『ビーカーくんとそのなかまたち:この形にはワケがある! ゆかいな実験器具図鑑』(うえたに夫婦/誠文堂新光社)

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 ある漫画に、ビーカーで沸かしたお湯でカップラーメンを食べたりフラスコにジュースを入れて飲んだりしている描写があり、理系とは縁のない私は密かに憧れていた。その一方、漫画としてのギャグだろうとも思っていたのだが、『ビーカーくんとそのなかまたち:この形にはワケがある! ゆかいな実験器具図鑑』(うえたに夫婦/誠文堂新光社)を読んでみたら、実際に研究室の飲み会でやっていることだと分かり、なんだか嬉しくなった。とはいえ一度でも実験に使用した器具は、日常生活で使うには適さず、おろしたての物に限られるらしい。さもありなん。

 本書では、ビーカーの仲間たる実験器具たちを擬人化して解説している。擬人化というものには大きく分けて二種類あり、一つは完全に人の姿をしていて関連する物を意匠化した衣装などを身に着けているもの、もう一つはモデルとなる物そのものに目鼻や口を簡易に付けたものだ。本書では後者の手法をとっており、「ビーカーくん」の仲間である「フラスコくん」や「遠心分離機くん」に「ろうとちゃん」などが、チャート表付きでキャラクター紹介されている。何のチャート表かといえば、「価格」「壊れやすさ」「洗いにくさ」などで、中には「ろうと台くん」のように「使ってない時の置き場に困る度」という器具独自の項目の目盛が振り切れていることも。知ったところで何の役にも立たないのに、知ると面白く親しみが湧くこの感じ、なにやら怪獣図鑑を読んでいた子供の頃を思い出す。

 もちろん真面目な解説もされており、実際に使用する場合の注意点や、その器具でなければ調べられない実験についてなどは勉強になる。知らなかったのが、ビーカーには目盛があるのに、あくまで目安なため正確ではないということ。正確に計りたい場合には、作者が命名するところの「容量チーム」、メスシリンダーやメスフラスコという物の出番だそうで、例えばメスフラスコが活躍するのは「5%の食塩水を200ml調製せよ!!」という時なのだとか。

 そんなちょっと難しい話に疲れたら、息抜きの漫画もある。「三角フラスコくん」が、「平底フラスコくん」と「ナスフラスコくん」にする実験室での「とっておきの怖い話」では、「ふと下を見たら……」と台詞を溜めて、「アルコールランプくんに加熱されてたんだよ!!」と叫ぶ。この話、どこが面白いかというと実は同じフラスコ仲間のうちで「三角フラスコくん」だけは加熱に弱いけど、他のフラスコたちは熱に強いから怖さが分からない、ということがキャラクター紹介を読み直せば分かる。笑いには勉強も必要なんである。

 実験器具への愛を注いだ本書には、「新品の器具を購入してインテリアにしたり、食器棚に収めて悦にいった経験のある人も多いと思います」と、さも当然のように書いてある。私は「あるんだ!?」と驚いたけれど、いや、なんかそれをやってみたくなってきたぞ。「ビーカーくん」と「ガラス棒くん」を使って、カクテルを作って飲んでみるかな。なにしろビーカーと名のつく物だけでも、上部の口が狭いコニカルビーカー、背の高いトールビーカー、ホーロー鍋ならぬホーロービーカー、腐食に強いステンレスビーカー、持ち手のある手付きビーカーなど多彩で、飲み会ではそれぞれコップ用・あつかん用・ワインデカンタ用・豚汁用・氷入れ用などと使い分けているそうだし、なんだか面白そうである。しかし作者の経験では、「普通のガラスに比べて割れ口がするどく、また細かい破片も飛び散る」ため、「一度で懲りました」だそうな。ううむ、憧れだけにしておきますか。

文=清水銀嶺