「この記事を読んだ方は映画館に来る義務がありますよ」と笑う新海誠監督

写真拡大

すでにアニメ業界にはその名を轟かせている新海誠(しんかい・まこと)監督の最新作『君の名は。』が8月26日から全国公開中だ。

真骨頂である、圧倒的な映像美と繊細な心理描写はそのままに、さまざまな伏線を張り巡らせた壮大なストーリーの本作は、まさにエンターテインメントど真ん中! 知る人ぞ知る存在から、超有名監督の仲間入りを果たすのか? 

前編『僕はいつも思春期の人たちに向けて映画をつくっている』に続き、新海誠監督に話を聞いた。

* * *

―これまでの新海作品の登場人物はやや浮世離れしている印象でしたけど、本作ではしっかりした“キャラ”を意識して制作されたのですか?

新海 登場人物に顔がない物語様式が一方にあるとして、今回ははっきりと、最初からいわゆる“キャラクターアニメーション”にしようと考えていました。今までは自分の力も足りていなかったんですけど、(テレビアニメ『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』などでキャラクターデザインを担当した)田中将賀(まさよし)さんと一緒に仕事ができたのもあり、キャラの個性を立たせた作品にできた。

―主人公の瀧(たき)と三葉(みつは)のいがみ合いもコミカルでした。

新海 それに関しては、『らんま1/2』の影響が大きいと思います。

―おー! 懐かしいです。

新海 乱馬(らんま)とあかねはどう見ても好き合ってるのにいがみ合ってしまう、こういう関係性はいいなあと、どこかで思っていたんでしょう。

―そもそも監督のアニメ原体験は?

新海 『天空の城ラピュタ』が初めて自主的に映画館に行った映画なので、原体験としては宮崎駿作品ですね。僕の作品に具体的な影響を与えているとしたら、背景のカラーリングでしょうか。鮮やかな空といい、白い雲といい、景色がこんなにもカッコよくて面白いものなんだと教えてもらったのは、ジブリのような気がします。

―じゃあ、しつこいですけど、後継者的扱いをされるのはやっぱりうれしいのでは?

新海 もちろん、うれしいですけど……それはもうはっきりと過大評価ですよ(苦笑)。僕の映画はどこまでも思春期の人に向けた作品。それに比べて宮崎作品は家族、思春期、老人、少年少女……と、ありとあらゆる要素が入っている。あのバランスで映画にできる人はほかにいないし、この先も出てこない。宮崎さんは唯一無二で決して届かない存在です。

―では、細田守監督の存在は意識しますか?

新海 実は『君の名は。』と『バケモノの子』は制作期間がかぶっている時期があり、僕の所属するアニメ制作会社でも一部仕事をお受けしていたので、仕事場に『バケモノの子』の絵コンテが置いてあったりして、それを見たときに「細田さんがまたスゴイものをつくってる!」とショックを受けました。

―それが“燃料”になった?

新海 上がるリングは一緒なのだから僕も頑張らないと、とは思いました。ただ、ライバルみたいな気持ちはまったくありませんよ。宮崎さんとほとんど近いフィールドに立っている国民作家とも呼べる偉大な人ですから。

―でも、週プレ的には、本作で新海監督の知名度も飛躍的にアップすると見ています。

新海 そうなればいいですね(笑)。ちなみに、週プレ読者の方にしても、僕のことを知らない人がほとんどだと思いますけど、もしかしたら僕の作品との親和性がものすごく高いんじゃないかと勝手に思っています。こじらせているところとか(笑)。

本作は、異性とのドキドキの距離感だったり、女のコと入れ替わっておっぱいを触ってしまったり、男なら共感できる要素もたくさん詰まっていますし、アニメーションとしての新しさを感じられる作品です。うん、ある意味、『君の名は。』は週プレ読者のためにつくった映画とも言えますね。この記事を読んだ方は映画館に来る義務がありますよ(笑)。

―なるほど(笑)。読者よ、映画館へ走れ!

●新海誠(しんかい・まこと)

1973年生まれ、長野県出身。2002年、ほぼすべてをひとりで制作した『ほしのこえ』で注目を集める。その後、発表した『秒速5センチメートル』(07年)、『言の葉の庭』(13年)なども好評を博す

■『君の名は。』全国東宝系公開中!

原作・脚本・監督:新海誠

作画監督:安藤雅司 キャラクターデザイン:田中将賀 音楽:RADWIMPS 声の出演:神木隆之介 上白石萌音 成田凌 悠木碧 島信長 石川界人 谷花音 長澤まさみ 市原悦子 制作:コミックス・ウェーブ・フィルム 配給:東宝

1000年ぶりとなる彗星の来訪を1ヵ月後に控えた日本。山深い田舎町に暮らす女子高校生・三葉と、東京で暮らす男子高校生・瀧は、自分たちの中身が時々入れ替わっていることに気づく。ふたりは、入れ替わった日はお互いメモを残すように取り決め、徐々に打ち解けていく。しかしある日突然、入れ替わりは終わった。そして瀧は居場所も知らない三葉を探しに出かけ、驚愕の真実を知る。豪華キャストの熱演はもちろん、RADWIMPSが担当した音楽にも注目だ

(取材・文/武松佑季[A4studio] 撮影/高橋定敬)