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文部科学省が指定するスーパーサイエンスハイスクール(SSH)は、先進的な科学技術、理科・数学教育を通じて、生徒たちの科学的能力や思考力を培うことで、将来社会を牽引する科学技術に優れた人材を育成する取組として平成14年に始まった。その指定校の生徒たちが、科学系の部活動や授業などで取り組んできた研究の成果を発表する、「平成28年度スーパーサイエンスハイスクール生徒研究発表会」が8月10日・11日に神戸市の神戸国際展示場で開催された(主催:文部科学省、科学技術振興機構[JST])。

平成16年から毎年開催されているイベントで、今年はSSH指定校(および研究発表経験校)202校と海外からの招へい参加28校が出展。科学に興味を持つ高校生や教育関係者、一般来場者に向けてポスター形式で研究成果を発表し、優秀校を表彰した。

第1日目は全体会とポスター発表を行った。冒頭で基調講演した名城大学大学院終身教授の飯島澄男氏は、自身の研究チームによるカーボンナノ素材研究の歩みを振り返りながら、研究現場の様子や科学者に求められる資質を紹介。参加した高校生たちに、「好きなことを見つけて果敢に挑戦することが、科学者への道につながる」と呼びかけた。

ポスター発表は、「物理」「化学」「生物」「数学・地学・工学」の分野ごとにゾーン分けされたフロアで、各校が一斉に行った。生徒たちは、研究成果をまとめたポスターを指し示したり、実験装置や成果物を見せたりしながら、研究動機や具体的な手順、成果と今後の課題などを説明し、来場者からの質問に答えていた。

島根県立益田高等学校の福満和さんは、「色素を混ぜた人工飼料を使って、蚕の繭に色をつける方法」について発表した。繭に色をつけたいという純粋な興味から研究を始め、約20種類の色素で実験を繰り返した結果、ローダミンBなど分子量500以下でカルボキシ基を持つ色素が有効との結論を得たという。

「絹糸への染色とは異なる透明感ある発色が特徴。この糸で地域の特産品ができないかと考えている」と福満さん。色鮮やかな糸で編んだストールなどの展示も来場者の目をひいていた。

静岡理工科大学静岡北中学校・高等学校は、渋川直生さんらのグループが「持続可能な脱窒システムを実現するための硝酸イオン電池の開発」を発表した。環境汚染の一因として問題視されている硝酸イオンを動力源とする電池で、汚染物質の除去と発電を同時に行おうという意欲的な研究だ。

「試作モデルでの実験では、硝酸イオンによる発電と除去が起きたことを確認できた」という。足を止めた来場者にタブレットで実験データなどを示しながら、硝酸イオンが除去される仕組みを熱心に解説していた。

「リボソームによる細胞塊形成の再現」を発表したのは、熊本県立宇土中学校・宇土高等学校の平山愛理さんと志垣莉穂さん。2人は、乳酸菌由来のリボソームをヒトの皮膚細胞に取り込むことで、多能性幹細胞へのリプログラミングが起きるという最新の研究成果に興味を持ち、自分たちで実験を再現したいと考えた。

その後、学校を通じて熊本大学の研究チームにアプローチし、共同研究として「メダカ皮膚細胞のリプログラミング」を検証することになった。2人が行った実験では、特定の培養条件下で細胞塊が形成されることを確認できたという。今後は、「この細胞塊が多能性を持っているかを検証したい」と話していた。

「管理職・研究者として活躍する女性を増やすために」というユニークな発表内容で注目を集めていたのは、宮城県仙台第一高等学校の庄司梨乃さんらのグループ。日本で女性管理職や研究者が少ない原因を分析し、「仕事と家庭に対する旧来の価値観や、高度成長期に確立した日本型雇用慣行の改善が必要」と提言したほか、自校生徒への意識調査の結果から「SSHの取り組みは、女子生徒の理科への関心と研究者希望を高めている」と結論づけた。

当初は文系の庄司さんが1人で始めた研究だという。その後、理系の友人が参加したことで、「データ分析に統計的な要素が加わり、発表内容の説得力が増した」と振り返っていた。

2日目の全体会では、前日のポスター発表をもとに選出された代表校6校がステージで口頭発表を行った。最終審査の結果、文部科学大臣表彰には福岡県立香住丘高等学校(水平軸回転飛行物体の飛行性能の向上に関する研究)が選ばれた。このほか、科学技術振興機構理事長賞(2校)、審査委員長賞(3校)、参加した生徒たちが選ぶ生徒投票賞(12校)などの表彰が行われた(表彰校一覧)。

同発表会は、日頃の研究成果を全国に発信できる場として、SSH指定校の生徒たちにとって大きな目標となっている。今回は女子生徒の参加数が大幅に伸び、発表者800名の4割にあたる328名に上るなど、科学技術人材のすそ野の拡大が感じられた。今後は研究テーマのさらなる多様化など内容面の広がりも期待される。

(栗林俊晴)