“ママの死”で本当に描きたかったものとは? 大人気絵本『ママがおばけになっちゃった!』作者インタビュー

写真拡大

2015年の発行以来、ママたちの間で大人気の絵本『ママがおばけになっちゃった!』。

大ヒット絵本『おやすみロジャー』監訳者に聞いた! 子どもの“脳と身体を育てる”ベストな睡眠法

シリーズ2作目の『さよなら ママがおばけになっちゃった!』と併せると、累計53万部のベストセラーに。

交通事故で死んでしまったママが4歳のかんたろうを心配し、おばけになって家に舞い戻ってきました。

この絵本が、なぜこれほど多くのママたちに支持されているのでしょうか。作者であるのぶみさんに、その理由を伺いました。

「ママありがとう!」と言ってもらえる絵本が目標!

――「母親が死んでいなくなる」という、子どもにとっては非常にショッキングな状況が背景になっています。

なぜ、こうした設定の絵本を描こうと思われたのですか?

「僕がこの絵本でいちばん伝えたかったのは、『みんな、もっとママに感謝しようよ』ということなんですね。

うちにも小学生の息子と娘がいるからよくわかるんですが、お母さんって、どんなに一生懸命、子育てや家事をしても、子どもたちからはまったくありがたがられない存在でしょう。料理や掃除をするのはあたりまえ。

それどころか、歯磨き粉やケチャップがなくなれば、たちまち『ママー!』って呼ばれて文句を言われる。

特に、絵本の読み聞かせをするような小さなお子さんがいるお母さんたちは大変ですよ。朝から晩まで、子どもの世話に追われているのに、ちっとも感謝してもらえない。

だから、子育てにイライラしてしまうママが多いと思うんです。

けれど、もし『いるのが当然』と思っていたお母さんがいなくなってしまったら、どうなってしまうのか?

子どもたちに、お母さんのありがたさを実感してもらうためにも、『ママが交通事故で死んじゃった』というインパクトの強い設定にしたんです」

――なるほど。「ママが死んでしまった悲しいお話」ではなく、「ママってありがたい存在なんだ」と、子どもたちに気づいてもらうための絵本なんですね。

「そうなんです。この絵本を通じて、初めて『ママがいなくなることがあるんだ』と気がつき、『ママ、死んじゃイヤだー!』と、泣くお子さんも多いと聞きました。

もしかしたら、自分のママもいなくなってしまうかもしれない。そんな状況をリアルに想像することで、子どもたちの心にママへの感謝の気持ちが生まれるんですね。

その結果、それまではすべてお母さん任せだった子が、ちらかしたオモチャを片づけるようになったり、食事に使ったお皿を台所まで運んでくれるようになったという話も読者の方に聞きました。

また、この絵本を読みきかせしたら、『ママ、ありがとう!』と、お子さんが言ってくれるようになったという方もいて、僕自身もとてもうれしくなりました」

――「ありがとう!」のひとことだけで、子育ての苦労が吹っ飛びますから。

「ですよね。もうひとつ、この絵本を子どもに読んであげているお母さん自身も、『もし、自分がわが子とわかれることになったら、どんな気持ちになるだろう?』と想像すると思うんです。

それって、母親にはいちばん辛いことでしょう。いくら、言うことを聞かなくても、家じゅうを散らかしてばかりでも、その子と一緒にいられる毎日がどれだけ幸せなのかということを、あらためて実感できる。

『この絵本を読むと、自分がいかに幸せかと気づき、子育てのイライラがスーッと消えて行きました』と、おっしゃるお母さんも大勢います。

そんな子育て真っ最中のママたちの声が、このシリーズを支持していただいている最大の理由なのかもしれません」

思わず号泣してしまうのは前半にある笑いのおかげ!

