将来の住宅ローン借入額を左右するかもしれない「IoT×Fintech」の行きつく先

「お金に対する活動」を便利にしてくれる新しい技術の取り組みである「Fintech」(フィンテック)。Fintechは、ブロックチェーンによる金融事務効率化や、人工知能による洗練された資産運用といった先端技術を駆使した新しい金融ソリューションというイメージが強い。

ところで、「IoTによるFintech関連サービス」って何かあるっけ?と聞かれたとき、思い浮かびそうでなかなか思い浮かばない。そこでビジネスパーソンとして知っておきたい「IoT×Fintech」ビジネスについて本記事で取り上げてみたいと思う。

■Fintechによく馴染むIoTは「時系列データ」がキーワード

 IoTがFintechと仲良くするためには必要な関係は「時系列データ」の収集と利用である。この関係が上手く構築できているのが、「保険」と「決済」である。順に解説していこう。

1)保険:契約者ごとの時系列データをIoTが収集することで保険料を最適化

 車を運転する人なら目にしたことがあるかもしれない。UBI(Usage Based Insurance)という運転の仕方によって保険料が決まる先進的な保険がある。「ドライブカウンタ」という、走行データを取得して保険会社にインターネット経由で送信できるIoTを車に取り付ける。送信されたデータを分析して契約者のリスクを計算すれば、最適な保険料が算出できる仕組み。契約者が分析されたデータを参照することも可能で、エコドライブの推進もできる。日本で契約できるUBIとしてはソニー損保が「やさしい運転 キャッシュバック型」という商品がある。ちなみに、保険会社とのデータ授受はインターネットを必ず経由する必要はなく、ドライブカウンタと保険会社のデータ受け取り機器が自律して通信し合う場合はM2M(Machine to Machine)と言ったりする。

ソニー損保の「やさしい運転 キャッシュバック型」という ソニー損保の「やさしい運転 キャッシュバック型」という
http://www.sonysonpo.co.jp/auto/cashback/より引用
ソニー損保の「やさしい運転 キャッシュバック型」という。正確にいうと、この商品で提供される「ドライブカウンタ」にはインターネットに接続する機能がないので、IoTとはいえない。

2)決済:お金のやり取りという時系列データ授受をいかに効率よく・無意識に行うか

 決済のほうが保険よりイメージがわきやすい。「決済」したことが無い人はいないので、自分の生活シーンに具体的に当てはめられるから。「よく考えたらIoTによる決済ってあまり無いんじゃないの?」と考えたら決済はIoTではなくスマホを使うことの方が圧倒的に多いので、IoTとあまり馴染まないのでは?思ったはずだ。

 IoTを決済に活用するのは、我々消費者だけではない。料金を受け取る企業側が活用しようとしている。例えばNTTドコモが準備を進めているコインパーキング設営のための「スマートパーキングシステム」や、SAMUSUNGが開発した「Family Hub」という食品類の注文・決済機能が付いた冷蔵庫などがある。パーキングシステムは、直接決済する機能ではない。車の出入りを検知して駐車時間を計算できるシステムで、料金の自動決済に応用できる。冷蔵庫の方は、注文から支払いまでをワンストップで行えるのがポイント。冷蔵庫でタッチして欲しい商品を選びスマホで決済するとなれば、冷蔵庫とスマホの通信が必要になってしまうし、商品を選んだあとスマホを操作するのは面倒くさい。

 これらの例のように、お金のやり取りが発生する源泉となるデータを効率よく授受したり、お金のやり取りをできるだけ無意識で消費者に行わせたりするのが、IoTとFintechの関係だ。

NTTドコモが実証実験を進める「docomoスマートパーキングシステム」 NTTドコモが実証実験を進める「docomoスマートパーキングシステム」
https://www.nttdocomo.co.jp/info/news_release/2016/06/06_00.htmlより引用
NTTドコモが実証実験を進める「docomoスマートパーキングシステム」。車の入出庫情報を取得するデバイスがインターネットに接続できる。ユーザーは専用アプリで決済を行う。

SAMSUNGのスマート冷蔵庫「Family Hub」 SAMSUNGのスマート冷蔵庫「Family Hub」
http://www.samsung.com/us/explore/family-hub-refrigerator/より引用
SAMSUNGのスマート冷蔵庫「Family Hub」。タッチスクリーンを操作して食品類の発注や購入ができる。他、家族とのコミュニケーションのための写真表示機能などもある。

■IoTから収集したデータによる行きつく先は与信管理か?

 保険や決済の領域に限らず、IoTによる収集した「時系列データ」が金融分野で活用されるなら、個人の住宅ローンなどの与信管理に行きつくだろう。

 ここで取り上げた車の走行データや車の駐車時間に限らず、フィットネスバンドから得た健康状態、スマホの電子マネー決済データなどあらゆるデータから、個人の与信データを分析。客ごとに最適化された金利や手数料が提案されるようになる。

 むしろ、銀行で住宅ローンを契約するときに、健康状態によって金利をサービスしますからこのフィットネスバンドを付けてください。とか、あなたのお金の使い方を分析しますから、当行専用の決済用カードを買い物などで使うようにしてください。というような風景が見られるかもしれない。金融機関が、Fintechによるサービスを提供するために、IoTを消費者に渡す。目的は与信管理のため。というのがIoT×Fintechの行きつく先なのではないだろうか。

IoTを活用した与信管理の例
http://www.global-mobility-service.com/technology/より引用
IoTを活用した与信管理の例。住信SBIネット銀行との業務提携をしている「グローバルモビリティサービス」が開発した車の遠隔制御やデータ取得できる。住信SBIネット銀行は、この技術を「オートローン」生かそうとしている。

文/久我吉史