『良いサッカーをするために』というよりは、『点をとるために』何をするかとがすごく大事。そのための判断とか技術の質をさらに上げていかなければいけない。30センチのポジショニングの位置の違いとか、足の振りのスピードとか、そういうことで変わってくると思います。あとはやっぱり閃きもあると思いますね。やることはまだまだ多いです」
 
 高倉監督は、ロシアワールドカップのアジア最終予選を戦う男子を引き合いに出して、点を取るために、具体的に細かい精度を上げる必要があると説く。
 
 それは選手も理解している。
「オーストラリアはうまく世代交代ができていて、若い選手がかなり勢いづいてきているので、より怖い存在になっている。ほかの国との対戦は、ミラーゲームをしているような感覚。自分たちのトレーニングで紅白戦をやっていてもかなり難しいですけど、日本と同様に、中国や韓国、北朝鮮は欧米選手にはないポゼッションの繊細さがある」とアジア特有の難しさを語るのは、鮫島だ。
 
「今まで以上にポゼッションの質や、ゴール前での攻防の強さを身に付けていかないと、リオ五輪予選のように負けてしまう。もともといつもギリギリの戦いですけど、さらに精度を上げていきたい」
 
 アジアでの戦いを何度もくぐり抜けてきた、歴戦のSBがそう語るように、フィジカルを利した攻撃を仕掛けてくる、アジアのなかでは異質な存在のオーストラリア、そしてミラーゲームを仕掛けてくる中国や北朝鮮などを相手に対抗するには、さらに、スタイルに磨きをかける必要がある。
 
 他国を出し抜くほどの熟練されたスタイル――。方向性は見えている。再び世界の舞台に戻ることができるのか。新たな航海は始まったばかりだが、海図を手にしたなでしこジャパンに、迷いはない。
 
取材・文:多田哲平(サッカーダイジェストWEB編集部)