9月シリーズの2試合を終えて、香川に笑顔はない。いくつもの決定的チャンスを、日本の10番は一度もモノにはできなかった。(C)SOCCER DIGEST

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[ロシアワールドカップ・アジア最終予選]タイ 0-2 日本/9月6日/ラジャマンガラ・スタジアム
 
 これが「日本代表の10番」を背負う者の宿命なのだろう。
 
 チャンスに顔を出さなければ、存在感がないと手厳しく言われる。決定機に絡んでも、決めなければ非難の声にさらされる。攻撃が中央に偏りすぎるなど、戦術上の不具合の原因として香川がやり玉に挙げられるケースは少なくない。
 
 結局は、結果を示さなければならないということだ。ゴール、最低でもアシスト。そのふたつを欠けば、真っ先に批判の対象になる。いくら守備に奔走しても、どれだけ正確なセットプレーで好機を演出しても、評価はされないのだ。
 
 たしかに、タイ戦の香川はいくつかの決定的なチャンスをモノにできなかった。45分、本田のヘディングシュートのこぼれ球を押し込もうとしたが、相手DFの懸命なブロックに阻まれる。63分の原口のスルーパスに抜け出した1対1の場面では、GKにストップされた。74分の酒井高のクロスに頭で合わせた場面でも、ボールは枠を捉え切れなかった。ゴール前での稚拙なトラップミスもあった。
 
 両手で頭を抱え、天を仰ぐ。UAEとの初戦を落とした日本は、今回のタイ戦の勝利でひとまずは目の前の危機を脱した。だが、最終予選の2試合を終えてノーゴールの香川は、いまだ“崖っぷち”に立たされている。
 
 もっとも、ゴールもアシストもないのは、ここ2試合だけだ。6月のキリンカップのボスニア・ヘルツェゴビナ戦は怪我のため出場できなかったが、同大会初戦のブルガリア戦では、前半だけで2得点を決めている。
 
 さらにその前のシリア戦(2次予選)でも、同じく2得点をマーク。今年に入ってからハリルジャパンは計6試合を戦っているなか、香川は5試合に出場して4得点。プレッシャーの度合いや相手のレベルを無視すれば、上出来の数字である。
 
 ただやはり、多くの注目を集める最終予選という舞台で、目に見える結果を残せていない事実が、ネガティブな論調を引き起こしているのかもしれない。
 
 ロシア・ワールドカップを目指す過程で、このままトップ下という重要なポジションを託したままでいいのか。世間の目は、冷ややかに香川を見始めている。そうした状況を招いているのは、他でもない香川自身なのだが……。

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 現状のままでは、スタメンを外されても不思議ではない。トップ下を争う清武は、代表での存在感を増しつつある。迫りくるライバルとは、しかし同じピッチに立てば息の合った連係を見せるだけに、清武を左ウイングに配し、トップ下・香川との「共存」は日本の大きな武器になる可能性を秘めている。
 
 タイ戦では結果を残せなかった。ただ、ゴールチャンスを捻出できているのは悪いことではない。あと一歩。そういう見方もできるし、勝負弱さを露呈したとも言える。
 
 当の香川は、険しい表情で想いを吐き出す。
 
「(ゴールできなかったのは)課題だし、決めなければいけない。ただもう、結果は出ていて、チームも勝った。前を向いてやるしかない」
 
 9月シリーズは「改めて、最終予選の難しさや厳しさを感じる2試合だった」と振り返る。「みんなで勝ち取った」とタイ戦の勝利に胸を撫でおろしつつ、視線はすでに次の戦いに向けられていた。
 
「また来月、本当に厳しい2試合が待っている。(そこに向けて)日頃からしっかとやり続けるしかない」
 
 香川はまだなにもあきらめてはいない。「やり続ける」「前を見続ける」「継続」という言葉を繰り返す。それはまるで、膨れ上がる焦燥を押し隠すようにも聞こえた。
 
 9月シリーズで2試合ともフル出場を果たした攻撃の選手は、香川だけだ。唯一、トップ下にだけ手をつけなかったハリルホジッチ監督が、いつ“決断”を下すかは分からない。時間はあまり残されていない。次の10月シリーズで、香川にはひとつの審判が下されるだろう。
 
取材・文:広島由寛(サッカーダイジェスト編集部)