麻布十番

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 高齢化、過疎化、モラルの低下など、もはや「セレブタウン」の概念は曖昧なものとなりつつある。高級住宅街事情に詳しい、不動産コンサルタントの青山一広氏は「旧来のセレブタウンと呼ばれるものは今後、全体的に廃れていくほかない」と断言する。

「本来、高級住宅地が担った役割はお金持ちが価値観や常識を共有できるコミュニティや安全な居住地の提供でした。半世紀前ならばそれは理想的な住環境でしたが、今や1世帯の人数は50年前の4人台から2.49人に減少。これに伴い、大きな住宅自体が必要とされなくなってきているのがいわゆるセレブタウンの凋落の根本原因です。現在の富裕層は行動範囲が広く、どうしても交通の便が良い都心のタワーマンションなどを選択します」

 セレブタウンに豪邸を構えるというステータスや、大家族が住まう空間という条件があらゆる不便さを相殺していたが、ライフスタイルの変化によって無用の長物と化した。最低面積規制と建築協定による資産価値の暴落も、没落を加速させたという図式だ。

「実際、現在の世田谷などではかつて何億円もした豪邸が1億円程度で買える。しかし仮にお金に余裕があっても核家族にはそんな物件を買う必要がありません」

 そうした物件は、中国人富裕層ですら見向きしないのだという。そんな状況の中、生き残るセレブタウンがあるとすれば大都市の中心部付近だと青山氏は話す。

「中でも麻布十番など、交通の便が良い上に、古くからの地主から裕福なサラリーマンまで多様性のあるエリアは活気が落ちにくい」

「金持ちは三代まで」という格言のとおり、没落が進むセレブタウンは、ちょうど三代目の節目を迎えているのかもしれない。

【青山一広氏】
不動産コンサルタント。大手ハウスメーカー執行役員、建築会社社長を経て、不動産競売サポートを行うDelight・Oneを設立。著書に『競売不動産の基礎知識』(住宅新報社刊)

取材・文・撮影/SPA!セレブタウン研究会
― 没落する[セレブタウン]の今 ―