そろそろ人任せのワイン選びから卒業して、「ワインのわかる女」になりたい。そんなオトナ女子のみなさんと一緒に「ワインの最前線」を冒険しつつ、ちゃっかり「ワイン選びのコツ」を身につけちゃおうという企画、〈ウートピ・ワインラボ〉。ラボの所長は、世界中のワイナリーを訪ね、最新のワイン事情に精通しているワイン・ジャーナリスト浮田泰幸(うきた・やすゆき)さん。うんちくも威張ったソムリエも大嫌いというウキタ所長があなたをワインの世界に優しくエスコート。あなたが「自分にぴったりの一本」を見つけ出すお手伝いをしてくれます。

〈ウートピ・ワインラボ〉所長ウキタです。みなさん、おいしいワイン、飲んでますか?

前回は、「辛口のリースリング」という新しいスタイルのドイツワインが今、熱いという話をしました。今回は、そんな進化系ワインを生み出しているドイツの若手醸造家のワイナリーを訪ねます。

一輪の野花のような凜としたワイン

まず訪ねたのは、ドイツ最大のワイン生産地、ラインヘッセン地方。もともと高級なプレミアムワインというよりは普段用のデイリーワインの産地として知られていた土地ですが、近年造られるワインの品質が著しくアップしていると言われています。

1軒目はヴァイングート・ヴィンターというワイナリー。ドイツ語でワイナリーはヴァイングート(weingut)。大抵のワイナリーの名前には頭にヴァイングートがつきます。

このワイナリーの若手醸造家、シュテファン・ヴィンターさんは15歳から他所のワイナリーで修業を積み、19歳の時に家業に参加したそう。

シュテファンさん。この日は病み上がり……

「現場を4年間も離れたくなかったから大学へは行かなかったよ」という、ワイン一筋の好青年。若くしてワイン造りを任されたシュテファンさんは、ブドウ畑から醸造設備まですべてに手を加え、ワイナリーもモダンなデザインに大改装。「この土地の冷涼な気候を利用して、低アルコールでエレガントな辛口白ワインを造りたい。すべてはそのためにやっていること」

モダンに改築されたワイナリー

最新ヴィンテージ(収穫年)のベースラインのエステート・リースリング2015を試飲させてもらいました。

乾いた小麦を嗅ぐような独特の香りにライムや海の塩を思わせるトーンが交じります。口の中ではしっかりとした酸がボディをつくり、後口に夏みかんを思わせる爽やかな果実味が残ります。透明感があって繊細、でも力強い。まるでデリケートな意匠を凝らしたガラス製の花器に生けられた一輪の野花のようです。

見た目にも味わいにも透明感が

昔ながらの自然発酵が、今、逆に新しい

2軒目はヴァイングート・トーレ。色とりどりのバラが垣根をなす前庭を通ってワイナリーに入ります。

ヴァイングート・トーレの母屋へと向かうアプローチ

トーレ家は代々ワイン造りを営んできた家柄で、エステートの中には500年前に築かれた熟成庫もあります。クリストフ・トーレさんは若手生産者の組織、「ジェネレーション・リースリング」の初期メンバーのひとり。

クリストフさん。家業は500年続いている

彼がこだわっているのは、自家酵母による自然発酵。つまりは大昔から行われている「ブドウをつぶしてほったらかしにする」発酵プロセスです*。

*自家酵母は野生酵母とも言われる。一方、培養酵母はセレクトされた単一菌種のみを培養するもので、雑菌繁殖などのリスクが低い。

「ワインは土地の個性を表すもの」という哲学を突き詰めていくと、おのずと酵母もその場所にもともといるものでとなります。これは、古いテクノロジーに逆戻りすることですが、ワインの世界では、ぐるりと巡って今再び新しいアプローチとなっています。

クリストフさんのワインを飲んでみましょう。

単一畑のブドウから造られたザウルハイマー・リースリング2015は、最初は果実よりもミネラルを強く感じます。暖かな午後の日差しを浴びているような気にさせるのは黄桃やアプリコットのトーンがあるからでしょうか。口の中ではとろりとしていて、後口にカニやエビといった甲殻類を食べたくなるようなコクが残ります。全体に野趣が感じられるのが、ここの自家酵母のキャラクターなのかも?

本文に登場するリースリング(左)とシュペートブルグンダーの赤(右)

こちらが「主役格のシリアスな二枚目」だとすると、もう1本のエステート・リースリング・ファインヘルプ2015は「脇役でキラリと光る茶目っ気のある三枚目」。日向夏の香りが生き生きと立つ軽めの微発泡性ワインで、飲めば思わず笑みがこぼれます。

同じリースリングという品種を使って、まったく異なるワインを造り出すとは。クリストフさん、なかなかの腕前です。

取材協力:Wines of Germany
写真:Taisuke Yoshida

(浮田泰幸)