初戦はベンチスタートとなった宇佐美だが、途中出場から持ち前の突破力を発揮。状態の良さをアピールしている。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

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 日中には強い日差しを感じたバンコク市内だったが、17時前に突然雨が降り出した。15分程度で止んだものの、曇り空となり、湿度が若干上がったように感じられる。タイとの最終予選2戦目を2日後に控えた9月4日、日本代表は冒頭のみを公開した非公開練習を行なった。その間にも再度雨が降りだし、それが原因だったのかは不明だが、練習は1時間程度で終了した。
 
 初戦、途中出場で攻撃にアクセントをもたらした宇佐美貴史は、今季移籍したブンデスリーガのアウクスブルクで定位置奪取に苦しんでいる状態だ。指揮官からも「長い時間プレーしていなかった」という評価から、UAE戦ではベンチスタートとなった。いったい宇佐美は、この戦いをどんな風に見ていたのだろうか?
 
「選手の距離が近すぎて、(トップ下に入っていた)真司君のスペースがなくなっていたという感じがあった。真司君の距離をとるというか、幅をとったポジショニングが僕にはできる。幅を消してしまうと真司君の良さも出ないと思う。
 
 サイドで持って、仕掛けるプレーやそのあとの細かいパスワークで崩していくところは、自分が一番ある、と思うし、負けている部分はないと思って、しっかりそういうイメージを持ちながら、(タイ戦へ向けて)準備しています」
 
 自陣を固めた相手に対しては、宇佐美自身も自分の強みが有効だと考えている。
「サイドで幅を持ちながらプレーしたい。どっちかっていうと、真ん中に絞りながら、チャンスが来たら、外へ張るのではなくて、外に張るのがメイン。そうしながら、サポートをする時には、中へ入っていくような感覚でも良いのかなあと思いながら、準備はしている。張りっぱなしは良くないので、サイドと中とのうまい使い分けをしたい。
 
 サイドでどれだけはがせるかっていうところは、(タイ戦の)キーになってくる。誰が出るか分からないですけど、出た時にしっかりそういうイメージを持ってやりたい。そうやってサイドに分散すれば、真ん中でできる選手はいっぱいいるわけだから。UAE戦のような同じミスをしないように」
 
 タイについて格下という認識はない。
「タイに関しては弱いという印象はまったく持っていない。ACLでも戦い、タイの選手たちの技量というのはもう経験済みだから。もちろん、未知数ではある。不気味な相手だとは思います。
 
 カウンターの鋭さがありますし、前の10番にボールが収まり、そこから、2列目の選手たちが飛び出してくるサッカー。体格的には、長身選手がいるとか、選手全員がフィジカル的に優れているというわけではないけれど、それ以外のところで勝負してくるチームですね」
 
 タイ代表のシャリル・シャピュイは2009年にスイス代表として、U-17ワールドカップで日本と対戦した経験があり、そのピッチに立った宇佐美との再戦を楽しみにしているという。「そういう選手に自分の成長を結果として見せられるのではないか」と問われた宇佐美は次のように即答した。
 
「そういうのはないです。チームに対して、自分に対してとか、応援してくれる人にはありますけど、対戦相手には成長した姿を見せるという欲はまったくないです」
 
 どんなカテゴリーであっても、大きな大会や長い予選ではラッキーボーイの存在が不可欠だ。
「まあラッキーでもなんでもいいですし、チームに数字をつけられるようなプレーはしていきたい。1試合目に負ければ、いろんなところでの風当たりが強くなる。ただ、そんなことを、僕自身は気にしていないし、ここから、乗り越えられる、そういうものをはねのけてやっていけるくらいの、チームじゃないといけないですし、僕自身もそういう選手じゃないといけないと思います。だからこそ、まあ、むしろチャンスというような感覚でやらないと、チームとしての成功もないですから」
 
 ロシアワールドカップへの扉をこじ開ける仕事ができれば、それこそ宇佐美自身の成長をチームメイトや指揮官、ファン・サポーターなど、自分を取り巻く人々、なにより自分自身に示すことになる。今現在は代表でも所属クラブでも確固たるスタメンの顔とは言えないが、ここから成り上がっていくための“欲”を、彼は秘めているのだ。