US(全米)オープンテニス3回戦で、第6シードの錦織圭(ATPランキング7位、8月29日付け、以下同)は、ニコラ・マユ(42位、フランス)を、4−6、6−1、6−2、6−2で破り、順当にベスト16入りを決めた。だが、グランドスラム第1週を戦い終えた錦織の表情はどこか冴えなかった。

 マユのサーブ&ボレー、チップ&チャージ、スライスを駆使したクラシックなテニスに、錦織は少し手間取った。マユのスライスへの錦織の対応が甘く、ストロークが浅くなって、マユにフラット系で強打されることもあった。

「(マユが)思っていたよりもアグレッシブにきて、ストロークのダウンザラインへの展開が早かったり、前へ入ってくるタイミングだったり、少し押された部分はありました」

 だが、第2セットからはマユのテニスのクオリティーが落ち始め、「ストローク戦で勝てないと、どうしようもないので」と錦織が深くスピードのあるストロークを打ったり、コースを突いて、マユを左右に振ってミスを引き出すと、試合の流れは錦織のものとなった。

 今回のUSオープン4回戦進出により、2016年シーズンのグランドスラムで、錦織はすべてベスト16以上に進出した。彼のキャリアでは初めてのことだ。

 しかし、今回のUSオープン第1週の3試合をすべて4セットで勝利した錦織は、「ベストな試合は、この3試合でまだないですし、特にここ2試合は苦しい展開もあった」と、いまひとつすっきりしない様子だった。負けるかもしれないという思いが、3試合とも頭をかすめることがあったという。

「このままいくと負けるだろうなと、最悪の展開はいつも想定しながらプレーはしている。それがいいのか悪いのかわからないけど......」

 錦織はパニックに陥らないように細心の注意を払い、なるべくポジティブに考えようとはしている。そして、グランドスラム第2週目に向けて修正すべき点があることを認識し、気を引き締める。

「テニス自体がそこまで悪いわけではないですけど、細かい部分を直さないと格上の選手には到底勝てないでしょう」

 特に懸念材料となっているのがファーストサーブの確率。1回戦が55%、2回戦が56%、3回戦が46%と調子が上がってこない。

 もし、錦織がビッグサーバーでサービスエースを量産できるのなら、この確率でいいかもしれないが、きっちりファーストサーブを入れ、ストローク戦の主導権を握りたい錦織としては、65〜70%が理想だ。

「ファースト(サーブ)は一番の課題でしょうね。セカンド(サーブ)を攻められてもいますし。ファーストの確率を上げないと、余裕がなくなってきてブレークもされてしまうので、今一番の課題はそこかもしれないですね」

 4回戦では、第21シードのイボ・カルロビッチ(37歳、クロアチア)と対戦することになった。両者の対戦成績は錦織の2勝1敗だ。2014年ATPメンフィス大会の決勝で、錦織が勝利して大会2連覇を果たしたとき以来の対戦となる。

 37歳の大ベテランであるカルロビッチは、今季好調で、ATPツアーのニューポート大会とロスカボス大会で優勝しており、ワシントンD.C.大会では準優勝している。

 今大会1回戦では、身長211cmから繰り出される高速サーブが絶好調で、61本のサービスエースを打ち込んで大会新記録を打ち立てた。そして、3回戦までに99本のサービスエースを記録して、自身初となるUSオープン4回戦に駒を進めてきた。

「どっちかというと、カルロビッチの方がやりたくない。最近強いですし、やっぱりサーブがかなり調子いいと思います。なかなか攻略するのは難しいと思います。特に彼とやる時は自分のサーブも上げていかないと、すぐ悪い状況になりかねない」

 錦織はビッグサーバーと対戦するのがあまり得意ではない。サービスエースを立て続けに決められると、ラリーができず自分のリズムを作れないからだ。カルロビッチと初対戦した時は、錦織がまったくリズムをつかめずに敗れた。どれだけ錦織がカルロビッチの高速サーブをリターンできるか、間違いなくそこがキーポイントになる。できれば、カルロビッチが得意なタイブレークに突入する前に、錦織はサービスをワンブレークしてセットを重ね、勝負を決めたいところだ。

「そろそろもうちょっとギアを上げていきたいですね」と話す錦織が、ファーストウィークの課題をどれだけ修正し、セカンドウィークに自分のテニスのクオリティーを上げることができるか、本当の力が試される。

神 仁司●文 text by Ko Hitoshi