労働安全衛生法の一部改正により、2015年12月1日より50名以上の事業所では従業員への「ストレスチェック」の実施が義務化された。その結果、病院などの医療機関では、その多くが義務化の対象となるため、2016年11月までにストレスチェックの実施を行なう必要がある。

しかし、医療機関には医療機関ならではの課題があり、自病院での実施が困難なケースも少なくない。医療・介護の情報サービスを提供するエス・エム・エスは、同社グループが提供する「医療機関特化型ストレスチェック代行サービス」を通してストレスチェックの実施を支援した医療機関の結果を分析した。

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■医療機関における高ストレス者の割合

91.9%の医療機関で、高ストレス者の割合が10%を超える結果となった。また、15%を超える医療機関も29.7%存在した。数値基準は厚生労働省の「ストレスチェック制度実施マニュアル」に記載のある「職業性ストレス簡易調査票(57 項目)」を用いて、20万人のデータから高ストレス者の割合が「10%程度」となるように設定された数値基準の例を基に判定している。

医療機関特化型ストレスチェック代行サービス

高ストレス者割合の目安となっている10%を91.9%の医療機関が超えただけでなく、15%を超える医療機関も29.7%存在するなど、業界として高いストレス傾向を示す結果となった。医療機関は入院患者の生死を扱う職場であることや、夜勤当直などの不規則なシフト勤務が多いことに加えて、慢性的に人手不足であることなどから心身への負担度合いが高く、高ストレス者の割合が高くなったと推測される。

高ストレス者の割合が10%という目安については、「ストレスチェック項目等に関する検討委員会」において、現場が対応できる上限という意見なども踏まえて設定されているため、産業医などの現場スタッフへの負担が懸念される。

■医療機関における産業医選定状況

25.6%が、「産業医は院長・理事長などの経営者」と回答した。また、院内の医師が産業医を兼務しているケースが全体の87.2%にのぼることも判明した。

医療機関特化型ストレスチェック代行サービス

今回の調査では、25.6%が経営者と産業医を兼ねていると回答したが、理事長・院長などの法人の代表者・経営者や、事業場において事業を統括管理する者による産業医の兼務については、労働者の健康管理よりも事業経営上の利益を優先する可能性があることから、平成29年4月1日より禁止される予定となっている。

また、経営者に加え、一定の人事権を有していると想定される「役職者」が産業医を兼務しているケースも加えると、約55%の医療機関が該当する。人事権を持つ職員が産業医を兼務する場合、人事上の不利益を懸念し、職員が自身の健康や精神的な悩みについて相談しづらくなるなどのリスクが想定される。

そのため、「院外の医師」に産業医を依頼することが有効であると考えられるが、外部委託している割合は、10.3%に留まっている。仮に人事権がなかったとしても、内部の医師が産業医を兼務している状況自体が、職員心理や産業医の独立性・中立性の観点から望ましくないと考えられるため、今後、医療機関における産業医選定の方向性が変わっていく可能性があると予測される。

【調査概要】
調査1
調査対象:同社グループにて「医療機関特化型ストレスチェック代行サービス」を提供した医療機関
調査期間:2016年6月15日〜6月23日
調査方法:上記期間においてストレスチェック結果の集計が完了している医療機関のデータを分析
調査対象数:36事業所

調査2
調査対象:病床数20以上の医療機関に勤務する事務長
調査期間:2016年6月10日〜6月23日
調査方法:同社運営の医療機関事務長向け情報サイト「じむコム」上でアンケート調査を実施
有効回答数:78名

文/編集部