W杯アジア最終予選UAE戦に75分から出場した原口元気。1点を追う展開で、ボランチの大島僚太との交代だったが、その使命を聞いた原口の心中は複雑だった。ハリルホジッチからは「長谷部の前で香川の後ろ。ただ、あくまでバランスは崩すな」と言われたという。

 ボランチにしては攻撃的な役割。とはいえ中盤のバランスを崩すことなく攻撃に加勢するのは難しかった。本来なら2列目、本人の希望とすれば左のワイドでプレーしたい選手は、その能力を封じ込まれたまま、敗戦のホイッスルを聞かねばならなかった。

 UAE戦の4日前に始まったブンデスリーガで、ヘルタ・ベルリンの原口は上々の滑り出しを見せている。

 ドイツ杯やヨーロッパリーグ予選を経て、ある程度は戦力の見極めや戦術の構築ができている状態で迎えたブンデスリーガ開幕戦、フライブルク戦にフル出場。芝の温度を測れば40度を超えたとドイツでは大騒ぎだった"灼熱"の中、90分間走り抜いた。パル・ダルダイ監督から名指しで賞賛され、キッカー誌ではマン・オブ・ザ・マッチに選出された。

試合では2点に絡んだ。先制点は原口が中盤から前線に長いボールを入れ、ヴェダド・イビシェビッチがワンタッチではたくとウラディミル・ダリダが決めた。後半ロスタイムに同点にされた後の勝ち越し点は、味方のロングボールからの展開。競り合いの末、ボールを奪った原口が仕掛けてシュートを放つ。これは至近距離の相手に弾かれるが、こぼれ球をイエンス・ヘゲラーがつなぎ、最後はユリアン・シーバーが押し込んだ。

 厳しい天候の中での試合だっただけに、試合後の原口は「勝ってよかった」と子供のような笑顔を見せた。「脚の全部の筋肉がつった」と笑い、「これで勝たなかったら、がっかりしてたと思う」と安堵した。

 とはいえ、自分自身のプレーに対しては少々不満が残った。

「今年はアシストの前じゃなくて、アシストなのかゴールを決めるのか。もう一個前で仕事をしたい」

 攻撃の選手として、本来の自分の役割を果たしたい。そのためには多少のエゴを出すことも厭わない覚悟がある。

「まず今季の1点目を取ることが大事なので。去年はチームが勝てばいいとか、チームのためにという気持ちが強かったですけど、今年は毎試合点を取るつもりで形、数字を出していかないと、今年はポジション争いが激しいかので」

 チームの中では運動量が多く、器用で視野も広い原口は、複数のポジションで遜色ないプレーができる。だからこそ、日本人にありがちではあるが、チームに貢献はできても、自分が本当にやりたい仕事からは遠くなることが多い。もちろんその中で立ち位置を確立していくケースもあり、昨季の原口もそうだった。だが、今年は違う1年にしたいという気持ちがある。

 それは現在召集されている日本代表でも同様だ。

「今年は点を取って、前で使ってもらえるようになるというのが目標。点を取っていれば、必ず前で使ってくれると思うので。去年はあんな数字(リーグ戦2得点、ドイツ杯1得点)だったので、ハリルさんが僕の適性を考えていろいろポジションをいじってくれたりしたんですけど、数字で示せたら前で使ってもらえることもあるだろうし。できれば前で勝負したいです」

 中盤ではなく、攻撃の選手としての仕事をしたい。そんな原口自身が望む役割に近いのは、むしろクラブより代表のほうかもしれない。

「(代表では)よりダイレクトにゴールに近いところでのチャンスメイク、仕留めるような動きが必要になってくる。それは僕の今の課題でもあるし、そういうのを本番で出せたら一番自信になると思う。よりゴールへの意識を出していけたら、ゴールが近づくんじゃないかなと思う。結果を出したいですよね。それしかポジションを奪っていく道はないと思うし、結果を求めてやりたいです」

 6日のタイ戦を含めて、代表では今後もボランチで途中出場という使われ方をする可能性が高い。その中で前線の望むポジションで定着するにはどのようなプレーでアピールする必要があるのか。自問自答をしながら、原口はアジア最終予選に臨んでいる。

了戒美子●文 text by Ryokai Yoshiko