ハリルJ、タイ代表に勝ちタイ!「アジアのバルサ」と呼ばれた彼らは今どうなっているのか

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先日行われたUAE代表との重要な試合を0-1で落としてしまったハリルジャパン。ホームでワールドカップ予選のスタートを切りながら、勝点を穫れずに90分を無駄にしてしまった。

本日迎える第2戦でも勝利をあげることが出来なければ、もはやロシアへ行ける可能性も高くはなくなってしまうだろう。ハリルジャパンにとっては早くも迎えた天皇山とも言える。

その相手となるのはタイ代表。2年前のスズキカップ(東南アジアサッカー選手権)では、高い攻撃力を見せてライバルを圧倒し、そのパスワークから「ティキ・タカである」とも評価されたのだ。

近年、タイ・プレミアリーグの成長は著しい。選手への報酬も多くなっており、国内での人気も高まっている。以前はほとんど結果を残せなかったAFCチャンピオンズリーグでも、ブリーラムやムアントン・ユナイテッドが存在感を放つ。

日本からも多くの選手がそこでのプレーを求めて海を渡る一方、オズマールなどの外国人選手はタイから韓国へとステップアップするなど、国際的にもその立場は向上しているといえよう。

タイでは伝統的に国外へ積極的に進出する選手が乏しく、代表も基本的にはこのリーグに存在している戦力で構成されている。

このところは欧州生まれの逆輸入選手も増えては来たが、まだ片手で数えられるほどしかおらず、特に彼らも絶対的な存在とは言えない。やはり、タイ・プレミアリーグの力がここに反映されていると見るほうがいいだろう。

サウジアラビア戦は日本でも一部地域で放送されたので、彼らの力はなんとなく図ることが出来ただろう。彼らの「現在」はどうなのか?

監督は「タイのジーコ」

現在のタイ代表を率いているのは、同国の英雄的ストライカーであるキャティサック・セナムアン氏。『ジーコ』の愛称を持っている小さなFWで、イングランドのハダーズフィールド・タウンにも所属した経験がある人物だ。

彼がタイ代表の監督に就任したのは2013年夏だ。ドイツ人のウィルフリード・シェーファーに代わって、U-23を率いていた彼がフル代表を緊急的に指揮することになった。

そして、最初の試合があの中国とのフレンドリーマッチだ。なんといきなり5-1という大勝を収め、世界に衝撃を与えたのである。

平行して率いていたU-23ではSEAゲームス(東南アジア競技大会)で金メダル、2014年アジア大会で4位に入賞。

そして前述の通りスズキカップでは優勝を果たし、セナムアンは選手としても監督としても東南アジア王者の座に輝いた最初の人物となったのだ。

メンバー構成について

タイ代表のメンバーは、セナムアンが就任したことによって大きく入れ替わった。日本で言うトルシエ時代のようなもので、U-23で使っていた選手が随分名を連ねるようになった。

まあ、今ではもうこのメンバーに慣れてしまっただろうが、2年前のスズキカップでそのメンバーを見た者は思ったはずだ。『ずいぶんと若いのに入れ替えてきたな…』と。正直に言って、筆者はこれで優勝できるとは思わなかった。

今になって思えば、アラサーの有名選手を数人外したのは「チャナティップ・ソンクラシン中心のチームにする」という意思表示だったのかもしれない。

「タイのメッシ」と言われる小柄なドリブラー、チャナティップはその期待に応えているといえる。縦関係の2トップの一角、あるいは3トップの一角として前線の要となり、仕掛けで相手DFを混乱させ、仲間にチャンスを与える役割を十分にこなしている。

スズキカップではそれらのテクニシャンが生かされた攻撃が機能し、高いレベルのサッカーで頂点に上り詰めたのだ。

このチームの攻撃の中心はチャナティップ+左サイドだ。それはティーラトン・ブンマタンだけではなく、チョンブリの若きレフティ、クルークリット・タウィーカーンの存在が大きい。

小柄ながら切れのあるボールタッチとクロスを持ち、そして周囲のチャナティップとティーラトンを生かしていく。

右はモンコル・トッサクライであろうがサラウート・マスクであろうがプラキット・ディープロムであろうが、あるいは守備的になってポックロー・アナンが回ろうが、日本にとってそこまで問題にはならないだろう。

しかしティーラトンとクルークリットで構成される左はこのチームの強みであり、止めなければならないポイントだ。今回も酒井宏樹の仕事は多そうである。

では弱みはどこ?

左サイドでのクルークリット+ティーラトン、そしてチャナティップによるチャンスメイク。ティーラシル・ダンダの得点。そしてセットプレーで良いキッカーがいる。これが「タイの強み」である。

では欠点というのは何なのか?それは「アジアのバルサ」と言われつつ、別に強い相手にそれができるわけではないということだ。

タイ・プレミアリーグのチームと戦ったJリーグのクラブのファンはよく知っているだろう。別に相手がティキ・タカだと思ったことは一度もないはずである。

スズキカップではあれだけの攻撃を見せて優勝はしたわけだが、シンガポール戦では簡単なクロスから失点しており、マレーシアには3試合で5失点を許している。

その時よりも守備は間違いなく向上はしている。試合を見ていてもそれは明らかだ。

当時は「ティキ・タカ」の重要な要素であるコンパクトさが全くと言っていいほど存在せず、目に見える上澄みだけを掬ったようなサッカーだった。

しかし先日のサウジアラビア戦でも見せたように、タイ・プレミアリーグでは引いて守れるチームも近年は多く、それをベースに耐えられる状態にはなっている。

ただ、それでもチームとして完成度が高いかといえばそうでもない。サウジアラビア戦で守れたのは、むしろ相手の攻撃に強みがなかったことのほうが大きい。

守ればそれほど攻められない。攻めればコンパクトさを失いやすい。このチームは同じようなメンバーで3年目を迎えるが、強豪を相手にした際に攻守両面を追っていけるだけのクオリティはまだ感じられない。

その点で言えば、日本がこの試合で必要とされるのは、やり抜くことだ。攻めきるのか。守り切るのか。近年ビジネスの世界でよく聞く単語、『Grit』であるといえば今風だろうか?

結果を残そうとして臆病になり、中途半端になるべきではない。タイにはセットプレーで日本から点を取れるだけのクオリティは充分ある。しかし、サウジアラビア戦の後半スタートでも見せたように、プレッシャーを受けながら余裕を持ってキープできるほどの技術があるわけでもない。膠着状態に持ち込まれると危ないだろう。

サウジアラビア戦終了後に抗議でレッドカードを受けたサラク・ユーイェンは出場停止だが、それに代わるのはシリル・シャピュイか、あるいはかつてガイナーレ鳥取でプレーしたアドゥル・ラフソになるようだ。

特別な戦術は必要ない。勇気さえ持って戦えば、アウェイでも日本にとって致命的な問題はないはずだ。

タイ代表対日本代表の試合は本日21:15キックオフ予定。テレビ朝日系では21:00から、NHK-BS1では20:55から放送される。