W杯アジア最終予選の初戦となるUAE戦。試合前からかなり悲観的な見方をしているつもりではいたが、実際の試合は想定していた悲観の範囲をも上回る、厳しい結果に終わった。

 0−0か、1−1。割り切って守りを固めることのできるUAEに対し、日本が攻めあぐんだ結果の引き分けは、かなりの確率で起こりうると想像できた。

 あるいは、0−1。引き分けほど確率は高くないにしても、このくらいの悪い結果なら十分に予想の範囲内だった。

 しかし、開始11分という早い時間に、それもセットプレー(FK)から先制するという理想的な展開に持ち込みながら、逆転されて1−2で敗れるとは、ちょっと考えていなかった。

 しかも、UAEは最初から最後までベタ引きで、自陣の深い位置に砦を築いていたわけではない。逆転して以降は守備を固め、時間稼ぎをし、なりふり構わぬ逃げ切り策に入ったのは確かだが、それまでは至ってノーマルに日本と組み合っていた。

 つまり、UAEは奇策を用いたわけでも何でもなく、日本と"普通に戦い、普通に勝った"わけである。昨年のアジアカップ準々決勝で敗れた試合と比べても、印象はかなり悪い。明らかに両者の実力差が詰まっていることを示す負け方である。

 およそ1年にもわたる最終予選を戦ううえで、この事実は極めて大きい。

 日本はグループBにおいて絶対的な強者ではないことを、初戦にして図らずも証明してしまった。UAE以外の国に対しても「日本恐るるに足らず」の印象を与えたことは間違いない。

 日本は単に勝ち点3を落としたというだけではなく、早くも心理的アドバンテージを失ったのだ。

 確かに、レフェリーのジャッジという不可抗力がマイナスに働いた面はある。また、新シーズンが始まったばかりのヨーロッパ組は、まだ十分なコンディションになかったのも事実だろう。

 だが、この試合で起きたいくつかのミスジャッジは、アジアのレフェリーのレベルを考えれば、当然起こりうる範囲内のこと。カタール人レフェリーのスキルが低かったとは思うが、それは単に下手だったという話であって、UAEに肩入れしていたとは思わない。

 試合内容から考えても、1−2のスコアはそれほどアンフェアなものではなく、この敗戦を「不運」のひと言で片づけてしまえば、現状を見誤る。

 フィジカル・コンディションの話にしても、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督は盛んに"言い訳"として持ち出していたが、それは今に始まったことではない。事前にわかっていたことであり、過去の予選でも同じ状況はあった。それでも日本は負けなかった。

 にもかかわらず、それを言い訳にすること自体、日本の弱体化を認めるようなものだ。

 また、「こういうゲームでは監督を批判してください」と言いながら、責任を選手に転嫁するかのような発言を連発する、指揮官の姿勢にも違和感を覚えた。

 曰く、「何人かは自分が要求するプレーができなかった。なぜ、この選手を選んでしまったのか。それ以外にいい選手がいなかったからだ」。「何人かはフィジカル的に能力の限界がきている」。「分母が広がっていないから、選手を選ぶのは大変だ」。

 聞けば、アジア最終予選がホームアンドアウェー方式となった1998年フランス大会以降、最終予選初戦で敗れ、W杯に出場できた国はひとつもないという。

 それはジンクスとか、ゲン担ぎといった類の偶然ではなく、それほどまでに初戦の負けはダメージが尾を引き、チームの歯車を徐々に狂わせるからではないのだろうか。

 この試合を見る限り、日本だけは例外だとはとてもではないが、言い切れない。予兆らしきものは見え隠れしている。

 次戦はわずか中4日で迎える、アウェーのタイ戦。かかるプレッシャーは、初戦の前とは比較にならないほど大きくなった。

浅田真樹●文 text by Asada Masaki