夜明け前に「蝶の道」を抜けて

何もかも忘れて、心身ともにリラックスしたい。

そんな時は、海外よりも国内の島へ行きます。特に好きなのは八重山諸島。

透明、薄水色、エメラルドグリーン、群青色……。いくつもの青のグラデーションが重なる風景を前にすると、ただただ立ち尽くして眺めるしかありません。

数年前、冬間近の“夏休み”にひとりで向かったのは竹富島でした。石垣島から船で15分ほど。白いサンゴ砂の道はきれいに箒ではかれ、伝統的な赤瓦の家が並ぶ光景は、まるでどこか違う時代の、見知らぬ国に迷い込んだかのよう。

これほどまでに美しく町並みを保存するためには、美意識の高さと、並々ならぬ意思がなければできません。その町のあり方、たたずまいに一番感銘を受けました。

夜は島の民宿で“ゆんたく”(お酒を飲みながらのおしゃべり)がお決まり。この習慣のお陰で、ひとり旅でもすぐに知り合いができるのが、沖縄の旅の楽しいところ。

この“ゆんたく”で知り合った地元の人が「いいもの見せてあげる」と言って、
連れて行ってくれたのが、島の東にあるアイヤル浜でした。

集合時間は、まだ闇に包まれた明け方前。自転車にまたがり、街灯もない真っ暗な細いガタガタ道をみんなで走っていきました。

夜空が少しずつ明るくなってくると、真っ黒だった闇から、森のシルエットがゆっくりと浮かび上がってきます。まるでインドネシアの繊細な影絵のよう。あまりの美しさに目を見張りながら自転車を走らせていると、虫らしきモノがガンガン顔や体に当たってきます。虫は大嫌いですが、真っ暗だし道は悪いし、ぎゃーとか叫んでいる余裕はありません。あとで聞いたところによると、ここは“蝶の道”と呼ばれる道でした。

そして、辿り着いた砂浜は、太陽が昇る“一大スペクタクル”が見られる特等席でした。黒から群青色に、そして茜色から黄金色に……。空と海がどんどんドラマティックに変化していく様子を、みんなでただただ黙って見つめていました。

毎日こんなすごいことが起こっているのに、見逃しているなんて!

星を見る、月を見る、日の出を見る、夕日を見る……。旅では、そんな当たり前のことも、一大イベントになります。感動することはすでに身の回りにたくさんあるのだけれど、それに向き合える心の状態を作ってくれるのが、“旅”の役割なのかもしれません。

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