『歌舞伎一年生 チケットの買い方から観劇心得まで(ちくまプリマー新書)』(中川右介/筑摩書房)

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 最近では、俳優をテレビで目にする機会も増え、身近に感じられるようになっている歌舞伎。しかし、伝統芸能ということもあり、ハードルの高さを感じてしまう方も多いのではないだろうか。筆者自身も、一度は観劇をしてみたいと思ってはいるが、具体的にどんな演目にすればいいのか、観劇マナーはどうなっているのか、分からないことずくめで、まだ実行に移せていない。

 そんな時に目に留まったのが『歌舞伎一年生 チケットの買い方から観劇心得まで(ちくまプリマー新書)』(中川右介/筑摩書房)だ。

 本書で紹介されているのは、歌舞伎についての難しい歴史や概念ではない。チケットの買い方や、歌舞伎がどこで見られるのかなど、著者が自身の体験に基づいて基本的な内容を説明し、歌舞伎初心者にアドバイスをしてくれている。

歌舞伎はどこで見られるのか?

 

 歌舞伎が見られる場所として有名なのは歌舞伎座だろう。大掛かりな改築が行われたことでも注目された。文字通り歌舞伎のための劇場であり、1年365日のうち、300日近く、歌舞伎が上演されている。3階席まであるというから、非常に規模の大きな劇場だ。

 歌舞伎興行は1ケ月単位で行われ、基本的には1日が初日。25日間休みなく上演され、25日が最終日(千穐楽)となる。さらに、昼と夜の部があり、別の演目が上演される。歌舞伎は、ミュージカルなどのように、舞台稽古をみっちり重ねて初日を迎えるわけではない。全員での舞台稽古は、上演開始の前日までやらないこともよくあるらしい。そのため、最初の3日間はセリフを間違えたりしても容認されるという風習があるそうだ。著者は、完璧なお芝居を見たい方には、最初の3日間は避けることをオススメしている。

 歌舞伎が見られる場所は歌舞伎座だけではない。東京であれば新橋演舞場などでも上演されている。さらに、名古屋の御園座(現在建て替え中で新劇場は2018年4月に開場予定)や中日劇場、福岡の博多座など、歌舞伎が見られる劇場は日本の様々な地域にある。

チケットの買い方

 次に、チケットの買い方だ。歌舞伎座で見る場合、前売りと当日売りがある。さらに、「一幕見」では、昼の部・夜の部でそれぞれ3〜4の演目が上演される際、1演目ごとにチケットが販売される。席は最上階で、椅子席が空いていない場合は立ち見となる。

 前売り券はネットで購入可能。松竹の「チケットweb松竹」で、指示に従って進んでいけば購入できる。ネットで購入するとクレジットカード決済となるので、現金払いの場合は電話をして購入する。チケットぴあなどでも購入できるシステムとなっており、基本的にはミュージカルやコンサートのチケットと同様だ。

 筆者も早速、ウェブサイトにアクセスしてみたが、東日本・西日本の劇場公演のチケット販売スケジュールが掲載されており、空席照会もできるようになっている。手順も分かりやすいので、初めてでもスムーズに購入できそうだ。ただ、決済後のチケットのキャンセルは不可なので、注意が必要。

 誰のどんな演目を見たらいいか決められない方には、市川海老蔵の出演するものがオススされている。著者によれば、他の俳優と舞台に出ていても、彼の存在感は際立っているそうだ。以前、歌舞伎好きな知人も同じようなことを言っていたので、機会があれば、ぜひ見てみたいものだ。

 歌舞伎座であれば4000円で買えるチケットもあるので、まずは一度、劇場に足を運んでみたいと思う。本書でも、難しいことは考えずに、とにかく見に行くことが推奨されている。他にも隈取の奥深さや花道ができた理由、名前で分かる役者の地位など、様々な要素について分かりやすく解説されているので、本書を読んでおけば、初めての歌舞伎鑑賞も楽しめそうだ。

文=松澤友子