(写真提供=SPORTS KOREA)右がデイボン・ジェファーソン。

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アメリカのNFL(ナショナル・フットボール・リーグ)サンフランシスコ・49ersに所属するQBコニン・キャパニックの国家斉唱拒否問題が何かと話題だが、韓国でも過去にそれに近い事件が起きたことがある。

韓国のプロバスケットボール・リーグのKBLでの出来事だ。

国歌が流れているときにストレッチをしていただけなのに・・・

2015年3月18日、昌原(チャンウォン)に本拠地を置き、LGエレクトロニクスがスポンサーになっている昌原LGセイカーズの大黒柱であるアメリカ出身のデイボン・ジェファーソンに、試合前に会場に流れる韓国国歌歌斉唱の際、ストレッチをしながら体を解していた態度が「無礼だ」と非難集中。メディアやファンから厳しい声が上がったのだ。

これを受けて3月19日に本人が謝罪会見を開いたが、その一方で彼のSNSに両手で中指を立てている写真をアップしていたことが発覚し、さらに非難の的に。ジェファーソンは「韓国文化を無視したのではない。国歌が流れたときに痛みを感じたのでストレッチしただけ」と釈明したが、非難の嵐は収まらず、昌原LGセイカーズは信じられない決断を下す。

3月20日にジェファーソンを緊急解雇したのである。

当時、LGセイカーズはリーグ戦4位でプレーオフに進出しており、その中心選手がジェファーソンだった。レギュラーシーズンでは平均22得点を記録し、レギュラーシーズンの得点王にもなっていた。

韓国人が過剰反応する“国民儀礼”とは?

そんな大黒柱を大事なポストシーズンの最中に解雇してしまったのだ。その言い分は次の通りだ。

「愛国歌の演奏中にストレッチしたから解雇するわけではない。今までの彼の不適切な行動を加味して下した」

LGセイカーズはジェファーソンが試合中に携帯電話をチェックしたり、自身のSNSに歓楽街で女性と撮った写真や下半身裸でベッドに横たわる黒人女性の写真をアップしてきたことなども問題視しての決断だったとしているが、“愛国歌ストレッチ”が解雇の決め手になったことは間違いないだろう。

外国人にまで韓国愛を強要すべきか?

もっとも、裏返せば大事な時期にチームの大黒柱を手放さなければならないほど、韓国では国歌斉唱や国旗掲揚などのいわゆる“国民儀礼”が、過剰に重要視されていることがわかる。過去にも“国民儀礼”を巡ってさまざまな問題が起きている。

サッカー韓国代表のキ・ソンヨンが、Aマッチ前の国歌斉唱時の敬礼を右手ではなく左手で行なっていただけで非難されたこともあるほど、韓国人は“国民儀礼”に敏感なのだ。

ジェファーソンの行ないも“愛国ストレッチ”と揶揄され、「LGセイカーズの決断は正しい。ほかの外国人選手にも十分なアピールになる」と拍手を送る声も多かった。

ただ、露骨に愛国心を助長するだけではなく、外国人にまで韓国愛を強要するのはいかがなものか。それもストレッチしていただけで解雇されるとは……。
(参考記事:外国人女性の被害続々…“女性観光客にとって危ない国”に落ちた韓国)

韓国の一部ネチズンの間では、「あれで解雇? マジで韓国の愛国主義はひど過ぎる。逆に韓国の選手が日本に行ってジェファーソンと同じことをすれば、“良くやった”と褒めるくせに」と、行き過ぎる自国の愛国主義を嫌気たっぷりで皮肉る声も上がった。

ちなみに韓国ではプロバスケットボールだけではなく、プロ野球でもすべての公式戦で国歌斉唱が行なわれている。

アメリカのNBAやMLBに倣った慣例だと言われている。ブロサッカーのKリーグでは行われず、プロバレーボールリーグのVリーグでは開幕戦とオールスター戦のみ行われる程度。アメリカを倣った慣例で、アメリカ人選手が解雇されるのだから、それもまた皮肉でしかなかっただろう。

(文=慎 武宏)