『カレー語辞典:カレーにまつわる言葉をイラストと豆知識でピリリと読み解く』(オカタオカ:イラスト、加来翔太郎:監修/誠文堂新光社)

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 カレーといえばインドを代表する料理だが、明治初頭にイギリスを経由して日本へと入ってきて以降、国内での馴染みも深く、太平洋戦争後は家庭料理としてもすっかり定番になっている。カレーこそが「おふくろの味」になっている家庭も少なくないのでは。

 それほどまでに親しまれたカレーであるが、ではそこに含まれるスパイスをどれくらい知っているだろうか。ターメリックにチリ、ペッパーなどはわかるが、クミンやコリアンダーなど、名前こそ聞いてはいるがどんなものやら。これだけ馴染みなのに知らないことばかりのカレー。それならばと、この『カレー語辞典:カレーにまつわる言葉をイラストと豆知識でピリリと読み解く』(オカタオカ:イラスト、加来翔太郎:監修/誠文堂新光社)で、学んでみることにした。

 本書は辞典形式でカレーにまつわる用語を解説。辞典といっても楽しいイラストが盛りだくさんで気軽に眺められる。また、内容も多岐にわたり、スパイスの解説は勿論、有名カレー店やカレーメーカーの紹介、調理器具や食器に人物など、カレーにまつわる話を多角的過ぎるほどに語りつくしている。漫画『キン肉マン』に登場する超人「カレクック」まで紹介されているのも、その世代にはうれしいネタだ。

 まずカレーといって思い浮かぶのはスパイスだろう。本場インドではカレー粉など使わず、料理の目的に応じてスパイスを組み合わせる。本書によればスパイスは体調を整える効果もあり、気温が高く体の調子を崩しやすいインドでは、その日の体調や天気によっても組み合わせを変えるそうだ。この考えかたは薬膳料理とも似ている。

 次は個人的に謎のスパイスだった、クミンとコリアンダーの解説を読んでみた。まずクミンはエジプト原産のセリ科の一年草だそうで、強い芳香とほろ苦み、辛みがあるという。これ単体で3つの味わいを持つなど、確かにカレーの複雑で奥深い味わいを支えるスパイスだなと感じる。

 そして驚いたのがコリアンダー。ご存じの方も多いのだろうが、タイ料理やベトナム料理でもお馴染み「パクチー」のことだったと今更ながらに知った次第。好き嫌いが分かれるハーブだが、小生は苦手である。更に驚かされたのが、その解説でも「カメムシのような」芳香と紹介されていること。あの風味に対して、イヤになるほど納得の解説。おかげで余計に苦手になってしまった。とはいえ、カレーに使うのは葉ほどの香りを持たない種子のほうなのだが。こちらは柑橘系の爽やかで甘い芳香が特徴とされ、カレーにおいて最も使用量の多いスパイスなのだ。

 また、日本で「タイカレー」の代表格と思われているグリーンカレー。実は、現地ではカレーと呼ばれず「ゲーン」と呼ばれるスープ類のひとつだというのも本書で初めて知った。その「ゲーン」の中でも香辛料を効かせたものを外国人向けに「カレー」として提供しているそうだ。そして、その緑色が前述したコリアンダーの葉に、青唐辛子を加えて出した色だというのも意外。レトルトのグリーンカレーは、小生も好きでよく食べていたのだが、まさかあのカメムシの香りがするコリアンダーの色だったとは。

 本書は一見ゆる〜い体裁ながらも、このように目から鱗の事実がどんどん出てくるのは、さすが辞典を名乗るだけのことはある。自宅でカレーを作る時の参考になるのは勿論、カレーにまつわる雑学も豊富で、思わず人に話したくなってしまうこと請け合い。でも、何はともあれ真っ先に美味しいカレーを食べたくなる一冊である。

文=犬山しんのすけ