「ディストピア小説」から生まれた、グウェノーの未来の音楽

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ザ・ピペッツの元メンバーで歌手のグウェノーは、政治やフェミニズムをテーマにした曲を母国語のウェールズ語で歌う。ディストピア小説にインスピレーションを得て未来的な音色をつくる彼女の、母国語で歌うことへの想い、クリエイションの哲学。

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グウェノー(Gwenno)として知られる35歳のグウェノー・ソーンダースは、意外なもの──ウェールズ語のSF──からインスピレーションを得て、シュールな音の世界を生み出した。

英カーディフを拠点にするこの歌手のデビューアルバム『Y Dydd Olaf』(「The Last Day」の意味)は、カナーボン生まれの作家オウェイン・オウェインの1976年の同題小説に触発されたものだ。ウェールズ語とコーンウォール語で歌われる歌詞は、ロボットが人間のリーダーのクローンをつくるというディストピアを描くオウェイン物語を、フェミニズムとカルチュアル・アイデンティティを扱うための基盤として用いている。

「そうすることで、表現したいものに対して正直でいられたのです」とソーンダースは母国語であるウェールズ語で言う。「わたしが十分優れたアルバムをつくれたのなら、多くの人が理解できる言語を使っているかどうかは大きな問題にならないと思いました」

『Y Dydd Olaf』の1曲目に収録されている「Chwyldo」(Revolution)。

彼女が常にウェールズ語で歌をつくってきたわけではない。2010年まで、ソーンダースはインディーポップバンド「ザ・ピペッツ」の5人の歌手のうちの1人だった。彼女がバンドを離れたのは、自分自身の声を見つける必要に迫られたからだ。そうして見つけたのがウェールズ語だった。

「マイナーな言語が母国語であるというのは、閉所恐怖症であることにとても似ています。ほんの少ししか話せる人がいませんから」。ソーンダースは言う。「しかし、それは自由になれることも意味します」

彼女はカーディフに戻り、サウンドアーティストのリース・エドワーズとコラボレーションを行った。エドワーズは彼女の反社会的な歌詞と対比をつけるため、カーディフ湾でフィールドレコーディングをした音を『Y Dydd Olaf』に織り込んだ。

2015年7月にヘヴンリー・レコーズからリリースされたアルバムの広がりのある音は、音楽を再生すると必ずクラッシュしてしまうパソコンでつくられたものだという。「それを見るのは本当に辛かった」とソーンダースは言う。しかし、それが結局は彼女の音楽にプラスとなった。「制限をもつことは、クリエイティヴィティにとって本当にいいことなのです」

アルバムはウェールズ音楽賞(2014-15)を受賞し、この夏のイギリスでのツアーにつながった。9月にはグラストンベリーやポートメイリオンのフェスティヴァル「No.6」でもパフォーマンスを行う。さまざまなシークエンサーやペダル、キーを使って、独自のサウンドを構築する彼女の姿が見られるだろう。

彼女はいま、新しいウェールズ語の楽曲づくりで忙しいという。「この時代にクリエイションを行えることは、本当に幸せだと思います」とソーンダースは言う。

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