『少女』(湊かなえ/双葉文庫)

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 今年の10月8日(土)に実写映画版の公開が決定した湊かなえの『少女』(双葉文庫)。同作は湊かなえデビュー第2作にして初めての書き下ろし作品。ふたりの少女の視点から、“人の死”への興味とそれがもたらす衝撃的な出来事をサスペンスフルに描き、現在までに文庫発行部数100万部を突破するベストセラーになっている。

 物語の主人公は同じ高校に通う由紀と敦子。小学生のときから友人同士のふたりだが、由紀が敦子をモデルに書いた小説をめぐる行き違いから、彼女たちの間には“微妙に息苦しい空気”が漂うようになっていた。そんなある日、昼食をともにした転校生・紫織の「親友の自殺を目撃した」という告白にふたりは心を揺さぶられ、自分も“人の死”を見てみたいと思うようになる。学校が夏休みに入り、由紀は病院の小児科病棟で本の読み聞かせ、敦子は老人ホームでの軽作業と、ふたりは相手に知らせずにそれぞれボランティアを始める。その目的は“死の瞬間”に立ち会うことだった。しかし、ボランティアを通じた出会いがふたりに思いがけない体験をもたらして――。

 認知症の祖母に左手の握力が弱まってしまうほど大きな傷を負わされ、殺意すら覚えるほどの憎悪を抱く由紀。中学時代に仲間だと思っていた友人たちから陰湿ないじめを受け、そのショックから過呼吸の発作を起こすようになった敦子。鬱屈を胸に隠すような日々の中で、ふたりは人の死への関心を抱くようになる。由紀と敦子の視点で交互に語られていく物語には、随所に読者を「あれ? これは……」と引き込むフックが配置され、女子高生のちょっとしたボランティア活動は少しずつスリリングなものになっていく。そんな由紀と敦子の物語の意外なつながりが浮かび上がると同時に“微妙に息苦しい空気”の中で揺れ動いていたふたりの関係も大きく転換する。数々の伏線が一気に回収されていくクライマックスはミステリーならではの醍醐味だが、本作は少女たちの忘れられない夏の体験を描く青春の物語としても美しく鮮烈な味わいのあるものになっている。

 しかし、何より読者の心に響くのは、巧みな筆致で生々しく描かれる思春期ならではの無邪気な残酷さだろう。由紀と敦子にとって“人の死”を見てみたいと思うことと、ファッション誌に掲載されたブランドアイテムを欲しがるということはどれほど違うものなのか。ふたりの友情の美しさだけでなく、その若さと純粋さゆえの傲慢をも読者に突きつけてくるところが、“イヤミスの女王”とも呼ばれる湊かなえの真骨頂だ。

 この小説ならではの仕掛けに満ちた青春ミステリーの美しくもダークな世界観が、実写映画でどのように表現されるのか。公開に向けて期待は高まる。

文=橋富政彦