空条承太郎(第三部)の名言力


空条承太郎、第四部時点では年齢28歳。海洋生物研究の第一人者にして、時を止められるスタンド「スタープラチナ」の使い手。のちに仗助が「無敵のスタープラチナでなんとかしてくださいよぉーっ!」と叫ぶように、少なくともタイマン勝負で勝てるスタンド使いはいない。まぁ第四部以降のジョジョでは、不意打ち上等の特殊能力が多いんですけどね。
前回も康一くんに「会話が続かないよ〜」と嘆かれた寡黙さの承太郎。しかし、主役だった第三部では敵と黙って戦うわけにもいかないためか、いいセリフを連発するキャラだった。当時はピチピチの17歳で全盛期だった承太郎の「名言」をよりすぐってみよう。


「この空条承太郎は……いわゆる不良のレッテルをはられている…
ケンカの相手を必要以上にブチのめし、いまだ病院から出てこれねえヤツもいる…。
イバルだけで能なしなんで気合を入れてやった教師はもう2度と学校へ来ねえ。
料金以下のマズイめしを食わせるレストランには代金を払わねーなんてのはしょっちゅうよ。
だがこんなおれにもはき気のする「悪」はわかる!!
「悪」とはてめー自身のためだけに弱者を利用しふみつけるやつのことだ!!」
DIOに肉の芽を植え付けられて操られていた花京院に対して叩きつけた台詞。杜王町に滞在してる間に、トニオさんのレストランに行ったのか気になるところ。

「なりてえ「魚料理」を言いな
刺身になりてえのか?カマボコか?それともスリ身とかよ
てめーの「スタンド」を料理してやるからよ………」

半魚人のようなスタンド「ダークブルームーン」の本体であるキャプテン・テニールを挑発した名言。この頃から海洋生物学を極める動機の芽生えはあったようだ。

「じじい おれは なにも考えてないぜ
ただ……あそこにすわっている「このゲームだけは誰にも負けない」と確固たる自信を持っているゲス野郎の鼻骨をブチ折ってやることだけを考えている
花京院の魂をとり戻すことだけはマジに考えている…」

レースゲームで花京院の魂を奪ったテレンス・T・ダービー(弟)に闘志を燃やす承太郎。脳筋のようでいて、実は「何も考えてない」ことが勝利の伏線になってたりする。

「じじいは…決して逆上するなと言った…
しかし…それは…無理ってもんだッ!
こんなことを見せられて頭に来ねえヤツはいねえッ!」

じじぃことジョセフを目の前で殺されて、怒りを抑えきれない承太郎。この後、オーラを纏ってエジプトの空を飛び回ったり「ドラゴンボール」みたいなスゴい事態になっていた。

「「無理」だと? この旅は無理なことばかりして来た旅だった… 無理だとか、無駄だとかいった言葉は聞きあきたし、おれたちには関係ねえ」

血を吸い取られてカラカラになったジョセフの遺体にDIOの残骸から輸血して、スタンドによる心臓マッサージで蘇生にチャレンジした時のセリフ。DIO様の「無駄無駄無駄無駄」にも引っ掛けられてますな。

「てめーの敗因は(略)」は有名すぎるので省略。こうしてまとめてみると、「観る」も「聴く」もしてない承太郎(17歳)…やっぱり第四部では丸くなったなあ、と思いを深くするのでした。

スタープラチナの「オラオラ祭り」が通じない絶望感


無敵のスタンド使い・空条承太郎と、少し前まではフツーの高校生だった広瀬康一くん。接点の乏しかった二人が即席バディとなる話だが、彼らの間には「戦いの経験値」という越えがたい壁がある。康一くんが背広を回収して逃走した犯人(吉良)を追うべきと訴えるのは、とても常識的な反応。「あれは追わなくていい」とブレーキをかけられる承太郎の判断力のほうがおかしい。スタンド犯罪者を“狩り”慣れている人物などジョジョの世界でもレアもので、康一くんがピンと来ないのも当たり前だ。

「注意深く観察して行動しろ」だぜ康一くん。」

服の大きさから身長175cm前後、職業派会社員で結婚はしていない、年齢は25歳〜35歳、高給ブランドだからけっこう裕福……遠目でチラッと背広を見ただけで、犯人像のプロファイリングがドンピシャ!

荒木飛呂彦先生は、過去作のキャラを成長させるのがウマい。ジョセフは第二部での機転のキレそのままに第三部では円熟してシブくなり、ディオはDIOになって悪のカリスマ性に磨きをかけた。「このストレイツォ容赦せん!」というセリフの善悪が、第一部と第二部で裏返ったキャラもいましたな。

数々の強敵を打ち破ってきた承太郎が、その経験を知恵に変えた。第三部の戦いを見てきたファンには頼もしい成長ぶりだが、康一くんはDIOとの死闘も知らないから「用心深すぎるんじゃないかな」と疑う言葉も出てくる。いつもは好感度が高い康一くんがウザく思えるのは「第三部のコミックを読んでない」からだ。

「いいか康一くん。観察しろってのはただ「見る」んじゃなくてよく「観る」ことだ。ただ「聞く」んじゃなく「聴く」ことだ」

日本語ならではの同音異義語を織り込んだ原作のネームを、「観る」「聴く」と文字により表現した演出が分かりやすい。スタンドバトルに限らず、新人研修にも使いたい名言である。

「爆弾スタンドほんとにまだいるのかな? もしいなかったらマヌケですよ?」と丁寧に前フリされて、康一くんに飛びつくシアー・ハート・アタック(以下シアハ)。承太郎がスタープラチナを発動し、久しぶりの「オラオラ祭り」の始まりだ!

