「現役時代は、歯に衣着せずズバズバものを言う人でした。分裂前の山口組の幹部らと交流があり、ヤクザ界以外にも人脈を持っていました。まさに伝説のヤクザといっていい人物でした」(ヤクザ界に詳しいジャーナリスト)

東京に本部を置く指定暴力団の最高幹部だった金子幸一氏が、8月21日に亡くなった。享年85。ある現役の最高幹部は「ヤクザとしては大往生(の年齢)だった」と故人を偲んだ。

金子氏は芸能界に広い人脈を持ち、また敵味方を超えて、ほかの暴力団幹部との交流も幅広かった。関東在住のある暴力団関係者は言う。

「東京に山口組が進出してきた1990年代初頭、金子氏は山口組と対峙していたことがあったが、その後は、東京側の交渉の窓口になった。山口組のある幹部は『金子さんとなら話をする』と言って、争いごとを収めていた」

本誌は、金子氏と芸能関係者との関係を物語る、複数の写真を入手した。当事者に、金子氏との関係について聞いたが……。

「どこかでいっしょに撮ってほしいと言われて撮ったものだろうが、本人はまるっきり覚えていないと言っている」(西岡徳馬の所属事務所)

「写真は10年以上前のものです。金子さんについては知りません。結婚式に出席したときに撮られたのでしょう」(清水健太郎の所属事務所)

いずれも、金子氏とは面識がないとコメントした。一方、金子氏と年賀状のやり取りをしていた俳優のなべおさみは、金子氏との関係を認めた。

「息子の替え玉受験事件で落ち込んでいるとき『お茶でも飲もう』と電話をもらったのが最初。『マカオで賭博場をやれ。銭になるぞ』と誘ってくれたことがありましたが『僕は役者ですから』と断わりました」

交友関係は政界に及び、閣僚経験のある政治家ともつき合いがあった。

「金子さんに相談すると『俺が言ってやるから大丈夫』と、政治家に掛け合ってくれた。その政治家とは、亡くなる直前まで年賀状のやり取りがあったという」(前出・暴力団関係者)

写真にはアジアの大物映画スターや、超一流格闘家といっしょに撮られたものがあり、人脈が海外にまで及んでいたことをうかがわせる。

現役を引退して12年たつ金子氏の葬儀だったが、警察は監視し睨みを利かせていたという。ヤクザと芸能界の古い歴史を知る男がまた一人、逝った。
(週刊FLASH 2016年9月20日号)