【睡眠薬の副作用】骨折の恐れも…不眠症・うつ病患者要注意

写真拡大

いつまで経っても安眠できない…。不眠症が深刻になってくると、藁にもすがるような気持ちで睡眠薬に頼る人は少なくありません。Fuminners(フミナーズ)読者のみなさんの中にも、不眠症で睡眠薬を飲んでいる人がいるのではないでしょうか?実際に睡眠薬を服用している人は想像以上に多く、イギリスでは不眠症、うつ病による対策として10人に1人が睡眠薬を常用しているそう。医師が処方する睡眠薬のコストは、なんと年間5000万ポンド(日本円にして、約65億円)にも上るといいます。
 
しかし、不眠症対策の有効な手段のひとつに睡眠薬が挙げられることは、疑いようのない事実であるものの、その裏には恐ろしい“副作用やリスク”が潜んでいるということも忘れてはなりません。

人気のメラトニン系睡眠薬でも、骨折の副作用・リスク44%増!

これまでの研究では、睡眠薬の常用で心臓発作や肺がんの発症リスクを高めることが報告されており、睡眠薬の処方には慎重な姿勢で臨むことが求められている…ということはご存知の方も多いはず。
 
2013年には、「Z睡眠薬」といわれる非ベンゾジアゼピン系睡眠薬が心臓発作リスクを50%増大させること、2014年のフィンランドの研究では、週に2回以上服用すると、肺がんリスクが高まることなどが報告されています。
 
では、「睡眠薬で骨折のリスクが高まる」という話は、ご存知でしょうか?
 
この興味深い報告をしているのは、イギリス・キール大学の研究チーム。一般医309人からデータを提供してもらい、不眠症で睡眠薬を処方されている45歳以上の3,405人と、同じ年齢で睡眠薬を服用していない患者2,752人との間で、転倒による骨折との関連性を比較する研究実験を行ったところ、
 
●ベンゾジアゼピン系睡眠薬服用者:骨折発症リスク26%増
●Z睡眠薬服用者:骨折発症リスク52%増
●メラトニン系睡眠薬服用者:骨折発症リスク44%増
 
※リウマチ関節炎、視力低下などによる骨折を除いて調整した数値
※被験者が服用している睡眠薬の種別は、ベンゾジアゼピン系880人、Z睡眠薬1,148人、メラトニン系1,377人
 
という結果が得られたといいます。副作用や依存性が低いとされ、服用者が伸びているメラトニン系の睡眠薬でも44%増というのは、とても恐ろしい結果ですね…。
 
また、東京大学医学部附属病院老年病科の田宮寛之氏ら研究チームが、2012年4月から2013年3月までに入院した50歳以上の認知症入院患者を被験者に行った、睡眠薬処方と骨折の関連性の調査報告も注目に値します。同実験では、140,494件の対象案件のうち、院内で骨折した症例は830例あり、短時間型ベンゾジアゼピン系、超短時間型非ベンゾジアゼピン系睡眠薬などの使用患者で骨折が多くみられたそうです(※1)。
 
ちなみに骨折箇所は腕や手首、足が多いようですが、これは転倒による骨折が多かった結果かもしれません。65歳以上の30%超が一年に一度以上転倒による骨折を経験しており、これを複数回繰り返してしまうケースは半数以上…という調査報告もあるようなので、睡眠薬を服用している高齢者の方は特に骨折リスクが高いといえそうです。

日本では成人の約20人に1人が睡眠薬を服用中

ところで、日本人の睡眠薬事情はどうなっているのでしょうか。厚生労働省研究班が2009年に成人男女を対象に行った調査によると、3カ月処方率(最低3カ月に1回処方を受ける割合)は4.8%。健康保険組合の加入者約118万人を対象にした調査では、2012年10月から2013年9月までの1年間に医療機関の外来でベンゾジアゼピン系睡眠薬を処方された人は58,314人で、全体の約5%だったといいます。
 
いずれの結果も、成人の約20人に1人が睡眠薬を服用していることになります。イギリス人の10人に1人よりは少ないものの、それでも多いような気がするのは筆者だけでしょうか…。
 
ちなみに、健康保険組合の調査結果を年代別にみると、処方率が最も高かったのは65〜74歳の年齢グループで、なんと約19%! 50〜64歳は9%、35〜49歳では7%と、年齢が上がるにつれて睡眠薬の服用率が高くなっている傾向があるようです(※2)。
 
ベンゾジアゼピン系睡眠薬の主な副作用には、過鎮静、認知機能低下、転倒などが挙げられており、特に筋力が低下している高齢者は転倒、骨折を起こすリスクが高くなります。また、鎮静作用が効きすぎて骨折に気が付かないという例もあるようで、日本睡眠学会などが2013年に発表した「睡眠薬の適正な使用と休薬のための診療ガイドライン」では、高齢者にはベンゾジアゼピン系睡眠薬をすすめないことが記載されています(※3)。
 
近年は、不眠症に対するメラトニンの処方は増加傾向にあり、2011年以来、年間50万件近く増えているといいます。しかし、転倒による骨折の観点からみると、メラトニン系睡眠薬は決して安全なものとはいえないそう(※4)。
 
また、不眠症対策として、最近、医薬品を使わない認知行動療法などにも注目が集まっていますが、それぞれの症状によって効く、効かないがあるといわれています。
●睡眠薬に頼らないで不眠症を改善する「認知行動療法」とは?
●睡眠薬に頼らない不眠症治療、認知行動療法まとめ
 
と考えると、不眠症対策において万人に有効な方法はない…と考え睡眠薬も含め、どのような形、どのような頻度で不眠症対策を行っていくのが自分にとって最適なのかを見つけることが重要なのかもしれません。まずは専門家の意見を求めることからはじめ、リスクの少ない、自分なりの不眠症対策を見つけましょう!
 
●睡眠薬を減らしながら、しっかり不眠症を改善する方法とは?
●更年期の不眠対策に新提案! 薬いらずの改善策「認知行動療法+睡眠日記」
●認知行動療法から見た「不眠に陥りがちな人、再発しやすい人、治りにくい人」の特徴は?
 
※1 認知症患者への睡眠薬投与、骨折に注意
※2 高齢者の2割にベンゾ処方
※3 睡眠薬の適正な使用と休薬のための診療ガイドライン
※4 Martin Frisher et al.; Age Ageing 2016, doi: 10.1093/ageing/afw123

photo:Thinkstock / Getty Images