リオ五輪、卓球の男子団体戦で銀メダルを獲得した丹羽孝希。前回はメダルへの軌跡をじっくり語ってもらった。引き続き、王者・中国との差、2020年東京五輪への抱負、卓球の普及についても話を聞いた。後半は一問一答式でインタビューの模様をお届けする。

―― 銀メダル獲得、おめでとうございます。

「ありがとうございます」

――「東京では金を!」という周囲からの期待も大きいと思いますが、重くはないですか?

「まあ重いですよね。その難しさを十分わかっているので。帰国後、テレビに出させていただくことも多いんですが、『4年後は?』と聞かれたら、場の空気もあるんで『金メダルです』と言ってますけど(笑)」

―― リップサービスもあるんですね。

「それに僕自身、東京オリンピックで代表になれると決まったわけでもないですから。新たな若手選手も出てくると思うんで。リオに出た吉村(真晴)くんは、4年前のロンドンの時点では、まさか代表になれるとは思っていませんでしたし。リオの選考前の1年間で、世界ランクを急激に上げてきたんです。東京でも、そういう選手も出てくるはず。全然、油断なんかできないです。油断どころか、真剣にやっても出られない可能性もあると思うんです。だから、わかんないです」

―― では、中国との距離を、この4年間で縮めることは可能だと思いますか?

「中国選手はみんな強いんですが、中でも馬龍選手が抜けているんです。東京では馬龍選手が代表から抜けると言われているので、そうなったら実力差は、少しは縮まるのかなと思うんですけどね。ただ、本当に中国は強いです」

―― 中国の強さの秘密はどこにあるんですか?

「中国人選手に『センスがあるな』と感じたこともないんです。中国人選手は、才能があるとかじゃない。とにかく練習量で強くなっていく。逆に日本人選手の方が、才能やセンスに頼っていると思います」

―― 裏を返せば、日本は努力で負けている?

「全然負けてますよ。僕みたいに大学に入ってる選手はいないですし。練習も、僕らは練習する時にペアを組み、片方が8分練習したら、次の8分はブロックに回る。練習をして練習相手をして、練習をして練習相手をしての繰り返し。中国人選手は、練習パートナーをつけて、ずーっと自分の練習ができる」

―― 日本でも同じようにはできませんか?

「ブロックのレベルも高くないと、どっちの練習にもならないんですよね。だから、日本ではなかなか難しい。中国はレベルが高い選手が大勢いますし、ブロックだけが上手い、完全に練習相手のためだけの選手もいるんです。僕らの場合は、そうはいかない。ナショナルトレーニングセンターで合宿などをやるぶんには、毎日強い人と練習できるからいいんですけど、1年中というわけにはいかないので」

―― では、丹羽選手が大学進学した理由はなんだったんですか?

「日本の今の状況として、高校を出て卓球に専念するなら、実業団チームに入り、日本リーグでプレーするという選択肢もあったと思います。ただ日本リーグは正直、世界レベルではない。だったら大学に通いながらブンデスリーグ、フランスリーグなどに行った方がいいなと思いましたね」

―― 現在大学4年生ですが、来春以降の所属先は決まっていますか?

「具体的には、まだですね。今は練習しようと思えば、明治大学で24時間いつでも練習できます。そういう環境ではなくなるんで、練習場所を探すことにも苦労するでしょうし、今以上に1回1回の練習の質を上げていくことが必要になると思います。

 日本の企業チームに入る選択もあるんでしょうが、そうすると国内の試合をメインに出場する必要があり、国際大会に頻繁に行けなくなってしまうんで」

―― メダリストが練習場を探すというのは、違和感がありますね。

「日本にプロリーグができてくれるといいんですけどね」

―― 海外リーグ参戦も視野にありますか?

「もちろん考えてます。今はフランスのレベルが高いんです。ドイツ、ロシアは少しレベルが下がってきてますね」

―― 最強と言われる中国リーグ参戦の可能性は?

「治安とか、生活面で多少不安がありますよね。でも、誰か、ひとりついてきてくれるなら全然行きますよ。中国のナショナルチームクラスの選手は全員中国リーグでプレーしているんで、これ以上ない経験になると思うんで」

―― 先ほど、才能の話が出ました。ご自身の才能については、どう思っていますか?

「周りからは『才能だけでここまできた』って言われたりもしますね。努力、何もしてないみたいな。『もっと頑張れ』とかよく言われます。頑張っているように見えないんですよね、多分。夜練とか、みんながやってない時間にやったりしてるんで」

―― それは声を出したり、プレー中に喜怒哀楽を出さないことが関係していますか?

