遺伝子組み換えの話題になれば、その対象が食であろうと生物であろうと、様々な議論を呼び起こします。そのなかでも注目されているのが「CRISPR-Cas9」というツール。遺伝子の編集が簡単に安くできるようになりました。これを応用すれば、ウイルスや遺伝による疾患を除去できるかもしれません。

しかし、リスクが高いのも事実。では、技術が進歩したらどんな可能性が考えられるのか。飛躍したアイデアも含めてその歴史を見てみましょう。

遺伝子組み換えは、
多くの命を救った!

2016年8月28日、東京大学が遺伝子組み換えによってがん細胞を破壊するウイルスを開発しました。正常な細胞は傷つけないと言われており、2年以内の臨床試験が始まるとも。あまり身近ではないように思えますが、こういった医療への実用例はすでにあります。

「Kurzgesagt - In a Nutshell」の動画によれば、植物に放射線を当てて検証する実験から始まり、遺伝子を混ぜる組み換え技術が進歩。様々な生物や化学物質が生み出されていきました。

1974年には、MITの生物学者ルドルフ・イエーニッシュが遺伝子組み換えによってマウスを作製。治療法の開発に役立てられ、多くの命が救われています。

植物→動物→食品→人間。

90年代になると、食品に応用開始。長持ちする野菜が登場。この時に使用されたのは、“腐敗しない遺伝子”だとか。

それから、筋肉質な豚、成長の早いサケ、毛のないニワトリ、光る熱帯魚などが生み出されています。

遺伝子を編集され、
生まれてくる子どもたち。

不妊治療の一環として、3人の親を持つ子どもを生む方法が誕生しました。母親の遺伝物質を代理母に移植して出産、生まれた子どもは3人の遺伝子を受け継ぎます。

これには、疾患の継承リスクを減らす目的がありますが、一方では皮膚や眼の色、体格、知性をカスタマイズできる「デザイナーベイビー」を認めることに繋がるとも言われており、物議を醸しています。

ウイルスを改造して、
悪性腫瘍だけを殺す。

2015年、HIVウイルスに感染したマウスに「CRISPR-Cas9」を使用し、50%のウイルスを除去することに成功。

「ネイチャー」に掲載されているデューク大学の生物学者、ブライアン・カレン氏は「まだまだ絵に描いた餅だ」とコメントしていましたが、さらに進歩は加速していくと言われていました。東京大学のウイルス開発は、まさにこの遺伝子組み換え技術を用いた好例でしょう。

また、米国や中国で臨床試験が認可され、肺がん患者でテストを行うというニュースもあります。ゆくゆくは、遺伝的な疾患を誰でも治療できるようにもなるかもしれません。

人類が人工的に進化する。

懸念点は多々ありますが、胚を編集する技術もすでに存在しており、過去に2度実験が行われたそうです。しかし、遺伝子を編集した結果、どんな影響が起こりうるのかは未知数。

その遺伝子情報が子孫にも伝わり、拡大していく影響を考えると“進化の歴史に人為的な変化をもたらしてしまう”とも言われています。特定の能力を強化するような都合のいい編集はできないとの指摘もあり、反対意見が多いのです。

倫理問題の解決は時間の問題?

動画ではこんな見解が示されています。遺伝病を除去するような小さな変化から始まり、赤ちゃんが健康的に産まれてこれるようにと利用されれば、そうしないことのほうが非倫理的に捉えられるようになるーー。

そうして、宇宙で生きられたり、不老長寿を手にするような人間が現れるなんてことまで。技術進歩の速さを考えるとあり得るということなのでしょう。

地球外知的生命体探査(SETI)のディレクターである天文学者のセス・ショスタク氏は、1月の「デイリー・メール」にこうコメント。

「狼から犬が生まれたように、人間から新たな生物が生まれるでしょう。人工知能や義肢によってサイボーグ化も進み、デザイナーズベイビーが増え、スペースコロニーでこれまでにない進化を遂げた人類が生活していてもおかしくありません」。

近年の人工知能や義肢の進歩、そして遺伝子組み換えによるウイルス開発ニュース。見たことのないような人間が生まれるとしても、あながちSF的な発想とも言い切れませんよね。

courtesy of kurzgesagt.org
Reference:Kurzgesagt - In a Nutshell,Nature,Daily Mail