――1作目がベストセラーになったとき、「泣ける絵本」として注目されましたね。

「読者の方からも『子どもと一緒にワンワン泣きました』という感想をたくさんいただきました。

けれど、このシリーズは決して悲しいだけの話じゃないんです。子どもたちに読み聞かせをすると、むしろ前半は大笑いしてくれるんですよ」

――確かに、「オナラと いったら ママだもんね」「へっ へっ へが でる5びょうまえ!」など、思わず噴き出してしまうセリフも満載です。

「絵本ですから、やっぱりまず子どもたちに楽しんでもらわないと。いくら『これはいい絵本だから』と大人が言っても、面白くなければ子どもは絶対に読んでくれませんからね。

前半で思い切り笑って、この絵本の世界を楽しんでくれているからこそ、後半のママとの悲しいわかれがギャップになって、涙が止まらなくなるのではないでしょうか」

――あまりにも笑える箇所が多いので、「死を軽んじているのでは?」という批判もありましたが……。

「決して軽んじているわけではありません。ただ、“死”は特別なものじゃなく、誰にでも訪れる身近なものだと僕は思っています。

それは実家がキリスト教の教会で、父が牧師だったことも影響しているのかもしれません。1階が礼拝堂で、僕たち家族はその上の2階で暮らしていました。

子どもの頃から、教会で行われるお葬式をしょっちゅう見ていたので、僕にとって“死”はかなり身近なものだったんですね。

もうひとつ、この絵本では“死”という形にしていますけど、僕としては、『ママの死』=『子育て卒業』というつもりで描いています。

実は、主人公のかんたろうというのは、うちの息子の名前なんですよ。そして、おばけになってしまったママには僕自身の姿も重ねています。

僕は父親の立場ですけれど、『子どもが自分の元を離れて行くまでに、親として何を伝えておけばいいのだろうか?』と考えるのはママたちと同じです。

この絵本を読んで大いに笑ったり泣いたりしてもらいながら、子育て卒業までに自分が子どもに何を伝えて行くべきかを、一緒に考えてもらえればうれしいですね。

『ママがおばけになっちゃった!』という設定ですが、この絵本のテーマは子育てです。

出来ればかんたろうが大人になって結婚するまで、おばけのママがかんたろうを見守っていくようなシリーズものにしていけたらと思っています」

最後のオチも楽しいので絵本の裏表紙も要チェック!

――笑いあり、涙ありで、親子で大満足のこの絵本。実際に、子どもに読んであげるときのコツなどはありますか?

「僕の絵本は大人が子どもに読み聞かせすることを前提に描いているので、必ず声に出して読んであげてほしいです。

そのために、試作の段階から、僕自身もセリフの読み聞かせを何度も繰り返し、修正に修正を重ねながら最終的な作品に仕上げて行きました。

自分の子どもたちに読み聞かせしたり、近所の公民館で大勢の子どもたちの前で読んでみたり。絵本の世界とはまったく無縁の大人たちの前で読んでみたこともありますね。

そうすると、自分が面白いと思って書いたセリフに笑ってもらえなかったり、逆に、意外なシーンがウケたりするのがリアルにわかる。

そこでまたあらたに手を入れて、『これでもう完璧!』と思った段階からさらに30回くらい修正して、『ママがおばけになっちゃった!』シリーズも完成させました」

――すごい! 1冊の絵本を完成させるまで、そんなにエネルギーを注いでいらっしゃるんですね。

「はい。絵本作家になってから17年間、1人でも多くの子どもたちに、僕の絵本を読んでもらいたいと思っていますから。

このシリーズを1冊読み聞かせするのに必要な時間はわずか5分間ですけど、『さよなら ママがおばけになっちゃった!』を完成させるまでには10カ月以上の時間をかけています。

それだけに細部までこだわって、背景の絵の細かいカットにも様々な仕掛けがあるし、本を閉じた後の裏表紙にもクスッと笑えるオチが待っている。

笑って、泣いて、また笑える。そんなこのシリーズならではの面白さも、ぜひ、お子さんに読み聞かせしてもらえたらと思います」

まとめ

ママたちの子育てストレスもスッキリと解消してくれる、のぶみさんの大人気絵本。

『ママがおばけになっちゃった!』『さよなら ママがおばけになっちゃった!』と、2冊続けて子どもに読み聞かせすれば、親子でいっそう笑えて泣けることうけあいです。