首位打者ほぼ確定の角中、断トツの打率を残せる理由――「心」よりも「体と技」

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角中が最も重要視する要素


 残り18試合を残して、ほぼ首位打者のタイトルは手中に収めたといっていい。
 千葉ロッテマリーンズのヒットメーカー、角中勝也がリーグダントツのアベレージを残し、首位打者争いを独走している。

 2ストライクに追い込まれてからノーステップ打法にするなど、特異な技術力の持ち主だが、これまでのところ、彼の技術論はほとんど語られていない。

 一時は、角中を除くパリーグの規定打席到達全打者が3割を切るなか、なぜ、角中だけがこれほどの結果を残すことができるのだろうか。

「何にも変わっていないすね。去年から何が変わったかとか聞かれますけど、体の状態がいいというくらいで、本当に何も変えていないんでね……」

 寡黙な雰囲気のする角中は、実は雄弁なのだが、この言葉にもあるように自ら多くを語らない男である。
 しかし、この言葉の中にも、今季好調のヒントは隠されている。
 
 それは「体の状態がいい」という言葉だ。
 角中がもっとも重視するのがこの体の状態だ。
 
 それは次の言葉に集約される。

「心・技・体が重要だって言いますけど、僕はメンタルで抑えられたとは考えないタイプです。大量得点差の時は、もう少し集中しておけばよかったということがあるかもしれないですけど、誰だってグラウンドに行けば気合は入るものだし、メンタルで結果を出せるとは思わないです」

 野球にメンタルは関係ない。
 抑えられたのは、配球はもちろん、技術で抑えられた。
 野球選手としての結果を、そこにもっていくのが、角中の野球理論なのだ。

「里崎さんがおっしゃられたことがあって、僕も一緒やなって思ったんですけど、僕は心・技・体ではなく、体・技・心です。心はそんなに重要じゃない。誰だってバッターボックスに入れば気合は入る。それよりも、体と技。里崎さんがその話をされていて、すごく納得しましたね」

四球に対する考え


 昨年から角中はバッターボックスでの意識を少しだけ変えている。
 それも、メンタルとは別問題での意味だ。

 というのも、もともと角中は四球が多いバッターだった。
 2014年には四球数が三振数を上回るという味のある数字を残している。いかに投手との勝負で負けていないかを指し示す数字だといっていいだろう。

 しかし、角中はその記録を認知しつつ、そこは変えなければいけない要素だと昨年のシーズン序盤にこう話をしている。

「その数字にこだわりはなく、逆に、悪い意味で四球を選びすぎたと思っています。打てる球を見逃していたり、打ち損じてファールになって、結果、四球を選んだ形が結構あったんですよ。その数字はいいことでもあり、同時に悪いことでもあると感じています。そこを変えていけば、もっと率が上がっていくと思う」

 そして、その成果をこう振り返っている。

「結局、去年はケガをして1カ月空いてしまったので打率が3割に届かなかったんですけど、技術力も含めて、あのまま試合に出続けていたら、普通に3割は打てていたと思います」

 今季は序盤からその意識を持ち続けている。
 角中が四球よりも安打に意識を向けたのは、当然、自身のチーム内での立ち位置を認識してのことである。

「今季は3番を中心に、5番とかを打たせてもらっている。僕のタイプ的には、1番か2番ですけど、チーム事情的にそこを打っている以上は、四球だけではいけないかなと思っています。しっかり打てるようにと思って心がけています」

 初球スイング率が低い水準にある角中だが「昔は最初から初球は見逃すつもりでしたけど、今は結果的に見逃しているだけで、打ちにいっての見逃しなので、全然中身が違う」と角中は力説している。

技術力は年々向上


 とはいえ、それは意識をどう持つかの問題であって、そこには技術の裏付けがないと結果に表れない。それが今季うまくいっている要因だ。

 角中は打席に入った時、自身のその日の調子がどの状態なのかが分かるのだという。試合の1打席目、相手がボールを投げる以前、状態の良し悪しが確認できる。そして、その中で、どういうアプローチをして相手投手に向かうべきなのかを熟知しているのだ。

 角中は言う。

「これは野球をやっている人なら、誰にでもわかることなんでね、言葉では説明できないんですけど、自分の体の状態はすぐにわかる。それで、今日はしっくりこないなと思ったら、自分の中で打ち方を変えて、打席に入っています」

 角中は打ち方を変えていると言っているが、傍目ではその違いは全く分からない。角中だけにしかわからない、体の使い方の誤差というレベルの違いだ。

「映像で確認すれば、僕にもわからないくらいの違いです。ただ、自分の中では変えている。例えば、どこに体の重心をどこに置くかを微妙に変えているんです。今日はこっちだな思ったら、右足に重心を置いたり、ある日は左足を重心にしたりという風にです」

 誰にでも調子の良し悪しはあるのだが、“しっくりこない”という状況下の時に、どう対処していくかが“技術力”なのだという。

「技術力の引き出しは、年々、増えていると思います。それは年を重ねれば重ねるほど、技術力は上がっていくものだし、これからも引き出しは増やしたいなと思います。究極の目標を上げれば10割打者ですけど、それは絶対にできないこと。でも、そこに近づけるためには、少しでも技術力を上げなければいけないと思っています」

 そして、その技術を発揮するために必要なのが体なのだ。

 角中の今季は体の状態がいい。
 
「体の状態がいいから、練習ができる。去年は、体がきつかったんで、練習は適度にして試合に臨むという形でした。今年はきっちり練習もできて試合に迎えているので、それだけ体の充実は感じています」

「何も変えていない」という言葉に端を発する、彼の野球理論は体を第一主義に考え、その中でいかに技術力を発揮していくかに尽きるというわけだ。

 角中は言う。

「本当に、その日その日で調子は違うので、納得できない日もある。確かに納得できる日が増えていますけど、別に、だからといって、僕にとってはそれが『今日はフツーやったな』というだけで、良くない日も訪れるわけですから。この世界は結果が大事なのは間違いないですけど、長い目で見たら、感覚のほうが大事かなと思います。
 
自分は切り替えが早いほうですけど、メンタルは強くないです。でも、結果を残している人のメンタルが強いかってそういうわけじゃない。僕は体がしっかりできていることが大事だと思うし、結果が良くなったことの答えが技術と体力だっていう考えですね」

 角中が高めに強いから「角中ハイボール」とすれば、記事の見出しにはなるかもしれない。
 しかし、彼の打者としての真髄を紐解くと、もっと奥深いところにある。

「体・技・心」――。
 その考えが角中の驚異的なバッティングを支えている。

 パリーグのリーディングヒッター(9月5日現在)
1 角中勝也(ロッテ).346
2 西川遥輝(日本ハム).307
3 柳田悠岐(ソフトバンク).306
4 陽岱鋼 (日本ハム).305
5 浅村栄斗(西武).305