朝鮮戦争の局面を大きく変えた「仁川上陸作戦」を取り上げた映画が今夏、韓国でヒットした。核・ミサイル開発を進める北朝鮮の脅威にさらされる韓国。映画のPRには韓国の朴槿恵大統領も一役買っている。写真は映画「仁川上陸作戦」のポスター。

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2016年9月3日、朝鮮戦争の戦況を一変させた「仁川上陸作戦」。同じ題名の映画がこの夏、韓国でヒットした。北朝鮮による核開発や相次ぐミサイル発射などで韓国は守勢一辺倒。これを意識したのか映画のPRには韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領も一役買った。ヒットの理由を韓国紙は「愛国主義マーケティング」などと分析している。

実際の上陸作戦が決行されたのは、1950年9月15日。その年の6月25日、北朝鮮軍は南北武力統一を目指し38度線を越えて韓国に侵攻した。奇襲攻撃に韓国軍は敗走を重ねてソウルを失い、朝鮮半島南端の釜山周辺まで追い詰められた。

これに対し、マッカーサー元帥が率いる国連軍は起死回生の一手としてソウル近郊の仁川に上陸。補給線が延びきっていた北朝鮮軍が今度は敗走し、国連軍はソウルを奪い返して北進し平壌も占領。10月に中国の人民志願軍が介入しなければ、「朝鮮民主主義人民共和国」は確実に崩壊していた。

映画は、仁川上陸作戦の成功のために命をささげた韓国海軍諜報部隊員の知られざる活躍を描いた。海軍諜報部隊の大尉チャン・ハクスをイ・ジョンジェが、仁川を掌握した北朝鮮軍の司令官リム・ゲジンをイ・ボムスが演じる。1993年公開のスティーブン・スピルバーグ監督映画「シンドラーのリスト」でオスカー・シンドラーを演じてアカデミー主演男優賞にノミネートされたハリウッド俳優のリーアム・ニーソンがマッカーサー元帥役で登場する。

7月27日の公開前は「時代に逆行した映画」「季節はずれの反共映画」などと不評さくさくだったが、封切り後は8月7日の時点で観客数350万人を突破。聯合ニュースによると、観客動員は1カ月で691万9081人にも上った。

その理由について、中央日報は「自由民主主義体制を守った殉国烈士の犠牲と安保意識を気づかせたという点で保守陣営を中心に好評が続いた」「『愛国主義マーケティング』が通じるという証明」などと指摘。制作者の「反共映画ではなく安保映画。若い世代には全世界で唯一の分断国家に住んでいるという警戒心を悟ってもらいたかった」との声を紹介している。

制作者側は“2匹目のドジョウ”を狙って、仁川上陸作戦後、韓国軍と国連軍が北朝鮮軍に占領されたソウルを奪還する過程を取り上げた映画も計画しているという。

この映画のPRには朴大統領も貢献。大統領は8月18日、上陸作戦が展開された仁川・月尾島の月尾公園を訪問した。さらに大統領府は21日、公式ツイッターに「最近人気の『仁川上陸作戦』!朴大統領も映画館を訪れ、市民と一緒に観覧しました。ぜひご覧ください!」という文章と共に、映画館を訪れた大統領の動画を掲載。「商業映画ではないのか?それでも政府がこのようにおおっぴらに広報してもかまわないのか気になる」などと物議を醸している。(編集/日向)