【日本サッカー見聞録】手倉森氏のコーチ就任を歓迎すると同時にU-19代表の強化も課題

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▽ロシアW杯アジア最終予選のタイ戦が終わって2日が経っても、香川を始めとした数選手のパフォーマンスや起用法に疑問の声がメディアだけでなくファンからも上がっている。これはこれで健全な議論だと思う。海外のビッグクラブでプレーしているからといって、彼らを“アンタッチャブル”な存在にするのは危険だと思うからだ。とりわけハリルホジッチ監督は宇佐美に対する期待が大きいようだが、彼は昨シーズンのJ1リーグ第2ステージ以降、パフォーマンスが低下しているだけに、過度の期待は起用法に疑問を招きかねないだろう。

▽海外でもW杯予選に出場した選手はクラブに戻ると活躍できず、「FIFAウイルス」という言葉も生まれた。移動距離の長い日本人選手なら、その負担は増すばかりで、往復によるダメージはかなりのものだろう。W杯予選をホームの日本で戦い、次はアウェイの中東なら、ホームは国内組で戦い、アウェイは海外組と割り切って準備することも一つの手だと思うが、そこまで選手層は厚くないのが現実だけに、なんとも悩ましい問題だ。

▽このジレンマは現行のシステムでは解決しようがないだけに、なんとも悩ましい。せめて代表選手を拘束できる時間をもう1週間確保できれば、コンディション調整にも余裕が生まれるが、そのためにはリーグ戦の日程調整が必要になる。ここらあたりはFIFAが指導力を発動して各大陸連盟に譲歩を迫るしかないものの、コトはそう簡単にはいかないだろう。

▽そんな厳しい状況の代表チームにあって、日本に朗報がもたらされた。昨日、都内でハリルホジッチ監督と会談した手倉森・元U-23日本代表監督が、代表チームのコーチに復帰することが濃厚になったからだ。過去、山本氏(アテネ五輪)、反町氏(北京五輪)、関塚氏(ロンドン五輪)と3大会連続して五輪代表監督は、五輪終了後に兼任していた代表チームのコーチに復帰することはなく、Jクラブの監督に就任していた。

▽兼任とはいえ五輪終了までの2年間は代表チームのコーチは名ばかりだったため、“復帰”には抵抗があったのかもしれない。このため代表チームのコーチは外国人スタッフで占められてきた。今回はハリルホジッチ監督の「日本人コーチ」という要請があったため実現したが、選手とのコミュニケーションを円滑にする意味でも、“会話力”のある同氏のコーチ就任は歓迎したい。

▽リオ五輪終了後、移動のための空港で開いた囲み会見でも、手倉森氏はリオ五輪での経験の「継続性」や、早川コーチの「コンディショニング」の重要性を訴えていた。こうした財産をロシアに向けて役立てるためにも、手倉森氏の経験を活用しない手はない。

▽そして、せっかく手倉森氏を再び代表スタッフに加えたなら、来月中旬からバーレーンで始まるU-19アジア選手権にも彼をスタッフの一員にしてはいかがだろう。これまでU-20日本はW杯の出場を逃し続けている。それが国際舞台の経験不足と指摘されてきた。今回も、内山監督の手腕を含め選手のクオリティからW杯出場は不安視されている。現チームは20年東京五輪のベースとなるだけに、ロシアW杯の予選突破は直近の課題ではあるが、こちらも並行して強化に着手しなければならない課題だと思うからだ。

【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。