本田や香川に依存する傾向にあった日本だが、彼らを追い越すような選手が求められる。タイ戦では原口(8番)、浅野(18番)が結果を出して存在感を見せた。(C) SOCCER DIGEST

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 ロシアワールドカップのアジア最終予選、第2戦のタイ戦。負けられないというプレッシャーを感じながらも、日本は確実に勝点3を手に入れたね。
 
 UAE戦ではシュート25本で1点、タイ戦ではシュート23本で2点と、なかなか思い通りにゴールを奪うことができていないけれど、原口、浅野という最終予選初スタメンとなった選手が揃ってゴールを奪ったのは嬉しい結果だった。なにより抜擢したハリルホジッチ監督は勝点3に加えて、自らの采配が的中したことに、ホッとしたのではないかな。
 
 チーム全体のパフォーマンスに関しては、残念ながら特筆すべきところは少なかった。それでも、失点ゼロに抑えた守備力は評価すべきだろう。あわやという場面を作られたのはいただけなかったけれど、いくらタイが格下とはいえ、アウェーでのタイの攻撃をシャットアウトしたんだから、合格点を与えていい。
 
 攻撃に関しては、ゴール前の精度をもっと高める必要があるけれど、縦へのスピードが上がってきたのは好材料だろう。ゴールだけでなく推進力を生み出していた原口、浅野の起用は“効果的”だった。本田、香川がノーゴールに終わったものの、いつまでも彼らに頼っているチームであってはいけないし、これまでずっと彼らに助けられてきたのだから、こうしてほかの選手が活躍してチームが勝つという試合があってもいいんじゃないかな。
 
 もちろん欲を言えば、得点力を高めるための工夫を見せてほしかった。スピード感のある展開で攻め続けていたけれど、“変化”という点でもう少しアイデアを出せたはずだ。前回のコラムでも触れたけれど、苦しい状況の時こそセットプレーを生かすべき。UAE戦では清武のセットプレーからゴールが生まれたけれど、今回のタイ戦ではセットプレーからネットを揺らすシーンは見られなかった。ここはゴールを決まるんじゃないか?という空気も生まれなかったと感じていた。
 
 何度も言うようだけど、最終予選というのはそう簡単には勝たせてくれない。タイ戦でもこうして簡単にはゴールを奪えないのだから、イラク、サウジアラビア、オーストラリアにはもっと苦戦を強いられると考えたほういいだろう。アウェーの試合は思い通りにいかないということが、今回のタイ戦で改めて証明された。それもその予兆だと捉えるべきだろうね。
 
 選手たちも口にしているように、最終予選は内容よりも結果だ。言い換えれば、これからも勝点3を奪うための作業を淡々と繰り返していくことが、最終予選の戦いには求められるということなんだ。
 
 シビアな戦いが続く最終予選を勝ち抜くためにも、苦しい状況を打開できるセットプレーを大きな武器にすべきだろうし、勝点3を奪うための可能性をもっと模索する必要がある。
 
 ライバル国に目を向けると、日本と同グループでは、オーストラリア、サウジアラビアが2連勝しているけれど、彼らにしても決して順調に勝点3を手にしているわけではない。オーストラリアはケイヒルがスーパーサブとして活躍していなければ2連勝はしていないだろうし、サウジアラビアにしても2試合連続で終盤にPKを奪って接戦をモノにしている。セットプレーの得点力を高めるうえでも、オーストラリアにおけるケイヒルのような、試合の流れを変えてくれる“攻撃の切り札”は絶対に必要だ。
 
 今の日本で言うと、浅野、原口、宇佐美、武藤、小林、原口がその候補になるのだろうけれど、個人的には、ハーフナーもそのひとりとして推したい。スピードとテクニックを重視したハリルホジッチ監督のこれまでの起用傾向を考えると、“運動量の少ない”タイプのハーフナーは指揮官の方向性に当てはまらないのかもしれないが、他のFWとはスタイルが異なるハーフナーの存在は、ひとつのオプションになりえる。
 
 実際、昨季はオランダのエールディビジで16ゴールをマークし、今季も好調で、かつて浦和レッズを指揮していたペトロビッチ監督のもと、デン・ハーグの不動のストライカーとして活躍している。4試合を終えて3ゴールと、順調にゴールを奪っている。ヘディングだけでなく、エリア内でのシュートテクニックは目を見張るものがある。
 
 スタイルの違いこそあれ、ゴールを決めている選手が呼ばれるのは代表チームであるべきだ。なにより“結果”が求められる最終予選だからこそ、“結果”を出しているハーフナーを呼んでもいいと思っているのは、僕だけではないはずだよ。
 
 アジア最終予選はまだ2試合が終わったにすぎないが、とにかくこれからも日本には、したたかに勝点3を奪うための戦いを見せてほしいね。