共感力あふれるマツコ・デラックス(2015年9月撮影)

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テレビで芸能人がイジられ笑われたり、ドラマの主人公が恥をかかされたりするシーンになると、気の毒になり、いたたまれたくなる――。そんな感情に心理学の名前があった!「共感性羞恥」というのだそうだ。

2016年8月24日に放送された「マツコ&有吉の怒り新党」(テレビ朝日系)の中でこの感情が取り上げられ、インターネット上で話題になっている。

「マツコ&有吉の怒り新党」で話題の「共感性羞恥」とは

この言葉が紹介されたのは、視聴者からの次のような「お怒りメール」がきっかけだ。

「バラエティー番組でドッキリをかけられるシーンや、ドラマなどで『この後、この人は確実に恥をかくだろうな』というシーンを見るのがとにかくイヤです。かわいそうで見ていられません。しかし、一緒に見ている母に言っても理解してもらえません。この気持ちわかりますか?」

MCの有吉弘行が「わかる?」と聞くと、MCのマツコ・デラックスがうなずく。

有吉「どういうこったよ、なにそれ?」(と不思議そうに)
マツコ「すっごい、わかる。あたし、ドキュメンタリーもそうなの。ほんとに辛いところとか、飛ばさないと見られないの」
有吉「あぁ、そうなの」(と呆れたように)
マツコ「もっと、みんな同じ思いをしていると思っていた」

ここで青山愛アナが「実はこれには名前があるのです」と説明した。

マツコ「えっ? 病気なの?」
青山アナ「病気ではないんです。心理現象です」

ゲストの臨床心理士・内田智章さんによると「共感性羞恥」と呼ばれるもので、こう説明した。

「ドラマなどで、登場人物が恥をかいたりする場面を見ると、その出来事が自分に起こっているかのように共感してしまい、見ていられなくなる心理現象をいいます。自分がミスをした時に恥ずかしく感じる脳の同じ部位が働き、あたかも自分の失敗のように感じるのです」

10人に1人が「芸能人のスベリ」を見ていられない

例として、学園ドラマで授業中に居眠りをして先生に呼ばれ、寝ぼけて変なことを言ったり、ドラマ「裸の大将」の主人公が失敗を繰り返したりするシーンを微笑ましく見ることができないケースをあげた。番組で500人にアンケートを行ない、「こうした経験があるかどうか」を聞くと、「経験あり」が10.4%、「経験なし」が89.6%だった。10人に1人の割合でいるわけだ。

ちなみに番組では触れなかったが、「共感性羞恥」(共感的羞恥とも言う)は「empathic(感情移入できる)embarrassment(きまり悪さ)」の直訳だ。2011年4月、米科学誌「プロスワン」に英のベルファスト大学とクイーンズ大学の合同チームが「あなたの傷は私の痛み」と題する研究論文を発表している。

研究チームは、619人の男女に、ズボンの後ろポケットからトイレットペーパーがはみ出たまま繁華街を歩く、演説の最中に台から滑り落ち泥の中に顔を突っ込む、などの恥ずかしい映像を見せ、「面白いと思うか」「気の毒に思うか」と感想を聞いた。そして、いたたまれなくなるほど恥ずかしくなる感情が強い人たちを選び、改めて別の恥ずかしいシーンの映像を見せ、核磁気共鳴画像法(MRI)で脳の働きを調べた。

すると、恥ずかしい目にあった人への共感が強い人ほど脳の情感をつかさどる部分が活性化した。この部分は自分が失敗した時にも強く反応する部分だ。たとえ、フィクションの映像とはいえ、共感のあまり、堪えられないほど心の痛みを感じてしまうタイプの人がいることを確認し、この感情を「empathic embarrassment」(共感性羞恥)と名付けた。

「寅さんや釣りバカも素直に笑えません」

「マツコ&有吉の怒り新党」で「共感性羞恥」という言葉が放送された直後から、ツイッターなどでは、「私が今まで漠然と感じていた気持ちはこれだったのか!」という投稿が拡散している。

「小学生の時、ちびまる子ちゃん見ているなか、まる子が恥をかくシーンが近づくと『うわああああ』と走って逃げだしていた、あれって共感性羞恥が原因やったんやね。悪質なドッキリを見てられへんのもそういうことなんよね」
「テレビで『この人スベりそうだな』と思うと、こっちまで緊張しちゃう。ついチャンネル変えると、親に『何やってるの!』と怒られる」
「居酒屋で隣の男女が全然盛り上がっていないのを見ると、こっちまでダメージを受ける」
「『名探偵コナン』で、小五郎のおっちゃんが間違った推理を得意げに披露している時は、『頼むから、もうやめて!』と目をつむっちゃう。映画館で周りの子どもたちがその映像を見て笑っているのを見て、ボクはマイノリティーだと思っていた」
「映画も寅さんとか、釣りバカとか、素直に笑っていられません。ミスター・ビーンなんて、顔を見ただけで、うわ〜〜となってしまいます」

そして、こんな声がとても多かった。

「自分のこの感覚に名前がついたことには驚きました。と同時に、10人に1人という数字がもっとショックです。うちの夫も他人が困っているシーンを見るとゲラゲラ笑っていますが、意地悪な人がそんなに多いんでしょうか」