「微笑みの国」で殊勲のビッグセーブ “笑顔の守護神”西川、原点回帰で日本を救う

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 誰もが「危ない!」と思った瞬間、飛び出しかけた守護神はペナルティーエリア内で一瞬立ち止まると、相手の決定的なシュートを顔面でブロック。絶体絶命のピンチを防ぐ、まさに殊勲のビッグセーブだった

 9月6日、アウェーで行われたタイ代表との2018 FIFAワールドカップ ロシア アジア最終予選の第2戦。UAE(アラブ首長国連邦)代表との初戦を落として勝利が厳命されたゲームで日本代表を救ったのは、GK西川周作(浦和レッズ)の冷静沈着な一瞬の判断だった。

 71分、チャナティップ・ソンクラシンのパスを受けたティーラシン・デーンダーが鋭く抜け出し、日本ゴールへ迫る。ここで前へ出た西川が、シュートモーションに入ったティーラシルの手前でグッとこらえてストップ。そして自身の正面から放たれたシュートをしっかりと止めたのだ。

「基本的なことを大事にした結果だと思います。飛び込みやすい間合いでしたけど、とにかく自分が飛び込めるのかどうかを判断して、とにかく我慢して動かないことだけを意識しました。先に動いて体勢を崩していたらそのままゴールに入れられていたと思う。あの状況でもしっかりとステイして基本的なことを全うできました」

 このシーンの背景には、痛恨の2失点を喫した初戦の反省があった。1−1で迎えたUAE戦の開始20分、西川は相手のエース、アハメド・ハリルに直接FKを決められている。この時、彼は相手が蹴るよりも早く重心が右へ動いたスキを突かれ、ボールに触りながらゴールネットを揺らされてしまった。その悔恨が彼を原点回帰させる。

「直接FKの場面で先に動くことはJリーグではそんなにない。そこで自分の基本的なプレーが一番大事であることを感じた」

 この経験を生かした西川は、ティーラシルと対峙しても先には動かず、しっかりと相手の動きを見ることに集中。体勢を崩さずに正面から向かい合ったことでビッグセーブが生まれた。

 4万4500人の大観衆が足を運んだタイとのアウェーゲーム。MF原口元気(ヘルタ・ベルリン/ドイツ)のゴールで先制しながら、追加点が奪えないまま終盤に入ったタイミングでの大ピンチ。もしもあのシーンでゴールを割られていたら、同点に追いついたホームチームが勢いに乗り、試合はどう展開していたか分からない。勝利が必要不可欠とされた日本代表に数日前の悪夢がよぎり、大きなプレッシャーを背負ってしまった可能性も十分にある。西川のファインセーブがようやく回復の傾向を見せたチームのメンタルをも救ったと言っていいだろう。

 この日、日本代表は22本のシュートを放ちながらも2ゴール。圧倒的にボールを保持して攻め込みながら決定力を欠いた展開に、FW本田圭佑(ミラン)は「攻撃陣は反省するところが多い」と話しつつ、「守備陣は(ビッグセーブで防いだ)1本以外は完璧。実際、失点していないし、守備陣をしっかり評価したい」と西川を中心とした守備陣を称えた。

 試合終了のホイッスルが鳴った瞬間、守護神は両腕を高く上げ、ガッツポーズのままでセンターサークルへと歩み寄り、無失点で封じ切ったDF吉田麻也(サウサンプトン)、そしてDF森重真人(FC東京)と力強く抱き合い、そのままピッチの選手一人ひとりを出迎えた。ようやく持ち前の笑顔が弾けた。

 UAE戦で衝撃の敗戦を喫した翌日、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督はチームを挙げて巻き返しを誓うために「また次の日から切り替えてやろう」と話し、リカバリートレーニング時に“笑顔禁止令”を出した。常に笑顔でポジティブに考えるタイプの西川は、すでに切り替えて「次に向かっていくんだ」という気持ちでトレーニングしていた。しかし、笑顔を浮かべることができず、「キツかった」と振り返る。