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老後というと、老後資金のことばかりを気にしがちです。しかし、そのお金でどうしたいのか、何をやりたいのかをイメージしている人は多くはありません。40代の今だからこそ、老後に向けてできることがあります。それによって、必要なお金も変わってくるのです。連載2回目は、40代の今やっておくべきことをファイナンシャル・プランナー畠中雅子さんのチェックリストとともにご紹介します。【連載】40代から考える老後のお金
子どもの教育費や住宅購入など、今の40代は大きな出費が複合的に待ち構えている時期でもあります。さらに老後資金もとなると、ただただ不安に思ってしまう人も少なくありませんが、やみくもに不安になっても仕方がありません。安心して老後を迎えるために、今、やっておくべきことを全5回の連載で考えてみます。

お金の心配ばかりではなく、それまでどう過ごすかが大事

「子どもが大学を卒業したら、社会人になったら、自分のやりたいことをする、という相談者は少なくありません。でも晩婚化の影響で、親が60歳になっても子どもが独立していない世帯も多いのです。子どもが独立してからでは、できることが限られるのではないでしょうか」

畠中さんは、40代、50代で楽しんだ経験がないのに“老後だけを楽しむ人生”を考えている人に警鐘を鳴らします。

「退職したら、何かしら資格を取りたい、スクールに通いたいという相談もありますが、40代の今のほうが、はるかに記憶力、集中力が高いのですから、学ぶことを先送りする必要はまったくありません」

将来の不安や老後資金の心配はあるものの、とかく、目先の仕事や生活、子育てに追われ、自分自身を磨くことは後回しにしがちです。しかし、定年退職しさえすれば、自分のやりたいことができるようになるのでしょうか。それまでの生活のなかで、遊ぶ習慣、学ぶ習慣が身についていないと、退職後のありあまる時間を持て余すことになる可能性が高いのです。

「確かに、今は仕事が忙しく、家事や子育てに追われて、学ぶ時間が取れない、ということもあるでしょう。学校に通うのは難しくても、週に1回、自治体や地域で開催されるサークルのようなものに参加するだけでもいいのではないでしょうか」と、畠中さんはアドバイスします。加えて、子どもが小学校高学年になれば、一人で留守番をさせることもできるので、親が学んでいる姿を見せるのは、親子の自立のためにも、有意義なことだと話します。

「自分の将来のために、やりたいことの準備期間であるとともに、親子、夫婦、それぞれが、折り合いの付け方を学ぶ時期が40代でもあるのです」

老後にやりたいことは、今やっていることの延長線上にある

とはいえ、60歳以降に何をしたいのか、と漠然と考えているだけでは、その実現性は遠のきます。そのために畠中さんが推奨するのは、「レジャープラン表」の作成です。これはレジャーに限らず、学びたいこと、ボランティアでしたいこと、さらには退職後に起業するといった目標があれば、それも書き込んでいきます。

【図1】畠中雅子さんオリジナルの「レジャープラン表」を元に筆者作成。夫と妻、場合によっては、子どもの年齢も記載し、いつ、誰と、何をしたいのかをできるだけ具体的に書くことがポイント。それによって、予算も変わり、老後のレジャー費の累計も変わってくる。老後の生活費だけではなく、豊かな生活を送るための予算も念頭に置いておきたい

【図1】畠中雅子さんオリジナルの「レジャープラン表」を元に筆者作成。夫と妻、場合によっては、子どもの年齢も記載し、いつ、誰と、何をしたいのかをできるだけ具体的に書くことがポイント。それによって、予算も変わり、老後のレジャー費の累計も変わってくる。老後の生活費だけではなく、豊かな生活を送るための予算も念頭に置いておきたい

記入するにあたって、できるだけ詳しく書くことと畠中さんは言います。具体的には、以下の6つのポイントです。

(1)西暦とともに、実行する時期、できれば月まで記入する
(2)夫と妻の年齢を記入。サンプルは75歳までだが、80歳まで考えている人も多い
(3)行きたいところ、やりたいことは具体的に。旅行であれば行き先も明確にするといい
(4)予算は現時点で分かる範囲でOK
(5)予算の累計を出すことで、老後の「生活費」以外にかかるお金を把握する
(6)これからの貯蓄のスピード、増減の具合で、プランの見直しをする

