は診療の根拠となっているエビデンスについて見直し、変えるほうがよい点があれば変更しようという考え方を支持する」と述べている。
米国歯科医師会は「エビデンスが弱いことは認めるが」......

 ADAは声明で、フロスは「プラークを落とす」ものであり、「歯間の汚れを落とすことが証明されている」としている。その一方、「フロスの有効性を裏づけるエビデンスが弱いことは認めるが、研究の対象者らがフロスを正しく使っていないためだ」としている。

 AP通信によると、ADAはフロス製品の認定証プログラムを実施しており、製造業者は1社1万4500ドルの査定費用をADAに払い、認定後は年間3500ドルの追加費用を払っている。ADAは、このプログラムにより利益は生じていないとしている。

 安易にフロス無効論が出そうな雲行きだが、顕微鏡歯科の立場からデンタルみつはしの三橋純院長は次のように語る。

 「当院では歯肉が後退していない方にはフロスの使用を強くお勧めしています。歯周病などで歯肉が下がってしまっている方には歯間ブラシです。 統計的に有意差が出ないとの指摘はよく理解できます。やり方の差が大きすぎるのだと思います。 逆に言えば、上手くやれば非常に効果が高く、フロスでなければプラークは落とせないと思うほどです。少なくとも歯ブラシでは歯間部のプラークは落ちません」

 顕微鏡で患者のプラークを毎日見ているだけに説得力がある。

 「虫歯予防に関しては『どんなにブラッシング指導しても虫歯の数は減らない』と言われるくらいです。統計的に有意義なのは糖制限とフッ化物使用です。ですからフロスにしても歯間ブラシにしても、糖制限をしなければ意味はないと思います」

 単にフロスの是非論だけで虫歯予防を語ってもしょうがないということのようだ。
(文=編集部)