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コラムニストの芳麗さんが、大人の女性を美しくする“音楽と本”について毎回ゲストと語り合う『and GIRL』の人気連載「芳麗の[本と音楽の話]Cafe」。

今月のゲストは、映画『だれかの木琴』で専業主婦の小夜子役を演じる常盤貴子さん。引越し先で初めて訪れた美容院の美容師・海斗(池松壮亮)からの営業メールをきっかけに、彼にのめり込んでいく、狂気の女性を表現しています。そんな映画の話から、プライベートの話まで芳麗さんが聞きました。

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芳麗:小夜子が年下の美容師、海斗に抱く感情って不思議。演じているのが池松(壮亮)さんだから、それは、好きになるだろうとも思うけど (笑)。ダンナさんとの間に愛はあっても、小夜子は孤独で。海斗への思いは、恋なのか何なのか……。

常盤:そこは映画を観る人に想像してもらいたいですね。

芳麗:さほど知らない人に執着するって現代的な病だなと。軽い好奇心で誰かのTwitterを見始めたら、興味が増幅して、いつしか執着してしまうこともあるから。

常盤: 毎日、相手のTwitterを追いかけたりする人もいるって聞きました。私はSNSは一切やらないし、興味もないんです。だって、自分が食べたものとか知らせたくない(笑)。想像してもらいたいです。

芳麗:ですよね。ただ、今はプライベートや素顔を教えたい人が多いし、知らない相手に興味を持てない人も多いですよね。



常盤:今の現実なんでしょうけど、 それはテレビのせいもあると思う。 自分もやってきたことですけど、テレビは全部答えを出してきたから。視聴者も想像するのをやめちゃったのかなと。その人たちがこの映画を観たら、何が言いたいのかわからないって思うのかな (笑)。それはすごく悲しいことだと思います。

芳麗:答えを先に求めてしまうっていうのは、どんなことにもある傾向です。20代の子に取材すると、「人付き合いもお店選びも、とにかく損したくない。わからないものや人は怖いし、面倒くさい」って。

常盤:……そうなんですね。でも、そこには合わせたくないです。少し長く生きている人間としては、答えがないものの素晴らしさを求めたいし、大切にしたい。



※『andGIRL』2016年9月号