秋は月が美しい季節です。それは、気温が低くなって大気中の湿度が下がり、空気の透明度が高くなるからとか。「中秋の名月」にはお月見を楽しむ習慣もあり、この時季、にわかに脚光を浴びる月ですが、旧暦を用いた時代には今よりも人々の暮らしに深く関わっていました。それは、「月」とカレンダーが連動しており、「月の満ち欠け」が生活のサイクルそのものだったからです。
今も変わらず成長と再生を繰り返す月。美しく輝く光とともに、月が私たちに送るメッセージを受け取ってみましょう。


旧暦では、「月の満ち欠け」のサイクルが「ひと月」だった

現在、私たちが使っている暦は、明治5年(1872年)に採用された「太陽暦(グレゴリオ暦)」。この太陽暦を「新暦」と呼び、それ以前に使用されていた暦を「旧暦」と呼んでいます。
新暦が「太陽のまわりを地球が回る周期」を基準にしているのに対して、旧暦は「月の満ち欠け」で1カ月を数えていました。新月を月のはじまりとして1日(ついたち)と考え、次の新月が来ると次の月のはじまりとしたのです。現在では、月の満ち欠けはカレンダーと関係がありませんが、旧暦を用いた時代には月とカレンダーはしっかりと連動していました。


なぜ「十五夜」の日は、毎年変わるの?

新月から新月までの日数は平均して29.5日間となり、旧暦の1年間は354日でした。この日数は太陽暦の1年より約11日短いため、だんだんと季節とずれていってしまいます。そして、ひと月分のずれが生じたときに「閏月(うるうづき)」を設けてずれを調整していました。閏月は平均すると19年に7回くらいの割合で入ります。
旧暦に当てはめると、例えば2016年は閏月はなく1年は12カ月ですが、2017年は閏月が5月に入ります。つまり、1月、2月、3月、4月、5月、5月、6月、7月、8月、9月、10月、11月、12月の13カ月となります。その次は、2020年の4月に閏月が入ります。
中秋の名月といえば、旧暦8月15日の「十五夜」をさしますが、このように新暦と旧暦との間にずれがあるので、十五夜の日は毎年変わることに。2016年の十五夜は9月15日であるのに対して、閏月が入る2017年は10月4日になります。十五夜の日が特に大きく変わる年があるのは、この閏月によるものだったのですね。
【2016年以降の十五夜】
2016年…9月15日
2017年…10月4日(5月に閏月)
2018年…9月24日
2019年…9月13日
2020年…10月1日(4月に閏月)
2021年…9月21日
2022年…9月10日

すすきを稲穂に見立てて、米の豊作を祈願

すすきを稲穂に見立てて、米の豊作を祈願


月のサイクルから知る、4つの時間の意味

十五夜のお月見では稲の豊作を願ったとされていますが、古来、人々は月を見上げてさまざまなメッセージを受け取ってきました。「新月」「上弦の月」「満月」「下弦の月」といった月の4つサイクルで、それぞれの時期に昔の人が捉えた時間のイメージから、私たちの生活につながるメッセージを読み解いてみましょう。
◎新月
「新月」は、月の光が「失われた直後に生まれる」という不思議なタイミングでもあります。私たちは新月を通して、約1カ月という時間が終わっては生まれるのを感じることができます。なにかがまた新しく生まれ、ここから育っていく新月は、「希望」や「願い」をイメージさせる「はじまりの時間」と人々は捉えていました。
新月は、「願いごとをする」「新しいことをはじめる」のにぴったりのタイミングといえます。また、この時期には「よく根付くように、じゃがいもを植える」という言い伝えがあるそうです。新しくはじめたことが、しっかり根付くように願いが込められているのかもしれませんね。
◎上弦の月
月を見上げたときに、左側が欠けているのが「上弦の月」です。まだ明るいうちに空に昇り、暗くなってくると空の高いところに姿を現すため、ふと見かけることが多い月です。新月から満月に向かって、膨らんでいくとうイメージから、昔の人はこの月の時間を「成長の時間」と考えました。
そして、「一年生の植物を植える」「穀物の種を蒔く」「芝生を植える」「羊の毛を刈る(新しい毛が早く育つように)」などのことを行なったそうです。この時期に着手したことはスピーディーにぐんぐん育って行くと信じられていたのですね。満ちていく月の時間は、「ものごとにチャレンジする」のに適しています。「成長・発展」がこの時期のキーワ-ドです。

上弦の月

上弦の月

◎満月
夕方に姿を現し、真夜中に空のいちばん高いところまで昇る「満月」。新月から2週間ほど経った頃に満月になり、毎月一度は巡ってくるのですが、毎回特別なものを発見した気分にさせてくれます。まさにそのイメージ通り、満月は、物事が「満ちきる」時間と考えられてきました。
この時期には、「ワイン用の葡萄を収穫する」「ハーブを摘む」「肥料を与える」「動物をつがわせる」などに適している、という言い伝えがあります。少しずつ積み重ねてきたことが具体的なかたちとなって現れるタイミングと捉えられ、「結果が出たり、待っていたものがやってくる」のが満月の時期です。
◎下弦の月
「下弦の月」は、右側が欠けている、欠けていく月です。満ちたものが欠けていく、というとすこし寂しいようですが、この時期は「次のはじまりのための準備」が進むタイミングです。下弦の月の時間は、新しいことを始めるよりも、「物事を整理する、収穫をする」のに向いている時期です。
「薮や木を刈り込む」「野菜を瓶詰めにする、ジャムやゼリーをつくる」「材木で建物を建てる」「動物の去勢や角とりをする(出血がすくなくてすむため)」といったことはこの時期が良いとされてきました。
東の空がうっすらと朝焼けに染まる頃、ほっそりした月が浮かび上がる光景は、もうすぐ新しい時間が始まることを予感させます。未来に向かって、長い時間をかけて成し遂げたいことを決意するなら、この月に願をかけるのがふさわしいかもしれません。

そして、やがてひとつの時間が消えてゆき、新しい時間がまたはじまります。月の時間はそんなふうに、毎月生まれ変わってゆくのです。月は満ち欠けを繰り返しますが、このことが「生まれて、育ち、満ちきり、また次の新しい時間に備える」という生命力を象徴しています。月を見上げて、今という時間の流れがどこにあるのかを知り、その「流れる方向」に乗ってゆけば順調に進めるはずだと考えた昔の人の智恵が、日々の生活に気付きや閃きを与えてくれるかもしれません。まずは、今宵の月をそっと見上げてみませんか。

下弦の月

下弦の月