オリックス・糸井嘉男の史上最年長盗塁王は実現するか!?

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 優勝争いやCS争いとともに、個人タイトルの行方も気になる季節になってきた。

 今季のトピックスとして注目されているのがベテラン陣の奮起だ。セ・リーグでは39歳、“新井さん”こと新井貴浩(広島)がセ・リーグ史上最年長での打点王獲得に向け、着々と歩を進めている<※史上最年長は門田博光(1988年、当時南海)とタフィ・ローズ(2008年、当時オリックス)の40歳>。8月終了時点で91打点。以下、わずか3差の88打点で筒香嘉智(DeNA)、山田哲人、バレンティン(ヤクルト)が追っている。

 一方、パ・リーグでは糸井嘉男(オリックス)が史上最年長での盗塁王を目指している。今季、糸井が盗塁王を獲得すれば35歳2カ月でのタイトルホルダーとなり、従来の記録である、福本豊(1982年、当時阪急)、大石大二郎(1993年、当時近鉄)の34歳11カ月をわずかに抜くことになる。8月終了時点での糸井の数字は48盗塁。2位は4差の44盗塁で金子侑司(西武)だ。

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■巡り合わせでタイトルに届かなかった男たち

 さて、本稿ではこの「年齢と盗塁」をさらに掘り下げてみたい。なぜ、歴代の韋駄天たちは35歳を超えてタイトルホルダーになれなかったのだろうか?

 ひとつは、巡り合わせ、という部分も大きい。「世界の盗塁王」福本は1983年、36歳シーズン(35歳11カ月)にも前シーズンよりも多い「55盗塁」という数字を残している。だがこの年、盗塁王を獲得したのは25歳になる直前の大石で60盗塁。大石はキャリアハイの数字をたたき出し、福本の連続盗塁王の記録を13年連続でストップさせたわけだ。

 通算盗塁数で福本(1065)に次ぐ歴代2位(596盗塁)、通算盗塁成功率歴代1位(82.9パーセント)を誇る広瀬叔功(元南海)も、1972年、35歳シーズンに「42盗塁」を記録。だが、この年、福本豊が「106盗塁」というお化け記録を打ち立ててしまったため、盗塁王獲得はならなかった。

■34から35歳を境に成績が落ちる!?

 そしてもうひとつ注目すべき点が、ランナーにとって「35歳の壁」といいたくなる分水嶺があることだ。

 上述した通り、福本は35歳11カ月の段階でも55盗塁。タイトルこそ逃したが、14年連続でのシーズン50盗塁以上という金字塔を打ち立てた。ところが、翌シーズンは36盗塁へと急落してしまう。

 広瀬もまた、35歳で42盗塁を記録した翌年、なんとわずか4盗塁しか奪えなかった。

 大石も34歳11カ月、31盗塁でタイトルを獲得した翌シーズンは11盗塁と急落。セ・リーグ盗塁記録である通算579盗塁を誇る「銀座の盗塁王」こと柴田勲(元巨人)も34歳のシーズンに34盗塁でタイトルを獲得したが、翌年は10盗塁へと数字を落としている。

 球界が誇る歴代盗塁王たちの「数字」を見比べると、34〜35歳を境にして成績が急落していたのだ。

■「35歳の壁」を打ち破った糸井とイチロー

 だからこそ、今季の糸井の成績のすごさが際立つ、というものだ。数字が落ちてもおかしくない35歳シーズンでありながら、キャリアハイの盗塁数は既に決定。これまで最高で33盗塁だった男が、50盗塁も見据えている状況だ。

 まさに、超人・糸井の面目躍如、といったところ。だが肉体的なことだけでなく、意識面での変化も大きな要因であるのは間違いない。

 オールスター選出会見時、今季の盗塁数増についての質問に「(昨年に比べて)少し意識が変わったんだと思います」と答えた糸井。その背景には、今季からオリックスのコーチに就任した西村徳文ヘッドコーチと高橋慶彦打撃コーチから「もっと走れる」と言われ、上限を定めずに走るようになった影響があるという。

 現役時代、西村は4度、高橋は3度盗塁王を獲得。2人合わせて7度の盗塁王コンビによる「糸井意識改革」、という点もしっかりおさえておきたい。

 最後にもうひとり、「35歳の壁」を打ち破った男がいたことも付記しておきたい。それがイチローだ。2008年、35歳のシーズン(34歳11カ月)に43盗塁を記録したイチローだったが、翌年は26盗塁と急落。歴代盗塁王たちの例からすれば、ここから数字はどんどん落ちてもおかしくはなかった。

 ところが、37、38歳のシーズンに改めて40盗塁以上を記録。数字を盛り返したのだ。

 年齢の壁を超え、常人の想像を超える───。プロのアスリートに求めたいファンの欲望だ。それらを具現化するからこそ、彼らは「超人」といえるのではないだろうか。

文=オグマナオト

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