専門誌では読めない雑学コラム
木村和久の「お気楽ゴルフ」連載●第70回

 英国紳士から言わせてみれば、現代のゴルフをダメにしたのは、「アメリカの乗用カートと日本のおばちゃんキャディー」なんだそうです。さすが、ジェントルマンの国の意見。実に手厳しい......。

 日本は、おばちゃんキャディーと乗用カートの両方を愛用しており、一番堕落しているのかもしれません。そこで今回は、そんな乗用カートにまつわるお話をしましょう。

 まずはカートのよもやま話から。

 乗用カートって、すべて左ハンドルなの知っていました? 生まれがアメリカゆえ、その名残として、左ハンドルなのだそうです。

 実用面でも、車体が小さいので、右ハンドルにした場合、アクセルの置き場所に困ってしまうとか。足もとのペダル系を車内に収めるには、左ハンドルにしたほうが、都合がいいそうです。別に気取って左ハンドルにしているわけではなかったのですね。

 乗用カートの2大メーカーは、ヤマハと日立です。見た目の違いは、ヤマハ製はフロントガラスがやや斜めで、お洒落に見えます。日立製は、垂直なフロントガラスで全体が四角い箱みたいな形をしています。まさに質実剛健。頑丈さでは、日立かな。

 さて、この乗用カート、個人的には偉大な発明だと思っています。日本のゴルフ業界をどう変えたのか。最初にその恩恵、プラス面を見てみましょう。

◆乗用カートの恩恵
(1)山岳コースが面白い戦略コースに変貌
 昔は、山岳コースと聞いただけで、そのゴルフ場は敬遠されたものです。今から30年くらい前はカートなんて珍しく、歩きのプレーが多かったですからね。登りはほんときつかった。だから、山のコースへ行く前には、必ず「乗用カートあるの?」と聞くのが"お約束"でしたもの。

 結果、乗用カートのない山岳コースは敬遠されて、人気がありませんでした。それが、乗用カートの導入によって、風向きがガラッと変わるのです。「なかなか面白いコースだよね。打ち下ろしが爽快で、すごく飛んだ気がする」とか、好評を得るようになりました。

 乗用カートを使えば、登りもなんのその。コース間の移動も楽チンです。しかも、山岳コースはもともと不人気だったので、料金が安い。いいことずくめとなったのです。

(2)フル装備なら、まるで『ドラえもん』のポケット
 最新の乗用カートは、ナビゲーションシステムがついていますから、コースのレイアウトや、残り距離などもまるわかり。そのうえ、スコアを打ち込めるのもあって、スコアカードも入りません。

 そうした機能があると、仲間うちで複数の組に分かれてプレーしたときは、グループ内の順位表が表示されます。「前の組、バーディーかよぉ〜」とか、「オレ今、トップじゃん」とか言ったりして、あたかも自分がトーナメントに出場しているような気分に浸れます。これは、結構楽しいです。

(3)乗用カートは「車」であり「家」なのかも
 屋根付きのカートなら、夏の暑い日は助かりますし、もちろん雨の日も、寒い日も、1年を通して快適にプレーができます。サイドのビニールを下ろせば、室内感覚を味わえて、風や雨をしのげます。寒い日は、本当に助かります。

 加えて、車ですから、余計なものをいっぱい積めます。カッパからおやつ、カメラや望遠鏡、日焼け止めや水筒、ドリンク類など、とにかくいろいろなものが積み込めて重宝します。おにぎりを食べながら電話もできるし、横になってくつろぐこともできる。これはもはや、車を通り越して、小さな"家"なのかもしれません。それぐらい便利です。

 とまあ、「乗用カート、万歳!」と言いたいところですが、乗用カートの使用でさまざまな弊害が起きていることも事実です。続いて、マイナス面を紹介しましょう。

◆乗用カートのマイナス要素
(1)案外事故が多い
 ハワイじゃあ、某芸能事務所の社長さんが、カートの運転ミスで亡くなりました。実はガソリン車の運転では、日本でも崖に落ちたり、池に落ちたりといった事故が頻発しています。

 山岳コースにカートを導入したのはいいけど、そうしたゴルフ場ではコース間のインターバルが長いため、たいがい電磁誘導式ではなく、自分で運転する場合が多いです。ゆえに、事故も起きるんですね。

 特に下り斜面のカーブとか、車と同じ感覚で運転してはダメです。シートベルトがないですから、外に放り出されます。

(2)運動不足になる
 ゴルフは基本、スポーツです。でも、カートに乗れば、タバコも吸えるし、お酒まで飲めるって、そんなスポーツ聞いたことないですね。

 やはり、カートに乗ってのプレーは運動量がかなり減ります。せめて平らなコースぐらいは歩くとか、工夫をしましょう。

(3)クラブ競技に支障
 クラブ競技のゴルフって、基本は歩きです。かつて私が会員だった鶴舞カントリー倶楽部でも、競技会などでは乗用カートは使用しても、プレーの間は乗ってはいけませんでした。

 ティーグラウンドの前の、止まっているカートにはベンチ扱いで座れます。けど、動いているカートには乗れないわけです。これは、昔の電動手引きカートが続々と引退し、乗用カートのみになってきたので、こうなったのです。

 ただ、最近のクラブ競技では、ついカートに乗ってしまった人を失格にするのも大人気ないので、乗車は個人の裁量に任せるコースも増えてきています。

 何はともあれ、英国人からは最低の評価を受けている乗用カートですが、今や日米では非常に愛されています。今後も末永くお付き合いしたいものですね。

木村和久(きむら・かずひさ)
1959年6月19日生まれ。宮城県出身。株式をはじめ、恋愛や遊びなど、トレンドを読み解くコラムニストとして活躍。ゴルフ歴も長く、『週刊パーゴルフ』『月刊ゴルフダイジェスト』などの専門誌で連載を持つ。

木村和久●文 text by Kimura Kazuhisa