『老活弁護士(R)が教えます! わかりやすい遺言書の書き方』(大竹夏夫著、週刊住宅新聞社)の著者は、自称「老活弁護士」。

「老活」とは、「老後に備える準備活動」のこと。数年前に流行語となった「終活」とも似ていますが、終活は死んだ後のことが中心。対して老活は、自分が死ぬ前のことに焦点を当てているわけです。

死んだ後よりも老後のほうが大変だからこそ老活は欠かせず、なかでもとても重要なのが「遺言書の作成」だというのです。

そんな考え方は、著者が弁護士として多くの相続トラブルや訴訟に関わってきたからこそ到達したもの。つまり遺言書がないと、相続争いが起きやすくなってしまうのです。

遺言書で「誰がなにを相続するのか」が示されていなかった場合、亡くなった方の財産(遺産)は、法律であらかじめ定められている相続人に対し、法律で定められている割合で引き継がれるそうです。

この、法律で定められている相続人が「法定相続人」で、法律で定められている割合は「法定相続分」。

■1:妻・夫と子どもがいる場合

亡くなった人の妻または夫(配偶者)と子どもがいる場合、妻・夫と子どもがいる場合は、妻・夫と子どもの全員が相続人。

この場合の相続分は、妻・夫が2分の1、子どもが2分の1。ちなみに子どもが2人いる場合は、子どもの相続分2分の1を2人で均等に分けるのだとか。

つまり、子どもは4分の1ずつになるということ。

同じように子どもが3人いる場合は6分の1ずつ(2分の1を3等分)、4人いる場合は8分の1ずつ(2分の1を4等分)になるわけです。

逆にいえば、子どもが何人いても妻・夫の相続分は2分の1なのだそうです。

■2:子どもが親より先に亡くなっている場合

相続人になれるのは生きている人だけで、亡くなった親よりも先に亡くなっている子どもは相続人にはなれません。

ただし、その子どもの子ども(亡くなった親から見ると孫)がいたら、相続人になるのはその孫。これは「代襲相続」と呼ばれています。

その孫の相続分の割合は、亡くなっている子ども(孫から見れば親)の相続分をそのまま引き継ぐのだそうです。孫が2人以上いる場合は、その相続分を均等に分けるわけです。

同じく、その孫が先に亡くなっている場合で、その孫に子ども(亡くなった方のひ孫)がいたら、そのひ孫が相続人になり、孫の相続分をそのまま引き継ぐことに。

■3:妻・夫と親がいる場合

亡くなった方に、妻または夫がいるけれど子どもがいない場合、亡くなった方の親が生きていれば、相続人になるのはその親。

この場合の相続分は、妻・夫が3分の2、親が3分の1。子どもがいるときよりも、妻・夫の割合が増えるわけです。

父と母の2人とも生きていれば、子どものときと同じように、親の3分の1を2人で分けることになります。

■4:妻・夫と兄弟姉妹の場合

亡くなった方に、妻または夫がいるけれど、子どもがいなくて両親も他界している場合、相続人になるのは妻や夫。しかしこの場合は、亡くなった方の兄弟姉妹も相続人になるのだそうです。

この場合の相続分は、妻・夫が4分の3、兄弟姉妹が4分の1。兄弟姉妹が2人以上いるときは、この4分の1を均等に分けるわけです。例えば兄と妹がいる場合は2人ですから、8分の1ずつになるということ。

ほとんどの財産が夫名義になっていたご夫婦の夫が亡くなったとき、そのことを知らなかった妻が路頭に迷ってしまうというケースも少なくないのだとか。

■5:甥・姪の場合

亡くなった方が高齢のケースでは、兄弟姉妹が先に亡くなっていることも少なくないといいます。

兄弟姉妹が先に亡くなっている場合、相続人になるのはその子ども。亡くなった方から見れば、甥・姪だということで、これも「代襲相続」。

先に亡くなった兄弟姉妹に子どもがいなければ、その兄弟姉妹はいなかったものと考え、残りの兄弟姉妹で4分の1を分けるそうです。

■6:子どもだけの場合

妻・夫に先立たれていて、子どもがいる場合、相続人になるのはその子どものみ。

子どもが1人のときは、その子どもがすべてを相続。子どもが2人以上いる場合は、均等に分けることに。

子どもが2人の場合は2分の1ずつ、子どもが3人いる場合は3分の1ずつ、4人いる場合は4分の1ずつになります。

■7:親だけの場合

亡くなった人に妻・夫がいない場合(もともと結婚していない、結婚したことはあるが離婚していた、妻・夫が先に亡くなっている場合)で、子どもも孫もいないとき、相続人になるのはその人の両親だけ。

両親とも健在であれば、父と母が2分の1ずつ相続。どちらかが先に亡くなっている場合、相続人は1人だけになり、すべてを相続するそうです。

■8:兄弟姉妹だけの場合

亡くなった人に妻・夫も、子どもも孫もいなくて、両親も先に亡くなっている場合、相続人は兄弟姉妹だけ。兄弟姉妹が1人なら、その人がすべてを相続。2人以上いるときは、均等に分けるわけです。

■9:相続人がいない場合

亡くなった人に妻・夫も、子どもも孫もひ孫も、両親も兄弟姉妹も甥・姪もいない場合、相続人はいないことになります。

この場合、亡くなった人の遺産は国庫(政府)に取られてしまうそうです。遺産のすべてが財務省に引き継がれるわけですが、政府はそもそも、相続人のいない相続財産の存在を知りません。

そこで、このような場合は相続人にならない親族(叔父・叔母・いとこ)などが家庭裁判所に申請し、相続財産管理人を選んでもらうのだそうです。その管理人が名義変更等の手続きや、未払いの料金等の支払いをし、残ったら国に納めるわけです。

法律が絡む書籍には、難解にならざるを得ない部分があります。が、本書はかなりできる限り読みやすくしてあるので、抵抗なく読み進めることができるはず。

将来のために、ぜひ目を通しておくべきだと思います。

(文/作家、書評家・印南敦史)

 

【参考】

※大竹夏夫(2016)『老活弁護士(R)が教えます! わかりやすい遺言書の書き方』週刊住宅新聞社