6月から熱い戦いが繰り広げられていたプレナスなでしこリーグカップ決勝が行なわれ、日テレ・ベレーザが4−0でジェフ千葉レディースを下して優勝を決めた。

 今シーズンすでに5度目の対戦となったこのカード(ベレーザが3勝1分)。カギとなったのは"先制点"と"粘り"だった。テクニック揃いの選手がつなぐ鮮やかなパスサッカーが身上のベレーザに対して、組織的な守備とトップの菅澤優衣香の打開力に懸けるジェフ。

 ベレーザは、どれだけはじき返されようとも粘って先制点さえ奪えれば流れに乗れる。ジェフとしては、粘り強い守備で耐え、先制点をものにできれば組織的守備でベレーザを捕らえることができる。粘り強い攻撃と粘り強い守備――両極の"粘り"を持つ鉾と盾の激突となった。

 互いに先制点を奪われることを恐れ、牽制し合う展開の前半は両者スコアを動かせず。「0対0で折り返せれば、後半にサイド攻撃から勝負をかける」(森栄次監督)と策を練っていたベレーザが、後半一気に勝負に出た。森監督のイメージ通り、左サイドの攻撃が活性化する。サイドバックの有吉佐織らが切り込めば、そこにポジションを変えながら多くの選手が絡んで行く。

 ベレーザに先制点が生まれたのは55分、櫻本尚子のクリアミスを籾木結花(もみき ゆか)が拾い、落ち着いてゴールに沈めた。その4分後には左サイドからの有吉のパスを長谷川唯が中へ、田中美南がピタリと頭で合わせて追加点。64分には、右サイドバックから上がってきた清水梨紗にボールが入るのを見た瞬間、一気に前線へポジションを取った隅田凛が難しい角度からヘディングで決めて3点目。そしてロスタイムには籾木がダメ押しの4点目を挙げ、後半の怒涛の攻撃でベレーザが勝負をつけた。

 悔しさを抑えきれないのは、ジェフのDFラインを束ねる櫻本だ。実戦の場を求めてジェフに移籍してから、守備の要として個を磨き上げ、守備の組織力をコツコツと積み重ねてきた。昨シーズンはその組織力にも手応えを掴んでいた。

「自分のミスからの失点。あそこを耐えることができていたら......」と先制点につながってしまった場面を悔いた櫻本。

「これまでの対戦から、サイド攻撃はケアしていたけど、やられてしまった」。それでも、「個では負けている感じはしなかった」と前を向いたキャプテン。試合の入りから組織的守備で一貫するならば十分に通用する守備力はある。90分の中で相手が戦い方を変えてきた際にどう対応していくか、ここからは組織的な対応力を向上させていかなければならない。完敗ではあったが、この4失点がジェフにとって必ず糧となるはずだ。

 優勝を手にしたベレーザの原動力となっているのが、若手選手たちの成長。その筆頭が今シーズンから"10番"を背負う籾木だ。153cmの小柄な体からは想像できないほどの豪快なシュートを放つかと思えば、トリッキーなシュートもお手の物。その存在はU-16女子代表世代から注目されていた。

 とはいえ、現在20歳の籾木も下部組織であるメニーナから昇格した頃から常に活躍できていたわけではない。ベテラン選手が引退し、世代交代の真っ只中にいた籾木。気持ちと結果のギャップに苦しんだ時期は決して短くなかった。それでも経験豊富な岩清水梓、阪口夢穂、有吉らに引き上げられるように成長してきた籾木は、今大会でも準決勝で2ゴールを挙げ、決勝でも豪快なミドルシュートを含む2ゴールで優勝に貢献した。

「ベレーザの10番は澤(穂希)さんや、代表監督の高倉(麻子)さんがつけてきたものなので、自分がつけるのが正しいのかわからない。もちろんこれまでの選手を超えたいという気持ちはありますが、あまり意識せずにプレーできていると思います」(籾木)

 度々ケガに見舞われていた籾木が、今シーズンは未だ故障知らず。離脱することなく、チーム練習を積み重ねられていることも好調の要因のひとつだ。「これまでで一番と言っていいほどコンディションがいい」と笑うその表情に充実感がみなぎっていた。

 決勝スコアラーの籾木、隅田だけでなく、4ゴールに絡んだ清水、長谷川は同世代。ベテランのお膳立てに頼るのではなく、若手だけでゴールをたたき出す場面も増えてきた。この世代のフィジカルとメンタルが、タイトルを狙うチームとしてフィットし始めたベレーザの勢いは止まらない。

 中断されていたなでしこリーグは、今週末からいよいよ再開される。ここでも首位を走るベレーザ。カップ戦を制して身に着けたTシャツには阪口直筆の「まず一冠」の文字があった。カップ戦はあくまでも通過点。ベレーザの今シーズンの目標はリーグ戦、カップ戦、皇后杯のすべてを制すこと。彼女たちが見据えているものは女王の証である"三冠"なのである。

早草紀子●取材・文 text by Hayakusa Noriko