随所で特別な存在であることを証明する久保。U-17ワールドカップ出場権獲得の鍵を握る「純粋なサッカー小僧」(森山監督)だ。写真:徳原隆元

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 来年の8月に開幕するU-17ワールドカップ。その出場権獲得を目指して、森山佳郎U-16日本代表監督と23名の選手たちが、9月15日からインドで開催されるU-16アジア選手権に挑む。そのなかで注目されるのは、なんといっても久保建英(FC東京U-18)だろう。
 
 6月に誕生日を迎え、現在15歳。9歳でバルセロナの下部組織に入った逸材を注視する人は多い。今大会だけでなく、メンバー入りすれば飛び級で迎える2020年の東京五輪、そして遠くない未来にA代表のユニホームに袖を通すはずだと周囲は確信している。
 
 欧州屈指の名門から日本へと戻ってきてからも圧倒的な存在感を放ち続ける久保に過大な期待を抱いてしまうのは仕方ないこと。先ごろ行なわれた日本クラブユース選手権(U-18)では5得点で大会得点王に輝くとともに、チームの優勝に貢献した。
 
 その凄みを森山監督は「純粋なサッカー小僧」と表現する。「ボールを受けたら、スッと仕掛けて行く。これは日本から失われつつあるもの」と、パスでキレイに崩そうとする選手が多い現状で、少し異質だと言うのだ。
 
「技術や戦術理解度が高いけど、『パスを受けたら俺がやるぜ』というやつが増えてほしい。やっぱり久保は自然にゴールへと向かうから。そういう、小学生ならするような、ゴールへの姿勢を思い出させてくれる」
 
 しかし一方で、そんな久保を祭り上げる空気や過剰な注目には、「あまり彼に期待しないでください」と警鐘を鳴らす。
 
「まだ15歳になったばかり。日本の期待を背負っているとするのはどうかな、とずっと思っている。今までも釜本(邦茂)2世だ、中田(英寿)2世だと騒がれて潰れていった選手もたくさんいる。
 
 6月のU-16インターナショナルドリームカップでは、みんなが思うような結果を残せなかったかもしれない。それだけで、インターネット上でボロボロに叩かれている。『俺、ディスられてますよ』なんて言ってくるけど、かなりキツイはずなんです」
 
 非凡な才能の上に普通なら得難い経験を重ねているからといって、無慈悲な言葉を投げ掛けていい理由にはならない。そして同時に、過度に希望を背負わせるのは良くないだろう。
 
 それでも考えてしまう。「久保がいれば――」。彼の存在は、U-17ワールドカップへの道は約束されたもののように感じさせてしまうのだ。そんな半ば義務付けられたような勝利、そして重圧のなかに、“サッカー小僧”は立っている。
 
取材・文:古田土恵介(サッカーダイジェスト編集部)