中国の最近の台頭により、戦後の米国中心の国際秩序が大きく揺らいでいる。川島真東大教授は中国の世界戦略について「中国中心の国際秩序構築」と「米国との大国関係」の2つの構想のほか、かつての冊封体制のような周辺国外交の考え方もあると指摘した。写真は川島教授。

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中国の最近の台頭により、戦後の米国中心の国際秩序が大きく揺らいでいる。五百旗頭(いおきべ)真アジア調査会会長・熊本県立大学理事長(前防衛大学校長)、宮本雄二元駐中国大使、川島真東京大学教授が、「中国とどうつきあうか―日米中のこれから」をテーマに、日本記者クラブでこのほど会見した。

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中国事情に詳しい川島真東大教授は中国の世界戦略について、中華の夢実現へ「中国中心の国際秩序構築」と「米中大国関係」の2つの構想のほか、かつての冊封体制のような周辺国外交の考え方もあると指摘した。また南シナ海問題で日本が対中批判を繰り返していることに対し中国は強い不満を抱いており、「日中関係は良くなっていない」と強調した。

川島教授の発言要旨は次の通り。

中国の考え方の根底には2つの構想が存在する。
(1)グローバル社会の中で中国中心の秩序構築
アジアインフラ投資銀行(AIIB)やシルクロード基金などを使い、安全保障も絡めて東南アジアを中心に浸透を図る。
(2)米中大国関係の推進
習近平が提唱し、ライス大統領補佐官が「国際秩序を2国で構築する」と乗った戦略。米国のつくった価値観を全面的に否定せず、国連に基づいた国際秩序を尊重するが、日米同盟、北大西洋条約機構(NATO)などには反発する。

胡錦濤前国家主席は2005年に国連で「和諧(調和)世界」を打ち出したが、直後に国内で批判を受けた。リーマンショックやオバマ大統領の就任を経たあと、習近平はこの言葉を使っていない。米国は少しずつ対中認識がを変え、中国も米国にあまり配慮しなくなった。

習近平政権には、かつての冊封体制(中国,歴代王朝が東アジア諸国の国際秩序を維持するために用いた対外政策。中国の皇帝が朝貢をしてきた周辺諸国の君主に官号・爵位などを与えて君臣関係を結んで彼らにその統治を認める一方,宗主国対藩属国という従属的関係に置くこと)のような周辺国外交の構想もある。

多くの中国人の留学先は米国であり、戦略対話などを通じて、米中は分厚い協力関係にある。南シナ海問題などで対立しているように見えて、米海軍が上海に寄港し、軍事演習も共同で行っている。

米中間にはパーセプションギャップ(認識の相違)がないが、日中間にはギャップが存在する。中国は尖閣諸島周辺に船を出したが、米国が本気で強く出てくると考えてはいない。米国は南シナ海で航行の自由作戦をやっているが、攻めきれない。米国が本気になってスカボロー礁を止めることはできないと見ている。

◆大きなパーセプションギャップ

日中関係は良くなっていると報道されているが、中国人と話すと厳しい発言が多く、その雰囲気はない。特に南シナ海問題に対する日本の対応に強い不満があり、認識のギャップが大きい。グローバル時代に不幸なことであり、パーセプションギャップを乗り越える相互理解が最低限必要である。

習近平の権力集中は大きく、反腐敗運動を法に基づいて推進している。米国は中国共産党政権について、強靭でアメーバのように柔軟と認識しているが、強靭さは硬直さに通じ、多様化に対応できないのではないか。経済社会体制には多くの問題があり、厳しい状況だ。共産党には正当性の問題もある。

(1)集権化や締め付けは柔軟性に欠け、ルールがどう適用されるか分からないところがある。
(2)党と軍は強いが、ものを決めても実行されない問題がある。政府がフォローできず末端まで浸透しない。強い言論統制をやって、自由な報道をしてきた新聞社トップを拘束したりしている。

南シナ海への海洋進出は今に始まったものではない。もともと中国は隙があれば取り戻すことを計画していた。アメリカがフィリピンから撤退した後、行動に移し、1992年に領海法を制定した。漁船が来て軍が来る戦略は習近平時代からだ。ベトナムやフィリピン、マレーシアも島や岩礁の埋め立てをやったが、中国は規模が大きいので目立つ。

過去に占有していた南シナ海の島々を失ったが、取り戻す能力を持った今、やらないと国内から批判されるという事情がある。沿岸部に主要産業拠点があるため、国防上の理由や各組織の争いや軍区のせめぎ合いもある。

南シナ海の仲裁裁定が出る前から、仲裁は国際社会の総意ではなく一部の国の陰謀であると言っていた。判事の選び方も日本の影響が強く、日本は煽っていると言う。誰が悪いかと言えば、フィリピンより日本の方が悪いと見ている。8月15日以前に、領海侵入を積み上げ関係が悪化したように見せて、外相会談でまとめる演出という面もあるかもしれない。(八牧浩行)
<完>