このシーンに第三部『スターダストクルセイダース』の音楽が流れ、本当にファンを大事にしてるスタッフだと涙。シリーズ通じて最長のオラオラ+時止めで、信頼の処刑タイム……のはずが壊れない! 無敵のスタープラチナが履帯を壊すことがせいぜいという、最悪の絶望が待っていた。

こいつは遠隔操作型のスタンド、そう判断する理由は「何度もいろんなスタンドと出遭った経験」。しかし承太郎の経験を信じられない康一くんは、エコーズACT2を出して吉良を追う。が、意外ッ!本体は射程50m以上に離れていた……。

スタンドが離れて無防備になり、アツくなった康一くんに襲いかかるシアハ。ここで「温度の高い方を優先的に攻撃してくる」と見抜いた承太郎の洞察力はスゴいし、シアハ視点でサーモグラフィー(熱分布)に切り替える演出もいい。

スタプラで時を止めても間に合わないため、オラオラで木を摩擦して火を起こす承太郎。高温で釣れるが体温で爆発……第三部では鉄壁だったガードを突き破るシアハの爆発力。無敵の承太郎がやられるお先真っ暗さ、康一くん今回はいいところ何もなし!

エコーズ、ACT3に成長!


「本当に『後悔した…』ぼくは承太郎さんを『人生の教師』と思うべきだったのだ!『厳しい教師』と理解すべきだったのだ…」
こうした康一くんが後悔する原作のモノローグが削られたのは残念だが、緊迫感あるシーンでテンポよく展開するためにはやむを得ない。それに、今回は康一くん=梶裕貴さんが喋りっぱなし&絶叫の連続で、過労になっちゃう!というメタ視点もある。

シアハを誘導する火が一杯ある「はず」の台所は、電気コンロに電気オーブンーー1999年当時は珍しかったオール電化で、温まるのも時間がかかって役立たず。のちに物語の鍵を握る「携帯電話」といい、ジョジョは何気に時代を先取りしている。

ますます焦る=体温が上がる=ドツボにはまる。そんな悪循環を断ち切る康一くんの「覚悟」がようやく発動してシアハの「弱点」に気づく。「逆じゃあないか!どうしてここから無事で帰れるのなら下痢腹抱えて公衆トイレ探してる方がずっと幸せって願わなくっちゃあならないんだ!」と妙に具体的な言葉で闘志を高めるのが面白い。

とてつもない頑丈さ、体温に向かって決して攻撃をやめないしぶとさーー「シアーハートアタックに弱点はない」と吉良が自信を持って言うのも無理のないこと。

しかし「弱点」はあった。「ドジュウウ」と高温の文字を作り出してシアハを誘導できる、エコーズACT2のシッポだ。落ち着き払っていたのに、仗助に助けを呼ぶ電話をすると、とたんに焦りだす康一くんの可愛さ。

が、さっき切ったはずの電気コンロがどんどん熱くなっていた……文字を無視して突っ込んでくる! 「そこはどこだ! 早く言えボケぇ!」とキレながらも冷静に場所を聞く仗助、頼れる主人公である。

命からがら承太郎をムカデ屋から連れ出し康一くん(意外と力持ちだ)唯一の武器であるシッポ文字も破壊され、ACT2も真っ二つ。が、本体が無事ならスタンドも無事のはず。エコーズ、ついにACT3に進化! 原作の迫力を再現した作画がナイスだ。

人型に進化したACT3は自我を持ってしゃべる。その声は梶裕貴さん、つまり康一くんと康一くんが会話する構図が面白く、また梶さんの仕事が増えている!

ACT3は「命令してください」と慇懃無礼にガラが悪く、背が低くて偉そう。僕らの身を守れ!と命令されたのにシアハに押し負けた。が、「守ること」は完了していた。その能力はフリーズ、すなわち重くすること。スタープラチナでも止められなかった「突進」に対しては最強の攻撃だ。

エコーズACT1もACT2も音に関する能力なのに、なぜACT3は音と関係ないの? ファンの間で今でもよく話題に上るが、「言葉の重み」という説が有力だ。何より、このACT3がいなければ……それは後の楽しみに取っておこう。

「重み」は本体である吉良の左手にも影響を及ぼす。よりによっておしゃれなカフェで、カップを割って注目を集めてしまう。さらには心配して近寄ってきた店員の服をひん剥くサービスカット(誰向けの?)!目立ちたくない吉良にとって最大の屈辱……ということで、後編の「その2」に続く!
(多根清史)