「このレジャープラン表は、老後になって突然に始めること、というのではなく、現在の生活の延長線上にあると考えてください。例えば、今、クラシックのコンサートに出掛けることがないのに、老後になったからといって出掛けるようになるのでしょうか。旅行が好きでもないのに、老後になったからと言って、海外旅行に頻繁に行くようになるのでしょうか。レジャープラン表は、現在の自分の行動を見つめ直すきっかけにもなるでしょう」

また、記入例では夫婦での旅行が多いケースを取り上げましたが、ママ友がシニアになっても交流が続き、一緒に旅行することが何よりも楽しいという方や、地域サークルの仲間との旅行というケースもあるそうです。まさに、現役時代にどう過ごすかで、レジャープラン表の中身は変わってくると言えるでしょう。

家計簿ではなく、貯金簿で資産の動きをチェックする

老後のお金についての問題点は、遠い将来のお金の不安と、直近の生活のやりくりが混在し、年間での資産増減について、あまり把握できていないことも挙げられます。かたや20年後に向けて何千万円準備するという話と、かたや毎月の収支を家計簿でチェックするという話で、年間でいくら貯蓄ができたのか、いくらローンなどの負債が減ったのかという確認が不十分な家庭も多いのです。

「老後のお金も、1年1年の積み重ねです。少なくとも半年に1度は、資産の棚卸しをして、貯蓄の増え具合、減り具合、その原因をきちんと把握することが大事です。家計簿をきちんとつけていても、年間での資産の動きは把握できません。『貯金簿』をつけることをおすすめしています」と、畠中さんは言います。

【図2】畠中雅子さんオリジナルの「貯金簿」を元に筆者作成。勤務先で行っている積立貯蓄があれば記入するなど、使っているものを洗い出すことから始める。普段、通帳記入をしない人も、これを機にこまめに記帳し、残高を確認するようにしたい

【図2】畠中雅子さんオリジナルの「貯金簿」を元に筆者作成。勤務先で行っている積立貯蓄があれば記入するなど、使っているものを洗い出すことから始める。普段、通帳記入をしない人も、これを機にこまめに記帳し、残高を確認するようにしたい

貯金簿のフォーマットは使いやすく自分でアレンジすればOK。夫名義、妻名義を分け、銀行、保険、投資などの種類別に書き出します。貯蓄性のある保険は、保険料を支払った分、プラスの資産になりますので、貯金簿に加えます(掛け捨てなどの保険は対象外)。投資に関しては、その時点の評価額を記入。取引明細は別に作成したほうがいいでしょう。また、住宅ローン残高を記入し、いくら減っているのかを明確にしておくことも大切です。

「半年に1度、慣れてきたら3カ月に1度程度、貯金簿をまとめ、前回と比べて貯蓄の増え方はどうか、予定どおりに貯蓄が増えていないとしたら、その原因はなんだったのかを明確にしましょう。さらに、貯蓄に余裕があれば、住宅ローンの繰り上げ返済をしたほうがいいのか、という判断もできるでしょう」

こうして、レジャープラン表と貯金簿の2つで、老後のお金を、より具体的にイメージしていくことで、今、使えるお金、我慢すべきお金も見えてきます。

「今の40代は、堅実であまりお金を使わない傾向にありますし、家計相談をしていても、派手に無駄遣いをする家庭は少ないです。それが、かえって心配で、とっておくお金と、今、使うお金を分けて考え、後悔しない40代を過ごしてほしいですね」

●取材協力/畠中雅子さん
ファイナンシャル・プランナー、生活経済ジャーナリスト。新聞・雑誌・ネットで多数の連載を持ち、セミナー講師や個人の家計相談でも活躍中。生活実感のある家計アドバイスに定評がある。著書は『どっちがお得? 定年後のお金』など60冊を数える。「子どもにかけるお金を考える会」、高齢者施設への住み替え資金アドバイスをおこなう「高齢期のお金を考える会」、ニートやひきこもりのお子さんを持つご家庭に生活設計アドバイスをおこなう「働けない子どものお金を考える会」を主宰している。
子どもにかけるお金を考える会HP