遠隔操作で「Pepper」が介護サービスを行う検証も(画像はソフトバンクグループの公式HPより)

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AI(人工知能)の第3回は、心がホッとする人型ロボット「Pepper」のエポックだ。

 本サイトの「人間の感情を理解できる人型ロボット『ペッパー』は認知症の進行予防に役立つのか!?」でも紹介しているように、Pepperは、人間の感情を認識する「感情エンジン」という高度なAIを搭載した最先端の医療用ロボットだ。

 日経デジラルヘルス(2016年8月26日)よれば、ソフトバンクグループのアスラテックとM-SOLUTIONSは、8月24〜25日の2日間、東京都足立区の介護施設「わかばケアセンター」でロボット遠隔操作システム 「VRcon for Pepper」を使った介護サービスの検証を行った。

 「VRcon for Pepper」は、インターネットに接続した人型ロボットPepperの動きや会話をスマートフォン、タブレット端末、パソコンからリアルタイムに遠隔操作できるソフトウエアだ。

 たとえば、遠隔地にいる介護ヘルパーの声をPepperのスピーカーが出力する。介護ヘルパーがキーボード入力したメッセージをPepperの声が読み上げる。適確な状況把握や要介護者とのコミュニケーションが図れるので、遠隔地からでも要介護者の見守りができる。介護ヘルパーの業務負担を軽減できるなど、さまざまな利点がある。

 アスラテックは、今回の実証実験を体験した要介護者の声や介護ヘルパーの経験をシステムに反映しながら、介護施設への「VRcon for Pepper」の導入を本格化するという。Pepperは、高い知能と優しさを発揮し、人間の感性に寄り添いながら、賢く立ち働いてくれるだろう。

デンマークでも介助ロボットたちが大活躍

 さて、医療・介護サービスの先進国デンマークの介助ロボットたちもPepperに負けてはいない。

 日経デジタルヘルス(2016年8月18日)によると、MT ヘルスケアデザイン研究所の阿久津靖子所長は、7月6日に開かれた「Digital Aging Meetup 」で、ICT(情報通信技術)やAIを活用した先進的な介護サービス事業に取り組んでいるデンマークの事例を紹介した。

 阿久津氏によると、オーデンセ市にある認知症患者が入居するケアセンター「Plejecenter Svovlhatten」は、「介護される側も介護する側も守る」というシステムで運営されている。つまり、介護士は介護に必要な最低限の主要業務だけを行い、それ以外の補助的な業務は、介助マシンや介助ロボットが分担している。

 たとえば、要介護者が床に倒れていても、介護士が体を痛める恐れがあるので介護士は抱き起こさない。その時、施設内の至るところに設置されている介助ロボットが登場して、要介護者を抱き起こす。ベッドから起こして車いすに乗せる時は、備え付けのリフトもアシストする。 介護士と介助ロボットの恊働システムが完備しているため、要介護者も介護士も安心だ。

 デンマークをはじめとする北欧諸国は、日本よりも個人の権利や自由を尊重する意識が根強い。たとえば、日本の介護施設では、機能訓練などを一括同時に進めるケースが普通だ。だが、デンマークでは、入居者を1対1でサポートをするのが基本。それだけに、介護士の負担は大きいが、介護士は専門大学を出てからも、知識、技術のキャリアを培っているので、労働に見合った高収入を得ている人が多い。
介護施設だけでなく病院でも活躍

 このような人間と介助ロボットの役割分担を明確にしたマンマシンインターフェイスの仕組みは、介護施設だけでなく、病院でも一貫している。

 たとえば、ロボットがベッドのシーツや食事などを運ぶ。フルオートで血液検査を進め、心拍数を測定する。自走して手術室を殺菌する。トイレで用を済ませた後にズボンを上げる。入浴、着衣、歩行を介助する。ロボットたちの活躍は実にめざましい。

 阿久津所長によれば、今後は、介護機器の開発、ヘルスケアデータの共用などに努めつつ、デンマークなどの北欧諸国との業務提携を深めていくという。

 ちなみに、管理栄養士がビデオチャットシステム「LiveCall」を活用し、個々人に合わせた食事アドバイスをする対面指導サービスがある。人型ロボットPepperなら、栄養指導を受けたい遠隔地の高齢者、要介護者、身体障害者などに対して、管理栄養士の映像、音声、チャットを使った双方向のアドバイスやコミュニケーションを実現できる。

 介護も医療も栄養管理も、ニーズがあれば、Pepperが活躍できるシーンはどんどん広がっていくだろう。Pepperに期待しよう。


佐藤博(さとう・ひろし)
大阪生まれ・育ちのジャーナリスト、プランナー、コピーライター、ルポライター、コラムニスト、翻訳者。同志社大学法学部法律学科卒業後、広告エージェンシー、広告企画プロダクションに勤務。1983年にダジュール・コーポレーションを設立。マーケティング・広告・出版・編集・広報に軸足をおき、起業家、経営者、各界の著名人、市井の市民をインタビューしながら、全国で取材活動中。医療従事者、セラピストなどの取材、エビデンスに基づいたデータ・学術論文の調査・研究・翻訳にも積極的に携わっている。