長生きの秘訣は家族?(shutterstock.com)

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 昨年11月、東京・渋谷区が同性カップルに対し交付を始めた「パートナーシップ証明書」を皮切りに、翌月には世田谷区も「パートナーシップ宣誓書」を役所に出せば、受領証がもらえるシステムを導入した。

 さらに今年4月からは三重県伊賀市が、6月からは兵庫県宝塚市と沖縄県那覇市が同様の制度を始めた。同性カップルが、少しずつではあるが市民権を得てきている。

 それまで、家父長制度だった日本の家制度が大きく変わったのは敗戦後のこと。昭和22年に成立した新民法で法律上の家族制度は廃止され、多くの女性が開放された。その後、核家族化が進み、<サザエさん一家>のような三世代同居の家庭は少数派となった。

 そして平成を迎え、前述のように同性婚までも許容される社会になった一方で、30代未婚の男女は増加傾向にあり、離婚件数は年間22万2000組(平成26年人口動態統計の年間推計、厚生労働省)と、おひとり様も急増中だ。

 このように家族の形態が変わりつつある中、興味深い知見が米国社会学会(ASA)で発表された。その研究によると、高齢者にとって「親しい友人」よりも「密接な家族」関係のほうが、寿命のためには重要であるというのだ。

家族の形態が変わっても、やっぱり家族が大事?

 この研究によると、配偶者以外の家族と極めて親密であった高齢者は、5年以内の死亡リスクが約6%であったのに対し、家族と親密でない高齢者は約14%であったという。

 その死亡リスクは倍以上だ。特に家族と親密でない人では心筋梗塞や脳卒中になるリスクが上昇していた。

 研究を率いたカナダ・トロント大学公衆衛生学部のJames Iveniuk氏は、次のように解説する。

 「自分の健康状態がよくないときなどに家族はそばにいてくれる可能性が高いが、 友人とのネットワークは常に一定であるとは限らない。ただし、家族が負担やストレス、危害の元となるケースも多々ある。家族だからという理由だけで、助けなければならないわけでもない」

 「しかし多くの場合、家族は最も近くにいて健康状態を明かすことのできる相手である」

 今回の研究は、全米調査のデータを用いて社会的関係と長寿の関連性を調べたもの。同調査では、高齢者に「最も親しい人」を5人まで挙げてもらい、各人との関係性の詳細、つまり、どのくらい親しいと感じているかを示してもらった。

 調査の結果、配偶者を除く親しい人の平均は3人であり、ほとんどの高齢者がその関係性から多くの支援を受けていると感じていた。また、多くの高齢者は既婚であり、健康状態は良好で、それほど孤独ではないと回答した。

 親しい人のリストに「配偶者以外の家族」を多く挙げた高齢者は、その親密さにかかわらず、リストに挙げた家族が少なかった高齢者に比べて早期に死亡する確率が低かった。

 つまり、たとえ親密でなくても5人のリストの中に<家族を挙げた人>のほうが長生きするということだ。
早期死亡リスクの低さに関連するのはこの4つ!

 そのほかにも、早期死亡リスクの低さに関連する以下の4つの因子が特定された。

●結婚していること
●友人や家族との広いネットワークがあること
●社会組織に参加していること
●友人と親密であると感じていること

 一方で、「友人と過ごす時間の長さ」「社会的支援の利用しやすさ」「孤独感」は、重要性の低い因子であることがわかった。

日本の独居高齢者はどうなのか?

 内閣府の平成27年版『高齢者白書』によると、65歳以上の高齢者がいる世帯は全世帯の4割を占める。そのうち、独居が25.6%、夫婦のみが31.1%だ。夫婦のみの世帯は、いずれは独居となる可能性がある。

 平成22年の一人暮らしの高齢者の数は男性約139万人、女性約341万人。現在はもっと増えているはずだ。

 先の研究では、家族と同居か否かは示されていないが、もし一人暮らしの日本の高齢者に「最も親しい人5人」を挙げてもらったとしたら、離れて暮らす家族が何人含まれるだろうか? 

 そして、データが示す通り、あまり交流がないにもかかわらず家族の名前を挙げた高齢者の死亡リスクは低いのだろうか?

 学会で発表されたこの研究は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは予備的なものと見なされるそうだ。いざというときに頼りになるのは「遠くの親戚より近くの他人」ではなく、「遠くても家族」となるのかもしれない。
(文=編集部)