「貧乏ゆすり」は健康にいい!(shutterstock.com)

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 座っているときに、膝を上下に揺する「貧乏ゆすり」。その語源には諸説ある。高利貸しが貧乏人から取り立てる際に足をゆすることが多かったから。 江戸時代に足をゆすると貧乏神に取り付かれるといわれていたから。 貧乏人がせかせか動いているように高貴な人からは見えるから......。

 この貧乏ゆすりが、実は「健康に良い」という側面があることを、米国ミズーリ大学のジェイム・パディラ助教授(栄養・運動生理学)が発表した。「貧乏ゆすりは下肢の血流を増加させ、驚くべきことに動脈機能の低下を十分に予防しうることが判明した」というのだ。

立ったり歩いたりできない空間では「貧乏ゆすり」を

 いわゆるエコノミークラス症候群と呼ばれる症状がある。医学的には「静脈血栓塞栓症」という。長時間、狭い空間に座っている(またはじっとしている)と、下肢に血流が流れにくくなり、血栓ができやすくなる。この血栓が肺に流れ込み肺動脈が詰まってしまうと、肺の酸素吸収の機能が低下して息苦しくなり、最悪の場合、死に至ることがある。

 熊本地震で自動車内に避難していた人が、この静脈血栓塞栓症と思われる症状で死に至ったことは記憶に新しい。これは極端な事例だが、長時間、ひとつの場所に座ることは身体に大きな負担になることは広く知られるようになった。

 ところが、貧乏ゆすりをすれば、簡便に血流を増加させることができるため静脈血栓塞栓症を防ぎ、健康維持に寄与できるというのだ。

 パディラ助教授の研究では、若者11人に3時間座ってもらい、その前後で脚の血管機能を比較した。座っている間、片方の脚は1時間トントンと動かして4分間休ませる。もう片方は動かさないという実験計画だ。その結果は、動かしたほうの脚は血流が増加し、動かさなかった脚の血流は減少した。

 パディラ助教授は、「立ったり歩いたりすることで、できるだけ座り続けないようにするべきだが、それが無理ならば代わりに貧乏ゆすりをするとよいかもしれない。なにも動かないよりはよい」という。

 長時間、同じ姿勢を保つしかない状況といえば、飛行機だけでなかう高速バスにも同様だ。狭い空間でじっとしないといけないため、こまめな水分補給とパーキングエリアでのトイレ休憩、少し歩くことを、バス会社が促すようになっている。バス会社としても顧客サービスのひとつにエコノミークラス症候群(静脈血栓塞栓症)の予防をアナウンスするようになっている。

 普段の生活で最も長く、じっとしている場所といえば、オフィス空間だ。いまはパソコンを使った作業が多いので長時間椅子に座る人が増えている。関連して肩こり、眼精疲労も出てくる。下肢の血流の循環も滞りがち。健康維持の観点から「貧乏ゆすり」を意識的に取り入れるのもよいかもしれない。
「貧乏ゆすり」健康法はマナーを守って意識的に

 ただし、注意することが2点。第一に、下肢が他人から見えないようにすること。第二に、あくまでも意識的にやること。貧乏ゆすりの多くは、本人が自覚をせずにやってしまうことが多い。「貧乏ゆすりしてるよ、やめたほうがいいよ」と助言してくれるのは、家族か友人だけだろう。職場でそういう忠告をしてくれる人は少ない。

 「貧乏ゆすり」健康法をするためには、マナー違反をしているという自覚が必要なのだ。「貧乏ゆすり」を見た人は、それを健康法だとは思わないだろう。ストレスでいらいらしているみたいだから近づかないほうがいいかも、と判断されるかもしれない。

 下肢を動かすことで血流が促進される効果について、先のパディラ助教授は「座っているときに脚を動かしても、歩行や運動の代わりになるわけではない」と強調している。その通りだろう。

 椅子から立ちあがって屈伸をするだけで、下肢に滞っていた血液は流れ出し、体全体の健康状態はよくなっている。

 大切なことは、長時間じっとして歩行ができないことは健康リスクがあるという知識をもつこと。「貧乏ゆすり」は、血液の流れが悪い、体を動かして、というシグナルなのだ。
(文=編集部)