専門医顔負けの知識量で、まれなタイプの白血病を診断した人工知能が話題になった。日本の医療現場では、ロボティクスはすでに当たり前の風景だ。

 臨床現場に浸透しているのは手術支援ロボット「ダ・ヴィンチ」だろう。手ぶれ防止機能を備え繊細に動くロボットアームと、人の眼では不可能な角度から人の数十倍の拡大視野を確保する3Dカメラが精細な手術を可能にする。

 今年4月の診療報酬改定では、前立腺がんの腹腔鏡下切除術(2012年保険適用)に続き、腎臓がんの部分切除術に保険が適用された。

 ロボット手術が「標準治療」となりつつある今、「人間の手による手術と比べて術後の合併症や治療成績はどうなの?」という疑問がわき上がってくる。

 先日、オーストラリア・ブリスベンの病院から、人の手による開腹での前立腺摘出術とロボット支援腹腔鏡下前立腺摘出術とのガチンコ勝負の成績が報告された。

 勝負ポイントは、術後の尿漏れなどの排尿障害や性機能障害の程度に加え、肝心のがん病巣を取りこぼしていないか、などである。

 被験者は手術可能な早期前立腺がんの男性(35〜70歳)、326人で、コンピューターを使って「手による開腹術群」と「ロボット手術群」に分けられた。

 術後6週時点で、100点満点の排尿機能評価スコアの結果は「手による開腹術群」74.5vs「ロボット手術群」71.1、12週時点では、同83.8vs82.5と明確な差は認められなかった。また性機能障害についても、同じく有意差は示されなかった。

 肝心のがん病巣を完全に切除しているかに関しても有意差はなし。ただ、今回の報告は早期のもので、再発率に差がでるか否かは、今後2年間の追跡結果を待つしかない。

 研究者は「有意差がつかなかった現時点で言えることは、患者は『ロボットか手か』という方法論よりも、気心が知れ信頼できる執刀医を選ぶべき」としている。

 結局、手にしてもロボットアームにしても、その後ろには患者の安全・安心を第一に考える執刀医が必要なのだから。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)