「どうなんでしょうね。でも、自分では努力していると思ってます。そうじゃないと、ここまで来られなかったでしょうし。それに世界レベルになると、才能なんて関係ない世界だと思うんです。練習量やどれだけ頑張ったか、精神力の強さが勝負を左右する。センスがいくらあっても、それこそ才能がある選手なんていくらでもいるんで。それだけじゃ勝てない」

―― なるほど。

「それと強くなるのは、練習以外の意識の差も大きいと思います。食事や睡眠はもちろん、今は動画サイトで全世界の選手のプレーを見ることができるんで、新しいサーブや技術を研究したり。ただボールを打つことだけが練習ではないので」

―― いつか水谷隼選手に追いつき、追い越す自信はありますか?

「自信はないです、特には。昔は勝ちたいとか言っていたんですけどね。水谷さんは本当に強いですし、そもそもライバル視したことがないです。日本代表として世界と戦った仲間でもあるので。そんな目で見られないですね。ただただ尊敬の目で見てます」

―― では、水谷選手の強さの理由は、何だと思いますか?

「プロ意識だと思いますね。他の選手とは全然違います。ひとりでロシアリーグに参戦したりもしていますし、食事から睡眠から徹底して気を使ってます。練習もプライベートコーチをつけて、メニューも自分で考えてやってる。ちょっと違うなと思いますね」

―― 水谷選手のプレースタイルを真似たいとは思いませんか?

「思います。僕も本当は水谷さんみたく、下がってプレーしたいですよ。そっちの方が盛り上がるし、テレビ映りもいいじゃないですか(笑)。でも僕の身長(162cm)とパワーじゃ、それはできない。つらいとこですけどね。ハンデででしかないです、身長が低いのは」

―― ただ丹羽選手を近くで見ると、右肩の筋肉の盛り上がり方がすごいですね。

「フィジカルが大事なんで。中国人選手のドライブは、比喩ではなく、ラケットが弾かれるんです。素人の人が受けたら、感覚としてはテニスボールくらいの重さに感じると思います。だから打ち返すには、筋力が必要で。ただ、写真を撮られる時なんかは、どうしても筋肉のつき方が左右でかなり違うんで、『左が下がってるよ』って言われちゃうんですけどね(笑)」

―― 背が低いことのメリットは、ひとつもないですか?

「唯一あるとしたら、ダブルスに関しては小さいほうが有利かなと思います。1球ずつ交代で打たなければいけないんで、打ったら回らなければいけない。体の小ささが、有利に働くと思います」

―― なるほど。

「それとダブルスは、シングルスよりも圧倒的に強い選手のペアに勝ちやすいんですよね。強い選手と強い選手が組んだから強いってことではないですし。とにかく練習量とパートナーとの相性やコミュニケーションが大事なんです」

―― リオ五輪での活躍で、卓球ファンが急増したと思います。街を歩いていて、声をかけられたりしませんか?

「1日に本当に何人かですけど、声をかけられたりはしますね。ただ、電車に乗っている時に『丹羽さんですよね?』って声かけられるのは、恥ずかしいです。乗客に一斉に見られるんで。さすがに『違います』とは言えませんから。(福原)愛ちゃんや石川(佳純)さんが変装しているところとか見ていますんで、きっと、水谷さんもこれからそうなるのかなって」

―― 来春、中学・高校の卓球部に入部する人が増えそうですが、競技を始める人にアドバイスをください。

「上達するまでに時間がかかる競技なんで、上達する前にやめてしまう人が多いと思うんです。根気よく続けてもらえたらと思います。ただ、練習だけではつまらなくなってしまいます。僕も2ヶ月くらい試合がないと、『なんのために練習してるんだろう』と、ふと思ってしまうこともあるんで。小さな大会でいいので、試合で勝つ喜びを知ってもらえれば、きっと楽しくなると思います。

 もちろん、強い人と弱い人の差がすごい出る競技でもあるんで、最初はサーブを1本も返せず試合が終わることもあります。その時に、『つまらない』と感じるのではなく、『おもしろい』と感じる人が、上達していくんじゃないかなと思います」

―― 最後に、気が早いですが東京五輪に向け、日本の卓球界を背負わなければという意識はありますか?

「背負うとかは考えたことないです。みんな強いんで。あと4年しかない。まずは、しっかり代表になりたいです。東京開催ということもあって、いつも以上に"出たい"と気持ちを強く持つ選手も多いでしょうから」

―― 4年後、若手に代表の座を譲る気はないですよね?

「そうですね。はい」

―― 中国に勝ちたいですよね。

「はい」

―― 団体では金を、さらにシングルスでもメダルを獲ってほしいです。

「獲りたいですね」

―― 獲ってください!

「僕、空気を読むんで『はい』と言ってほしかったら言いますよ(笑)」


 ふだんの丹羽はアイドル乃木坂46のライブに足を運び、お笑いが大好きと言う大学生。ただ、卓球に関しては的確に自己と相手を分析し、自分の将来を見据えていた。こちらが期待する東京五輪に関しては慎重な姿勢を崩さなかったが、冷静な対応、淡々とした口ぶりから判断するに4年後の出場はもちろん、メダルまできっと視野に入っているに違いない。

水野光博●文 text by Mizuno Mitsuhiro