杭州で開かれた主要20カ国・地域(G20)首脳会議終了後に、安倍晋三首相と習近平国家主席の首脳会談が1年5カ月ぶりに開催された。安倍・習会談は3回目だが、これまでに比べ両首脳の表情も和らぎ、会談も友好的で成果も目立った。資料写真。

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2016年9月5日、杭州で開かれた主要20カ国・地域(G20)首脳会議終了後に、安倍晋三首相と習近平国家主席の首脳会談が1年5カ月ぶりに開催された。会談では対話と協議を通じて諸課題を解決していくことで合意、東シナ海での偶発的な衝突を防ぐための防衛当局間の「海空連絡メカニズム」の早期運用開始で一致した。安倍・習会談は3回目だが、これまでの会談に比べ両首脳の表情も和らぎ、友好的で成果もあった。

習氏は会談の冒頭、日中関係について「一日も早く正常な発展の軌道に戻すよう努力しなければならない」と強調、関係改善への意欲を示した。安倍首相も「日中間に課題があるからこそ対話を積み重ね、『戦略的互恵関係』の考え方に立ち、大局的な観点から、安定的な友好関係を築いていきたい」と応じた。これらの冒頭発言は公開され、友好ムードを演出した格好。習主席としても、G20サミットのホストとして主要国首脳との会談を内外にアピールしたいとの狙いがあったとみられる。

偶発的な衝突を防ぐための防衛当局間の「海空連絡メカニズム」の早期運用開始は喫緊の課題だったが、これまで中国側の対応が鈍く、先送りされていた。東シナ海のガス田共同開発でも交渉再開に向け協議することになった。両首脳は今後「マイナスを減らしてプラスを増やして、対話を積み重ねること」を確認し合ったという。

一方、安倍首相が東シナ海での中国の挑発的な行動に遺憾の意を示したのに対し、習氏は「東シナ海の問題は対話を通じて適切に処理して行かなければならない」と応じた。安倍首相は会談後の記者会見で、「両国の間には困難な問題があるがゆえに首脳同士の率直な意見交換を行って改善を図ることが大事だ」と語った。

外交筋によると、これまでの首脳会談にない友好ムードになったのは、(1)安倍首相がG20会議で南シナ海問題への直接的な言及を避けたことを中国側が評価した(2)中国経済の再建・構造改革を推進している習主席としても、日本企業の協力を得たい事情があった―などのためとみられる。杭州は習主席が長年トップを務めた浙江省の州都。当時多くの日本企業を誘致し、経済的な繁栄につながった体験も影響していると見る向きもある。

安倍首相にとっても、アベノミクスを成功させるためにも、最大の貿易投資相手国である中国との関係改善が不可欠だったと言え、早期に谷内正太郎国家安全保障局長を訪中させ、会談を模索していた。

9月下旬には、約230人の経済界大型訪中団が派遣されるほか、日中の有識者約200人が出席する「東京北京フォーラム」が、東京で開催される。日中関係打開への期待が広がっている。

このほか、11月にかけて、政財言論界から観光・学生交流まで多くの使節団が日中間を行き来する予定。この種の交流と対話の積み重ねが重要である。近接する2大経済大国である日中は「争えば傷つき、和すれば利する」関係であり、「小異を捨てて大同につく」ことを優先するべきであろう。(八牧浩行)