『あそびあそばせ』(涼川りん/白泉社)

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 マンガ市場において、コアな人気を誇るジャンルがある。「日常系」と呼ばれるそれは、登場人物たちの日常生活を淡々と描き、深刻、困難、悲劇といったドラマ的要素を排し、ただひたすらに僕らの延長線上にある毎日を描写しているのだ。

 そして、いま、そのジャンルで大ブレイクしているマンガがある。それが『あそびあそばせ』(涼川りん/白泉社)である。本作は無料Webコミック「ヤングアニマルDensi」にて連載中の作品で、「第2回 次にくるマンガ大賞」にもノミネートされ、単行本化される前から話題を集めていた。いざ単行本が出版されると、読者のツイートによりそのおもしろさが広まり、たちまち重版出来がかかったうえに、Webの再生数は累計200万PVを突破するというブレイクぶり。まさに、マンガ好きにとって見過ごせない人気作のひとつなのだ。

 本作の主要人物となるのは、3人の女子高生。親は外国人だが日本生まれの日本育ち、試験では国語90点、英語20点という中身は日本人であるオリヴィア。放課後の教室でひとり読書に耽るようなメガネっ娘なのに、英語は2点という香純。イケてる男子たちと交流するようなリア充に憧れている、華子。この3人は、何の因果か「遊び人研究会」なる部活めいたものを結成することになり、「あっちむいてホイ」「いっせーのーせ」「手押し相撲」といった他愛もない遊びに没頭する。活動内容を見るにつけ、「遊び研究会」が正しい名称のような気がするが、そこは華子のリア充に対する憧れが抑えきれないようなので仕方がない。

 こうして結成された謎の部活、「遊び人研究会」。しかし、個性的な彼女たちがおとなしくしているわけがない。正しいやり方を踏襲すれば何も問題など発生しないのに、毎回毎回彼女たちはトラブルを巻き起こす。教室でのお漏らし騒動、リア充グループであるソフトテニス部との一騎打ち、脇のニオイを嗅ぐという罰ゲームをかけた勝負……。どれも果てしなくくだらなくて、めちゃめちゃおもしろいのだ!

 そして、本作が笑えるのは、その画力によるところも大きい。涼川さんが描く少女たちは、みなかわいいのだが、ギャグ展開になると劇画調になったり線と点だけの簡素なものになったりと、多種多様な表情を見せる。特に表情の変化が激しいのは、華子。(主にリア充女子に対する)嫉妬が強い彼女は、何かにつけコロコロと表情を変え、読者を爆笑の渦へと引き込む。

 8月29日(月)に発売された第2巻では、尻からビームを発射するという、華子の側近も登場する。もはや、何のマンガなのかわからないキャラクター設定だが、有無を言わさぬ勢いで読者を納得させ、ギャグ展開へともっていく手腕は「お見事」の一言だ。さらに2巻では、香純のBL好きが明らかになったり、オリヴィアのワキガネタが再燃したりと、お腹いっぱいなくらいにキャラ設定がなされる。読み終わる頃には、腹筋が鍛えられていること間違いなしだろう。

 美少女たちが他愛もない遊びに耽る様子を描いた本作。ただそれだけなのに、どうしてこんなにおもしろいのか。「深く考えずに、ただ笑いたい」という人にはうってつけのマンガが登場したと言えるだろう。

文=五十嵐 大