『思うがままに』(ちとり/主婦の友社)

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 少女マンガの主人公はたいてい、いい子だ。困っている人はほっとけないし、誰かを陥れるような真似は絶対にしない。だが最近、そうでもない女子が主人公のマンガが増えている気がする。なぜか? たぶん共感するからだ。悪口を言わない純真さには憧れるけど、毒を吐きながらも目的のために邁進するのが一般読者の姿だから。でもまあ、それにしたってここまで欲望に忠実だといっそ清々しいよなあ、と感心してしまったのが、『思うがままに』(ちとり/主婦の友社)の主人公、女子大生のエリカである。

 ルビーの指輪めあてで、いわくつきの壺を買ったエリカ。絶対に二つを離してはいけないといわれていたのに、帰り道にさっそく壺を放り投げ割ってしまったところ、目の前に現れたのはなんと悪魔。記憶も力もいっさい失い、指輪の持ち主にも逆らえないらしいと知ったエリカは、彼を暁(あかつき)と名づけ、サークルの先輩・誠也との恋を成就させるため利用してやろうと決める……というのが物語の大筋。WEBサイト『コミカワ』にて連載開始するやいなや「単行本で読みたい!」の声が続出した期待度No.1の作品だ。

 何が何でも好きな人をふりむかせたいという気持ちはもちろんよくわかるが、それにしたってこのエリカ、しょっぱなからヒロインとは思えない邪悪な顔を連発させる。悪魔を足蹴にするし、先輩以外にはぞんざいで傲慢。口も悪けりゃ態度も悪い。だが、だからといって別に悪い子というわけでもない。彼女はただひたすらに「誠也先輩が好き」で「先輩に近づきたい」。そのために邪魔者は排除するし、使えるものは悪魔でも使う。それだけなのだ。

 しかも、悪魔といえどイケメンと同居しているというのに、エリカが暁によろめくこともない。もちろん二人の掛け合いは回を追うにつれ息ぴったりになっていくし、利用しているつもりでいつのまにか振り回されている二人の関係性には、少しずつ、本人たちが意識しないところで変化が訪れているようにも感じられる。だからこそ読者は「どっちとくっつくのかな…?」という三角関係に焦れる楽しみを得るのだが、それでも今のところ彼女の自覚は先輩一直線だ。怒るのも、笑うのも、照れるのも、悲しむのも、すべてが先輩のため。そんな彼女の言動は、ふだんがアレなだけに非常にかわいらしい。特別いい子でも優しくもないが、好きな人に一途でさえあれば誰でも少女マンガの主人公になれるのだということを、エリカは証明しているのかもしれない。

 さらに恋模様と同時進行で展開するのが暁の正体……だけでなく、どうやら暁と因縁のありそうな先輩の謎。さらには同じサークルのメガネ男子・光陽(ひなた)も、エリカの指輪が普通のものでないことに気づき、物語はにわかにファンタジー色を強めていく。記憶がないゆえに魂の奪い方もわからず、エリカのライバル・さやにただキスをしただけになってしまった暁のせいで、サークル内の人間関係はさらに混線。恋と謎の行方に今後も目が離せない。

文=立花もも